ある日の<俺> 3月4日。 シャム柄の仔猫
だんだん色が濃くなってくるのです。
田宮さんちで飼い猫のモモちゃんが子猫を産んだというので、見せてもらいに行った。田宮さんからは、時々小学生の娘さんのピアノ教室の送り迎えを頼まれる。
モモちゃんは毛色が真っ白で、目が金眼銀眼のいわゆる福猫。シャムの血が混じってるらしい。おとなしくてとてもいい子だ。
田宮さんが言うには、産まれた四匹の子猫のうち、二匹の毛色が妙なのだそうだ。んー、こいつら、眼は開いてるけどまだ見えてないな。すぐ見えるようになるだろうけど。
真っ黒一匹、真っ白一匹。後の二匹は──たしかに変わった色に見える。白でもないし、灰色でもないし、うーん、微妙・・・
と、思ってよく見たら、耳の先と鼻の先、手足と尻尾の先の色が少し濃いかも?
あ、そうか!
「この二匹は多分、毛色がシャム猫そっくりになりますよ」
「え? モモは白猫なのに?」
驚く田宮さん。
「モモちゃんはシャム猫がかってるから・・・多分、父親猫も同じような感じじゃないかなぁ。そういう両親からは、先祖返りというか、柄だけはシャム柄の猫が生まれることがあります」
へぇ、と田宮さんは感心する。
「ほら、耳の先とかよく見てください。ちょっと色が濃いでしょ? もう少ししたら、もっと濃くなりますよ」
さて。それからしばらくしてから田宮さんから画像添付メールが来た。そこに映っていたのは・・・見事なシャム柄なのに、顔は丸い子猫。
母猫のお乳をお腹いっぱい飲んだ後らしく、満足そうに眠っているその丸々とした二匹の子猫が、狸に似ている、と思ったのは内緒だ。
や、本当に似てるんだって。
前日、3月3日は元義弟・智晴の誕生日。
その顛末は「<俺>の桃の節句」に詳しいです。目次に戻っていただいて、ずずっと最初のほうに目をやっていただくと、「何でも屋の四季折々」章の中にあります。