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黄泉夜譚 ヨモツヤタン  作者: 朝里 樹
第四六話 幻は霧雨にみだれて
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四 魍魎の声

 あの日、すだまは村を守るためにその身を犠牲にした。それなのに彼女は今度は村を壊すために祠を出ようとしている。それが悲しく、また許せなかった。

 それではすだまが邪魅と化した意味がない。彼女が自分の守ろうとしたものを自分で壊してしまおうとしている。それはかつてのすだまの想いの全てを自ら無に帰してしまうことに他ならない。そんな変わり果て、己の行為を否定してしまうような彼女の姿を見るぐらいならば、自分はすだまとともにこの世を去るべきだと、そう思っていた。それなのに、そう決めてから多くの時間を費やしてしまった。

 今夜は祭りが開かれる。かつて村の人たちがみずはとすだまのために始めてくれた大きな祭り。その日だけは良くみずはとすだまも人の前に姿を現した。ともに踊り、ともに歌い、楽しかったとみずはは笑む。

「遠い昔のように人の亡骸の肝でも喰らえば、また力も付くやもしれません。だけど私にはもうそんなことはできない。一度人を愛してしまった故に、もう人が悲しむことはできなくなってしまった」

 数日前、自分たちのことを救ってくれると言ってくれた少年がいた。名は恒といったか。彼のことは信じていたし、彼が約束を破るとは考えていないけれど、もう時間がない。きっとこれ以上すだまを封印し続けていれば彼女を道連れにするほどの力も失われてしまう。だから待つのは今夜が最後だ。今宵、恒が現れなければひっそりと自分たちは姿を消そう。そうみずはが考えていたときだった。

「みずは、というのはあなたかしら」

 夕暮れ迫る空を背にして、一人の妖が立っていた。黒い髪を腰まで伸ばした女性の姿をした異形。しかし人の娘と変わらぬ外見そとみのその妖が強力な妖気を漂わせていることにみずははすぐに気が付いた。

「あなたは……?」

「私の名は美琴、恒という少年にあなたのことを聞いて助けに来たの」

 その女性はそう答えた。はっきりとした、けれども綺麗な声だとみずはは思う。

「恒様が……」

「そう。あなたを救いたいと、そう言っていたわ。私はそれを手伝いに来た」

 やはりあの少年は約束を破らなかった。自分を助けるために動いてくれた。それだけでみずはの胸は一杯になる。

「そして、これが邪魅の祠のようね」

 美琴はみずはの横に建てられた祠に目を向け、そう言った。話は恒から聞いているのだろう。みずははひとつ頷く。

「はい、だけれどもう彼女を封印しておくのは、今宵が限度だと思っています」

 現れた二人の怪異に反応してか、祠の中のすだまが暴れているのを感じていた。彼女が祠の封印を破ろうともがく度に、みずはの体に痛みが走る。

「ええ、このままだとそうでしょう。もう封印にひびが入り始めている」

 美琴は微かに眉根を寄せた。見ただけでそれが分かるのだろうか。もうそれほどまでにこの封印も、自分も弱っているということか。みずはは唇を噛んだ。

「しかし、まだあなたも邪魅も救う方法はまだ残っているわ」

 美琴が優しく笑んだ。みずははその言葉と表情に、かつて村を救ったあの夜のすだまの姿を思い出す。

「本当に、そんな道があるのでしょうか……」

「ええ、あなたを救うと言った恒の言葉を信じてあげて。彼は今、あなたのために奔走しているの」

 美琴の声が夕闇に解ける。みずははたった数日前に出会い、話しただけの少年を思う。なぜ彼は、そして目の前の美琴は、何の関わりもない自分たちのために力を尽くしてくれるのだろう。

 そう思っていると、美琴がその口を開いた。

「彼はひたすらに優しいのよ。いつも他人のことばかり助けようとする、自分の身に余ることでも引き受けてしまう。それがあの少年なの。でもそれが悪いことだとは思わない。自分のできることを精一杯に行う、それで良い。自分のできないことのために誰かを頼ることだって罪ではない。それで誰かを助けられるのなら」

