三 妖怪狩りの陰陽師
時刻は午前二時を過ぎていた。小町は絹江とともに、黄泉国内にある診療所にいた。畳の上に敷かれた蒲団には、変化を解いて狢の姿になった吉孝が寝かされている。治療は終わり、血も綺麗に拭きとられたが、全身に巻かれた包帯が痛々しかった。
「もう命に別状はないじゃろう。ゆっくり休ませてやりなさい」
年老いた河童であり、この診療所の主でもある仙太郎が言った。
「ありがとうございます」
絹江が頭を下げる。
「それにしても、まだ人間界にはこんなことをする奴もおるんじゃなぁ。可哀想に、ここまでの患者は久しぶりじゃぞ」
仙太郎はそう溜息をついた。吉孝の体には、裂傷、打撲傷、火傷とただ怪我をさせられただけでなく、痛めつけられた証拠が刻まれていた。そこまでのことをされる謂われがこの少年にあったというのだろうか。小町は苦しげな表情のまま眠る狢の少年を見て思う。
「本当に、生きてて良かった」
小町の横で、ぽつりと絹江が呟いた。その両手は、吉孝の右手を包むようにして握っている。吉孝が無事だと知って散々に泣いた目はまだ腫れているが、やっと絹江にも笑顔が戻っていた。
「絹江ちゃん、もう大丈夫?」
「うん。心配させてごめん」
絹江は気丈にそう言った後、吉孝の頭を撫でた。
「私たちね、兄弟で二人で暮らしてるでしょう?この子は、私にとってのたった一人の家族なの。よく喧嘩もするけど、やっぱりいなくなるのは嫌だよ。本当にそう思った」
この姉弟は、黄泉国で同じ種族である狢の妖怪が開いている飯屋で働きながら、暮らしていた。他に家族がいない分、助け合って生きてきたことは、小町も良く知っている。
小町がこの黄泉国にやってきたのと同じくらいの頃に、絹江と吉孝の姉弟もここにやって来た。母や兄、義姉が美琴と親しかった小町と違い、絹江はこの国に誰も知り合いがいなかった。お互いに知らない国で暮らし始めることや、同じ獣の妖怪であったことなどから、小町と絹江はすぐに親しくなった。あの狢屋という店を美琴に紹介してくれるよう頼んだのも小町だ。
吉孝は、いつもそんな姉の後ろにくっついていた。小さなころは姉から離れようとしない子供で、絹江もそんな吉孝を可愛がっていた。今は成長して反抗したりもしていたが、それでもやはり、仲の良い姉弟だった。
「私、この子をこんなひどい目に合わせた奴が許せない……!でも、私じゃ何にもできない。悔しいよ小町ちゃん……!」
憤りと悲しみが混ざった声で絹江はそう訴えるように言った。もし犯人を目の前にしても、吉孝と同じような目に合されるだけだと、絹江はそう思っているのだろう。絹江も吉孝も、戦いなんてものとは無縁に生きてきた。そんな二人が、こんな姿になっているのを見るのは胸が締め付けられる思いだった。その平和な日々を、犯人は簡単に壊してしまった。何もできない歯痒さは痛いほどに分かる。
もしかすれば恒だって、美琴がいなければあの鬼たちに同じような目に合されていたかもしれない。もしかしたら殺されていてもおかしくはない。そんなことは想像したくもなかった。しかしそれが、絹江と吉孝の身に実際に起きているのだ。
仙太郎が熱いお茶を三つ持って小町らの前において、「飲みなさい」と勧めた。小町と絹江は礼を言い、一口飲んだ。こぶ茶らしく、潮の匂いがした。
「ずっと昔は、ただ妖であるというだけで虐げられる者をいくつも見てきたよ。人間にとって人間が特別なのは分かる、じゃが、どうしてその思想を攻撃として外に出してしまうのかのう」
仙太郎は沈んだ声でそう言った。小町や絹江がまだ生まれてもいない、昔のこと。まだ妖が異界だけでなく人間界でも生活していたころのことだろう。若い妖たちにとっては歴史の話でしかないものも、この老いた妖にとっては実際に体験した事実だ。
