ある日の<俺> 1月11日。 チンピラと夜の蝶
正月終わってすぐの連休中日。
・・・依頼が、無い。
せっかくの休み、愛犬との最高のコミュニケーション・散歩を楽しむ飼い主さんも多いし、小学生の塾通いも、今日はさすがに仕事休みの親御さんが多いから、何でも屋なんかに送り迎え頼まないし。
はぁ。
・・・シンジの持ってきてくれたぜんざいが、美味い。
最近顔を見なかったシンジだが、年末年始は風邪を引いていたそうだ。
──でも、るりちゃんが看病してくれたから、俺、幸せだったっすー。
うん。いくらでもノロけていいよ。お前はいいヤツだし。チンピラなりに出来る仕事(ピンクチラシ貼り、ティッシュ配り、その他)頑張ってる姿、俺は好きだし。シンジのカノジョのるりちゃんも、彼のそういうマジメなところがいいんだろうな。
夜の蝶、クラブ勤めのるりちゃんは、年末年始(といっても、ごく短い年末年始だけど)は店が休みで、看病もしやすかったらしい。「俺、ラッキーだったす~」とにやけるシンジは、ある意味可愛い。
意外に甘党の彼のために、昨日から休みのるりちゃんがわざわざ作ってくれんだといって、俺にまでお裾分けしにきてくれるところが、とても可愛い。
チンピラとクラブのホステスなんて、それだけ聞くと殺伐とした関係に思えるけど、彼らの場合はなんかほのぼのしてる。若いっていいなぁ。
「しかし、るりちゃん。さすがだな・・・」
俺はラップにくるまれた塩昆布を指でつついた。ぜんざいを入れた大きなタッパーの上に、リボンをつけて添えてあったんだ。菓子か何かについてたのを転用したんだろうけど、こういう心遣いがさすがは高級クラブのホステスさん、という感じだ。レンジで少しチンすればいいように、ほどよく焼いた餅を五つもつけてくれてあったし。
タッパーを返す時、何か礼でもした方がいいかな。シンジは「まだいっぱいあるから気を使わなくっていいっす!」って言ってたけど。
ま、いいか。
──美味かったよ。ありがとう。
今度、ふたりに会ったらそう言おう。そして、ごちそうさま。色んな意味で。