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ある日の<俺> 12月4日。 渋柿喰わせる悪い爺
この言葉、小説なんかでは良くお目にかかるけど。
『筆舌に尽くしがたい。』
・・・俺は今、それを身をもって体験している。
「ん~~~~~! #$%&くぁすぇdrftgyふj!!!!」
口を押さえて身悶える俺、いつもは怒ったようにむっとした顔をしているくせに、今はやたらと楽しそうに顔を綻ばせている花井の爺さん。
うわあああ、口の中が! 粘膜が! 剥がれる。ポロポロとピーリングされてしまう~~~!
顔を真っ赤にし、涙目になっているであろう俺に、明るい声で爺さんはのたまう。
「そりゃ渋柿だったか。毒見、ご苦労さん」
知ってたくせに。某水戸のご老公のように莞爾と微笑むその顔が憎い。何てもん食べさせるんだ、爺さん!
「みず、みずください!」
やっとの思いで声を出すと、花井の爺さんは、かっかっか、と笑いながら、既に用意してあったらしい甘い抹茶ラテを出してくれた。飲むのに程よい温度が、爺さんの確信犯であることを疑いのないものにしてくれる。
爺さん。今日は依頼された天井照明の蛍光灯交換をしたら、すぐ帰る。いつものサービスの肩たたき、してやんない。
渋柿は、強烈だ。