「昔は、こんなことが日常的だったのどすか」
「まあなあ、美琴様のように、ずっと異界に住んでいる妖は少なかったからの。美琴様がこの黄泉国をわしらに開放してくれたおかげで、今でもこうして平和に生きていられる。それは感謝しなくてはな」
そう言って、仙太郎は一口茶を飲む。
「つい数百年前、江戸時代にはな、人間が妖の上に立つ状況を許せずに、人を妖の下の置こうとした妖怪もおったんじゃよ。それは日本において妖の世界を二分する戦争に発展した。美琴様は人を守る立場について、こちら側が勝利した。あのときも痛みを負ったのは、結局妖怪側だけじゃった」
仙太郎はひとつ、溜息をついた。
「知ってます、私の義姉も、美琴様と一緒に戦っておりましたから」
小町は言うと、仙太郎は「そうか」、と思い出したように言った。
「君は、あの玉藻前の義妹じゃったな。あのとき山ン本に最初に対抗したのも、玉藻前殿じゃったよ。あの方も、人間によって印象を捻子曲げられた妖じゃよのう」
小町は頷いた。白面金毛九尾の狐、玉藻前。平安時代、朝廷を襲い、日本の転覆を狙った大妖怪とされている。だが、義姉はそんな妖怪ではない。それはずっと一緒に暮らしていた小町が知っていた。
「姉様も、人を守ろうとしたんどすよね」
「人だけでなく、妖もな。争いを生みたくなかったんじゃろう。罪のない妖や人が命を失うのが嫌だったんじゃ。美琴様も玉藻前殿も、かつては人間によって悲惨な境遇に置かれたと聞いておる。それでも、あの方々は人間全てを憎むことはしなかったんじゃなあ」
美琴も義姉も、自分からかつてのことは話そうとしない。小町も自分から尋ねたことはなかった。それについて知っているといえば、他の妖怪から聞いた真偽の曖昧なものだけだ。しかし、仙太郎の言うとおり彼女らがかつて自分が想像もできないような目に合っていたことは確かなようだった。
「わしは美琴様も玉藻前殿も間違ったことをしたとは思っておらん。じゃが、こんな風になった妖を見ると、人と分かりあうことなどできないと思ってしまうよなあ」
仙太郎は熱を計るように、吉孝の額に手を乗せる。狢の少年の目は、まだ閉じたままだ。
子供のころ、ずっとテレビの中のヒーローに憧れていた。どんな強敵が現れて、叩きのめされても、最後は必ず立ちあがって、悪を倒し弱きを守る、そんな正義の味方が好きだった。
陰陽師の家に生まれた自分には、それをできる力があると思った。いつか悪者から皆を守る正義の陰陽師になるのが、子供のころの夢だった。だが、そんな少年の心は、たった一日の出来事で壊された。
両親は、家に帰った時には既に体をばらばらにされていた。その妖怪は、自分と、隣にいた妹を見て満面の笑みを浮かべた。
恐怖で動けなかった。今まで生きて来て、様々な妖怪と殺し合ったが、あれ程までの恐怖は味わったことがない。伏見とその妹は、逃げようとした。だが、まだ十にも満たない少年と少女の体では、その悪夢から逃げられるはずはなかった。
まず最初に、妹が捕まった。彼女は少年の目の前で首と胴体を切り離された。伏見の目の前は、文字通り真っ赤に染まっていた。その光景は、悪者は必ず正義の味方に倒されると信じていた純粋な少年の幻想を打ち砕くのに十分過ぎる現実だった。
家族が目の前で殺された時、少年は自分の無力を呪った。正義を執行するためにはただ憧れ、思うだけではない、力が必要だと知った。それからは、修行の日々だった。祖父に習い、陰陽師としての戦い方を学んだ。父と母、そして妹の敵の妖怪と再び間見えたのは、十五になったころだった。
