ある日の<俺> 2月21日。 雄の三毛猫?
このボロビルのどこかに、数日前から野良猫が棲みついているようだ。
三毛猫だから雌だと思ってたが、アンテナのようにぴん、と立った尻尾の奥に、ぽわぽわの毛に覆われた丸いものが二つ見えたような気もする。まさか、雄?
・・・うーん、今、ドアを開けたら走って逃げていったが、後肢の間にタマタマが見える。雄、決定。
三毛の雄っていうと、あれだよな。高額で取り引きされるという、超レアな生き物。そういえば居たな、三毛猫の雄が欲しい、見つけたら是非連絡を、という金持ちが。
人呼んで、「家出・逃走ペット探しの名人」な俺でも(誰が呼んだんだよ? という突っ込みはナシの方向で)、自分の目の黒いうちにそんな珍しい猫を見ることがあるとは思わなかった。
ちゃんとペットをかわいがるようなタイプなら、その金持ちに教えてやっても良かったが・・・、あのジジイはとうていそんな人間ではない。そんなのに飼われたら、猫がかわいそうだ。
絶対教えてやらん。
──それにしても、警戒心バリバリだったな、あいつ。珍しいからって誰かに追っかけられたりしたんだろうか。
ま、いいや。野良だし。
あー、でも。
まだ生まれて一年経ってなさそうな感じだったな。・・・帰りにキャットフード買ってこよう。うっ、懐が寒い。
さてと。健太君と葉子ちゃんと春くんの塾のお迎え、行きますか。何でも屋として、依頼者の信頼に応えなくちゃな。それにしても、子供関係の依頼も増えたなぁ。有り難いけど、物騒な世の中になったもんだ。