 みずはの疑問に答えるように美琴は微笑し、言った。優しいから誰かを助ける。少年はただそれだけの理由で自分のために動いてくれた。美琴もまた、そうなのだろう。

 自分に得なことがなくたって、助けたいから助ける。それはみずはやすだまがかつて村人たちに対して思ったことと、そして今みずはがすだまに対して望んでいることと、きっと同じ。

 ならば今回だけは、そのやさしさに甘えても良いだろうか。すだまを助けるために、この村の神として存在し続けるために。生きていさえすれば、いつかは恩を返すことができるから。

「ありがとう、ございます。私からもお頼みします。私を、すだま様を助けて下さい……!」

 みずははそう頭を下げる。もっとこの場所にいたい。もっとあの村の日々を眺めていたい。そしていつか、またすだまとここでもう一度話をしたい。そんな想いが溢れ出す。

 美琴はみずはの言葉に優しく笑って頷いた。

「分かったわ。しかしこのままではもうあなたの体が危ない。一度、邪魅を解放する必要がありそうね。それに彼女もまた、外の世界にいた方が感じ取れるでしょう。人々の心を」

 美琴はそっとすだまの祠に手を当てる。不意にみずはの体から痛みが遠退いた。

「あなたはそこで見ていて。後であなたの力が必要になるはずだから。それまでの時間は、この私が稼ぎましょう」

 邪魅の祠から闇が溢れ出す。それはやがて、黒い獣の姿を形作った。




 死神が刀を抜いた。人々の悪意によって膨れ上がった邪魅の体は美琴の体より遥かに大きく、爛々と光る眼が彼女を見下ろしている。黒い体毛に覆われた体は薄黒い妖気を纏い、そしてその存在の内には人々の負の感情が凝固している。

 人を救うために人の悪気を食らい、そして自らの心を失なった妖魔、邪魅。人のために、村のために己を犠牲にしてあのような姿と化したのに、それを村が忘れ、そして人が彼女を思うこともなくなったときすだまという人を愛した神の心は人への憤怒と憎悪に傾いた。壊れかけた心の隙間にそれは入り込んだ。

 その時本当に魑魅は邪魅となったのだろう。邪魅の瞳から雫が落ちた。

「けれどあなたの物語は、幕を引くにはまだ早過ぎる」

 邪魅の巨大な腕が振り下ろされる。美琴は横に一歩動いてそれをかわした。

 陽は沈み、夜の川辺に蛍が舞う。淡い魂の光の乱舞を背に邪魅が咆哮を上げた。それを真正面に見つめながら美琴は手首を微かに動かし、刀の刃を下に、峰を上とした。

「あなたの行いは、私たちが決して無駄にはしない」

 横に振るわれた邪魅の爪を避け、死神の姿は蛍の空に跳んだ。




 道路の両脇に様々な出店が並んでいる。夜空は提灯の光に明るく彩られ、様々な人々の話し声が通りを賑わせている。

「荻野さん!」

 その祭の喧騒の中で恒は探していた姿を見つけ、駆け出した。頭上に飾られた提灯が揺れている。みずはとすだまを救うためには、どうしてもあの人の力が必要だった。

 恒の声に気が付いたのか荻野は立ち止まり、そして振り返った。恒は息を切らしながら荻野の前で立ち止まる。

「池上君、だったかな。そんなに慌てていったいどうしたというんだい?」

 荻野は心配そうに恒の顔を覗き込んだ。だが恒はその問いには答えず、逆に荻野に向かって問いを投げ掛ける。

「荻野さんが昔見たというこの村の水神様、彼女を荻野さんが助けられるのだと言ったら、僕を信じてくれますか?」




「おお、恒。結構人集まったぞ」

 恒の姿を見つけた水木が恒にそう手を振った。その言葉の通り、彼は子供から大人まで十数人の人々の真ん中に立っている。

 場所は祭の会場からそう遠く離れてはいない川辺だった。地面には一面に御座が敷いてあり、その上に人々は座っていた。

 水木も飯田も本来はここにただ祭と蛍を見に来る予定のはずだった。だけれど恒ができるだけ多くの人たちをこの場所に集めてほしいと頼んだら、詳しい理由を話さずとも快く了解してくれた。