山姥という種族のその妖怪は、定期的に人間を襲うため山の異界から降りてくるようだということを突き止めた。人を食いにでも来ていたのだろう。その機会を狙い、殺した。
山姥の最後は哀れなものだった。最初は相手も刃物を使い、こちらに抵抗してきた。だが、何年も手入れしていないようにぼろぼろの包丁のような刃物など、全く怖いものではなかった。
家族を殺された怒りを、その妖怪にぶつけた。金の陰陽術で両手両足を切断したとき、山姥は命乞いをした。その姿が堪らなく憎かった。こいつは父と母と妹を惨たらしく殺したにもかかわらず、自分の命だけは助かろうとしていたのだ。勿論、許すことはなかった。動けない相手を火で焼き殺した。人食いの老婆は、炎の中で悲鳴を上げながら灰と化した。
だが、それでも心の中に沈殿した恨みは、消えることはなかった。自分の怒りは、この世に存在する全ての妖怪に向けられているのだと伏見は気がついた。自分のような被害者を増やさないためにも、仕事を続けなければならない。そう、かつて自分が幻想の中に見た正義の味方のように、自分は悪には負けることなく、滅ぼさなければいけない存在だった。
山姥に襲われたあの日、自分を助けてくれ、そして陰陽師として育ててくれた祖父は一年前に他界した。伏見は唇を噛み締める。もう伏見には残っている家族も、頼れる者もいなかった。後の仕事は、一人でやるしかない。幸いなことに、もう伏見は誰かに教えてもらうことなどないほどに、対妖怪の力を持った陰陽師として成長していた。
夜明けが迫る空の下、伏見は背後の気配に気付き、立ち止った。自分が立ち止ると、後ろを歩く者の足音も止まる。この習性を持った妖怪には覚えがある。
「べとべとさん、先へお越し」
そう告げると、姿の見えない足音だけが伏見の横を通り過ぎて行った。伏見はその現代に場違いな下駄の音に、照準を定める。
「死ね」
その言葉と同時に放たれた式神は、べとべとさんと呼ばれた妖怪の真上で紙から金属の塊へと変化した。それは逃げる間を与えず妖の上に叩きつけられ、下駄の音はぱったりと止んだ。
「汚らしい」
式神を手元に戻すと、原型のなくなった妖の死骸が地面にこびり付いていた。かろうじて形を残しているのは足に履いていた下駄だけで、後は薄緑色をした皮膚らしきものと、骨やら内臓やら肉やら血やらが混ざり合ってコンクリートに染み込んでいる。
妖の死体は、どうやら何らかの要因によって時間が経過すれば消えるようだった。恐らく、人間に自分たちの正体をばらさないための妖怪たちの姑息な手段だろう。もし死体が残れば、科学的、効率的に妖怪を殺す手段が見つかるかもしれないのに。
現在の妖怪は、異界と呼ばれるこちらの世界とは別の世界に生息しているらしい、ということは知っている。しかし、その異界を見つける手段が未だに見つかっていない。何度か妖怪を捉えて尋問してみたこともあるが、彼らの言う通りにしても異界に入ることはできなかった。どうやら、ただその出入り口を見つけるだけでは入ることはできないらしい。
忌々しい、伏見はたった今殺したばかりの妖怪の死体に向かって唾を吐く。こうやって人間界にのこのことやって来た馬鹿な妖怪しか獲物にできないのがもどかしかった。いちいち探して、少しずつ殺しては埒が明かない。
もしかしたら、こうしている間にも自分と同じように妖怪に襲われ、家族を失っている人々がいるかもしれない。そう考えると、どうしようもないほどいらついた。
妖怪の存在を信じる人間は少ない。その危険性を訴えたところで鼻で笑われて終わりだ。陰陽師の家系に生まれた伏見は、幼いころからその存在を教え込まれて育ってきて、そして目の前で家族を殺された。
