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ある日の<俺> 3月22日。 風流には遠い
「うおっ!」
叫んで、思わず取り落としたシャワーヘッド。足の甲にクリアヒット。
「でっ!」
風呂桶の中の高温噴水を止めるべく、俺はカランに手を伸ばす。足は痛いが湯も熱い。
「べくしょっ!」
中途半端に湯の掛かった身体が、寒い。今度は注意深く温度調節をしてから、適温になったシャワーを浴びた。・・・足、痛い。明日は青痣だな。
「やっぱり、湯に浸かろ・・・」
無意識に呟きつつ、スタンダードな鎖付きの栓で排水口を塞ぐ。全裸でぺたんと風呂桶に座り込むこの姿、娘のののかには見せたくない。
「やっぱ、春、なんだな・・・」
ついこの間までは、温度調節を高めにしておかないとシャワーの湯が温かった。ここ数日は、ちょっと熱めだけどまあ・・・と思っていたら、今日はしょっぱなから熱い。熱すぎる。
脛から尻の下あたりまで、じんわりと溜まってくる湯を感じつつ、ぼんやりと思う。シャワーの湯でも、季節の移り変わりを感じられるんだな。
──いまいち、風流じゃない。