ある日の<俺> 1月8日。 自転車パンクする
自転車がパンクした。
おのれ、この尖った石め。
前輪がへなへなになった自転車を止めて、犯人ならぬ犯石(?)を睨みつけていた俺だが、妙なことに気づいた。
これは石じゃない。瓦の破片だ。断面が特徴的だし、つるりとした側には独特の曲線の名残が見られる。
「どっから現れたんだ・・・?」
アスファルト舗装の道に、他に同じような破片は見当たらない。
訝しみつつ周囲を見回していると、すぐ傍の板塀の向うから、いきなり怪鳥のような叫びと、何かの割れる音が聞こえた。
一体何なんだよ? ついびくっとしてしまった自分が情けない。
板塀の途切れたところが門だと気づき、そーっと歩いて見に行くと、そこは・・・
『○○流空手道場』
・・・そっか。空手か。てことは、今、庭で瓦割りしてるんだな。その破片の一部が、塀を越えて飛び散った、と。
文句を言いたかったけど、門の向うにちらりと見えた胴着の人が怖くてやめた。なんでかって、熊と闘っても勝ちそうな迫力をかもしだしてるんだもんさ。
パンクした自転車を押しつつ、そーっとその場を後にする。
それにしても。
どうして空手の人って瓦を割りたがるんだろう?
超ミニミニ劇場。
「逃げるコンタクトレンズ」
母さん、僕のあのコンタクトレンズ、どうしたんでせうね?
ええ、さっき、外して洗おうとして、
床に落としたあのコンタクトレンズですよ。
母さん、あれは高いレンズでしたよ、
僕はずいぶんくやしかった、
だけど、裸眼で何も見えなかったもんだから。
・・・この時、コンタクトレンズを落としたんです。眼鏡を掛けて床を這いずり回ってなんとか発見できました。