あの時も、警察は変質者による殺人事件として扱った。まだ十にも満たない少年が何を言っても、事件の恐怖で幻覚を見たくらいにしか思われず、取り合われはしなかった。それが悔しかった。
妖怪の存在を人々に伝えることは、もう諦めた。そんな時間と労力があれば、妖狩りに使うべきだ。それでも、自分だけは妖怪を相手に戦わねばならない。自分は妖怪に正義を行うことができる数少ない人間なのだ。自分が動かねば、誰が人々を守れる。
そう、今丁度目の前にいる妖怪たちを狩ることができるのは、自分だけだ。
「私の息子を殺したのは、貴様か」
灰色の和服を着た初老の男の姿をした妖は、そう伏見に向かって尋ねた。その後ろも、三人の男が立っている。全員妖怪だ。その形相は、見るからにこちらに敵意を向けている。
「妖怪なら何匹も殺した。いちいち何を殺したなど覚えていない」
式神を懐から出しながら、そう答えた。
「そうか。やはりお前か。こんな時間に外を歩いている人間などほとんどいない。追ってきて、正解だった」
男の目が、赤く変化した。そして体が灰色の鱗に覆われたかと思うと、巨大な蛇の姿と化した。後ろの三人も同様に、大蛇の姿になっている。
「息子を奪ったお前を許す訳にはいかん。その命、頂戴する」
静かな口調でそう言い終わると同時に、四匹の大蛇は一斉に伏見に向かってその首を伸ばした。複数で掛かれば勝てるとでも思ったのだろう。伏見は鼻で笑って、式紙を空中に放った。
「子供がなんだ。妖怪風情が親子愛を語るな」
先程べとべとさんを押しつぶした金の式神は、球体から今度は無数の刃物の形へと変化し、大蛇たちを襲った。ばらばらにされた蛇たちは、いくつもの肉塊となって地面に落ちた。
やはり、悪が正義に勝てる道理はない。伏見は満足し、式神を紙に戻す。それを回収すると、朝日が目に飛び込んで来た。日の出、妖の時間は終わりだ。
伏見は大蛇の亡骸を踏みつけて、その場を後にした。
朝日が昇る時間になっても、絹江は吉孝の側を離れようとしなかった。小町も絹江と吉孝の側から離れず、診療所で一晩を明かした。呼吸は安定して、脈拍も戻ったが、それでも吉孝は目を覚ます気配がなかった。よっぽどの妖力と体力を使ったのだろう。
「まだ眠ったままかい」
良介が、そう言って顔を出した。診療所に様子を見に来たようだ。
「はい、まだ一度も……」
絹江が答える。
「そうか……、とりあえずこれでも食べなさい。昨日の夜からずっと食べてないだろう?」
良介が小町と絹江に、おにぎりと、携帯容器に入った味噌汁を差し出した。どちらもまだ暖かく、空腹の体に染みいる匂いがする。
「ありがとうございます」
礼を言って、二人で食べる。具は梅のおにぎりで、吉孝の様態を一晩中心配して憔悴していた二人の体には、優しい味がした。
「あの、犯人は見つかったのですか?」
絹江が良介に向かって尋ねるが、良介は静かに首を横に振った。
「いや、まだだ。ただ、犯人は人間らしいということは分かった。街中を式神が徘徊していたと美琴様から連絡があった。相手は陰陽師だ」
「陰陽師……?」
声を出したのは小町だった。
「そうだ。さっきまた四体の妖の死体が見つかったらしい。全員黄泉国の住人ではなかったようだが、家族を殺されて犯人を追ってここまで来た妖怪もいたらしい。全くひどいもんだ。人間の世界で言えば連続殺人犯だぞ」
忌々しそうに言う良介に、小町は頷いた。陰陽師のことは知っている。故郷である夢桜京は、人間界で言えば近畿地方、特に京都に境界を持つ異界だった。
