102/520
ある日の<俺> 9月24日。 芸術の秋 目から塩水
芸術の秋、というわけじゃないけど。
さっき、うとうとしながらテレビを見ていたら、ピアノの曲が流れてきた。よく知らないが、クラシックだと思う。
それが流れていたのはほんの短い間だったのに、気がつけば、鼻水が。
え? と思って頬を擦ったら、目から塩水が・・・
な、何だこれ。何だ、この乙女のような反応は(鼻水は乙女とは言い難いが)! 心の中は大パニック。こっ恥ずかしくて、その辺を転がりまわりたくなったが、身体はぴくりとも動かなかった。
どうやら、俺はそのピアノの音にいたく感動してしまったらしいのだ。こんなことは初めてだ。
心をふるわせる、その音色。
もう一度聴きたいと思ったが、ピアニストの名前も、その曲も、結局分からず終いだった。
更けゆく秋の夜。旅の空にはあらねば、寝床はすぐそこ。
もう寝よう。
夢の中で、あの音色に出会えるかもしれない。