ある日の<俺> 1月13日。 どこから来たのか、雪の塊
空は重苦しい灰色。今日も寒い。
けど、このあたりに雪の気配はない。それなのに、あれは何だろう。
「なあ、伝さん」
俺は散歩の相棒に声を掛けた。
「おぅん?」
何だよ? とばかりに俺を見上げるグレートデンの伝さん。視線の位置が普通の犬より高い。犬嫌いの人から見ると、彼なんかまさに地獄の番犬だろうな、などと思いつつ、言葉を続ける。
「あれって、不思議だよな」
俺は道路の真ん中に落ちている雪の塊を指差した。
「どっから来たんだろな? 山の方で雪が積もって、そこから来た車が落としていくんだろうけど・・・」
雪の塊は、歩道の敷石の上にも落ちていた。カーブになってるから、その時落ちたのかも。
「あ、おい、伝さん。そんなもん舐めるな!」
不思議そうに匂いを嗅いだついでに、べろんと舌を出した伝さんを慌てて止める。
「腹こわしたらどうするんだよ」
「あおん、おん!」
ちょっと舐めてみようとしただけだぜ、とでもいうように、伝さんが抗議(?)する。
「そっか、喉かわいたんだな、伝さん。早く帰ろうか」
「おん!」
曇り空の向うに、太陽が透けて見えてきた。昼からはもう少しあったかくなればいいんだけど。