京都はかつて妖が数多く住む場所だったと聞いている。その分、妖について知っている人間も多かった。今でも陰陽師の家系は京都で続いていると、夢桜京では教えられていた。ただし、妖のことを良く知っている分、妖怪に対して理解がある人間も多いと、兄や義姉は言っていた。だが、木久里町に現れたそんな人間ではないようだ。
「陰陽師なんぞが、木久里町に何の用があるのかのう」
良介から受け取った味噌汁を飲みつつ、仙太郎が言った。
「さあ分からん。だが、このまま放置しておいたら被害が拡大するばかりだ。早いとこ見つけないとな」
そう言い残し、良介が診療所を出ようとした時だった。吉孝の目が薄く開いた。
「吉孝!」
絹江が声を上げると、瞼の奥の瞳が、目を潤ませた姉を捉えた。
「姉さん……」
「吉孝!良かった、意識が戻ったのね!」
「姉さん、ごめん……、お土産無くしちゃった……」。
「そんなことは良いのよ。死んじゃうんじゃないかと思ったんだからね……」
吉孝の手を握りながら、絹江は大粒の涙を流し、笑った。小町もほっとして、絹江の肩に手を置く。これで立った一匹だけども、妖の命は救われたのだ。
「吉孝君、いきなりで済まないのだが、君を襲った犯人の特徴を教えてくれないか。犯人はまだ、人間界で他の妖を襲っているんだ」
良介が端的にそう尋ねる。吉孝は良介の姿を認めて、ゆっくりと頷いた。
「上下を真っ白な服で統一した……、若い男でした。人間なのに、妖怪みたいな匂いをさせていて……、僕に話しかけてきたんです。そして、人のいないところに連れていかれて……」
その男に、小町は覚えがあった。まさかと思いながら、吉孝に尋ねる。
「他に、何か特徴は?」
「えっと……、僕が姉さんに頼まれて買ったお土産を持って行きました……。あの小さい鼬のキーホルダーを」
「イタチーよ」
絹江がそう付け足した。小町はそれで確信した。あの男だ。白い服を着て、奇妙な匂いをさせ、自分にキーホルダーのキャラクターの名前を尋ねてきたあの男。あれは、自分が妖怪か確かめるためだったのか。
小町は拳を握った。もし自分があの時気付いていれば、もっと被害は少なくて済んだかもしれない。吉孝ももっと早く見つかっていたかもしれない。小町は決意して立ち上がった。
「良介はん、私がその男を探してきます。美琴様にご連絡お願いします」
小町はただそう告げて、診療所を飛び出した。もう居ても立ってもいられなかった。朝靄のかかる黄泉国の中、石畳を蹴りながら妖狐の姿に変化する。
その姿のまま、境界を潜って人間界に出た。この時間なら、まだ人間の数は少ない。この姿のままの方が走るのはずっと速い。犯人がこの木久里町にいる間に見つけなければならない。
相手は人間だ。妖気を辿ることはできない。だが、小町にはもう一つ敵を辿る術があった。匂いだ。獣の妖であるが故のこの能力が役に立つ。相手の匂いは、昼間の会ったお陰で知っている。
もし対峙したところで、勝てるかどうかは分からない。だが、今相手の位置を特定できるのは小町しかいない。せめて美琴が来るまでの時間稼ぎはできれば良い。陰陽師の居場所は辿れずとも、自分の妖気なら分かるはずだ。
伏見は木久里町にある空き地の中心で、朝の陽光を浴びていた。昨晩町に放った式神は五つ、だが、現在手元に戻ったのは四つだけだった。
これらの式神は妖を見つければ自動的に攻撃するよう術を掛けていたのだが、ひとつは何者かに撃破されたということだろうか。だとしたらそれなりの妖怪なのだろう。
だが、悲観することはなかった。自分がその場にいるかいないかで式神の戦闘力には絶対的な違いがある。それに、自分の攻撃方法は何も式神だけではない。
伏見は四つの式神を懐に戻した。そして自らの式神を倒した相手を探そうと足を踏み出した時、上空から迫る妖気に気が付いた。




