ある日の<俺> 3月24日。 春に咲く鳥さんの木
ねえ、パパ。鳥の木がいっぱい。
あっちにも、こっちにも。
来月小学二年生になる娘のののかが、もっと小さかった頃。会社が休みの日、手を繋いで連れて行った公園で、びっくりしたように言ってたっけ。
パパ、しろいとりのきと、むらさきのとりのきがあるのは、なぁぜ?
首を傾げた娘を抱き上げて、俺はどう答えたんだっけか。
春になると一斉に咲くのは、梅桃桜ばかりじゃない。<鳥の木>こと、木蓮・辛夷の木もその花だけを身にまとう。──俺には、どれが木蓮でどれが辛夷なのか分からないけど。でも、その咲いてる姿は、本当に沢山の鳥たちが翼を休めているように見える。
ほっこりとふくらんだその花たち。「なんかね、うれしいきもちになるの」と娘は言った。
「うれしい気持ち、かぁ」
春霞の明るい空の下。うれしいより、物憂いと感じるのは俺が大人のせいだろうか。
「あっ!」
俺は知らず叫んでいた。白い花の根元に<お訊ね鳥>の白いセキセイインコ。
「ピーちゃん・・・それ、仲間じゃないぞ」
俺は思わず笑っていた。花に寄り添う姿が、可愛い。とと、眺めてる場合じゃない。早く捕まえなきゃ。飼い主の若生さんが泣く。
待ってろ、ピーちゃん。今行くからな!