ある日の<俺> 3月5日。 駒蔵地蔵さんとペアルック?
寒いけど、春だ。
その証拠に、梅の花が満開だ。
見事な花を咲かせる梅の根元には小さな祠があって、お地蔵さんが祀られている。駒蔵地蔵、というらしいが、その名の由来は誰も知らないのだという。まあ、このあたりも世代交代と人の出入りで、かなり変わってるようだしな。
その駒蔵地蔵さん、定番の赤い涎掛けともうひとつ身につけていらっしゃる。ふわふわレインボーモヘヤの毛糸で出来た、小さなケープ。
あの配色、このあいだ俺が今南のお婆さんからもらったマフラーと、そっくり同じものに見えるんですけど。──そういえば、お婆さん、近所のお地蔵さんの世話をしてるって言ってたことがあったなぁ。
今南のお婆さんは話好きで、手芸が趣味だ。頼まれてて電球(っていっても輪っかのやつだけど)を取り替えたり、樋掃除に行ったりするたび、手袋もらったり、靴下(これが結構助かる)もらったりする。
もしかしたら、そういう作品も、このお地蔵さんとお揃いだったのかもしれない。
お地蔵さんとペアルックかぁ・・・って、材料が同じってだけかもしれないけど。でも、それはそれで何かいいかもと思えてくる。
うーん、梅の香りがほのかに漂ってくるぞ。風流だ。
なぜかみたらし団子が食べたくなってきた。
花といえば団子。この先に和菓子屋の亀屋があったな。あそこのみたらし団子を買ってきて、お地蔵さんと梅の花見をしようか。
「あ? 花びら?」
と、思ったら、雪だった。道理で寒いはずだ。途端に鼻がむずむずして・・・
「べーっくしょっ!」
くしゃみが出た。・・・お地蔵さんに笑われたような気がした。