「ありがとう水木。僕も今日の主役を連れてきたよ」

 荻野には、ここに来る道中何をして欲しいのかは話してあった。そして荻野もまたそれに同意してくれた。実際に一度でも神の姿を見たことのある彼だからこそ、信じてくれたのだろう。この村の神が消えようとしていることも、それを救うために荻野の力が必要であるということも。

 この周淡町を、かつての周淡村を守り続けた二柱の神を救うのは、この場所で生まれ育った人間にしかできないことだ。人は神を忘れてしまった。だが、彼らの中からみずはとすだまの存在が完全に消えてしまった訳ではない。

 忘れてしまったのなら、思い出させれば良い。この町を思い続けた神のことを。

「荻野さん、お願いしても宜しいですか?」

 恒は確認するように荻野に問うと、荻野は暖かな笑みを見せて頷いた。

「私の言葉が少しでもみずは様の役に立てるのならば、それほど嬉しいことはないよ」

 そう言って荻野は人々の横を通り過ぎ、そして彼らの前に立った。子供たちも大人たちも現れたその老人の姿に視線を移す。

 荻野は人々を見渡し、そして夜気を大きく吸って話し始める。

「私がこれから皆さんにお話しするのは、この村に伝わる二人の神様についての物語です」




 邪魅の牙が美琴を掠め、虚空を噛んだ。美琴は邪魅の頭に掌を着き、縦に一回転して草原に降り立つ。

 その戦いの様子をみずははただ離れたところから見守っていることしかできなかった。美琴はすだまを傷付けぬよう戦っている。だが邪魅と化したすだまは違う。その邪念の塊である己の存在を明確な殺意へと変えて美琴へと襲い掛かっている。

 確かに邪魅を封印している必要がなくなったお陰で少しの力は戻った。しかしまだ足りない。けれども美琴の話してくれたことが本当に起こるのならば、またすだまとともに生きる道が残る。この村の神としてこれからも。

 夜は更け、川辺の草の影から蛍が舞い始めた。それは満点の星空のように夜空を彩り、そして川面に儚い光の影を反射させる。

 みずははその光とともに、自分の神としての力が再び戻り始めているのを感じていた。




「そうして、すだま様はこの村を守れられたのです。しかしそれにより怪物となってしまったすだま様は、いつか元の姿に戻るその時までみずは様により封じられることとなった。それがこの町が周淡村と呼ばれていた頃の物語です。しかしみずは様は、今もまだこの町を見守って下さっています」

 荻野はそう語り終えた。いつの間にか聴衆は増え、三十人ほどの人々が彼の話に耳を傾けていた。

「僕、その話知ってる。おばあちゃんが前に教えてくれたんだ」

 小学生ぐらいの少年がそう口に出した。

「私も知ってる。前に図書室で読んだ」

「そういえば、うちのじいちゃんもそんな話してたなぁ昔」

 荻野の語りが人々の記憶を喚起したようだった。周淡村、そして周淡町に語り継がれてきたみずはとすだまという二人の神。それは人々の記憶の中に希薄となろうとも、全く消えてしまった訳ではなかった。

 荻野は満足げに頷いた。そして再び口を開く。

「ええ、この物語は、村の、そして町の人たちがずっと語り続けて来たものでした。この村を救ってくれた神たちへの感謝を忘れないように。そしてこのみずは様、すだま様とともに歩んで来たこの町の歴史を忘れないために」

 荻野もまた、この話を母に教えられた。小さなころ夜眠る前の物語として。だけど実際にあの日あの夜の川辺で霧雨の向こうにみずはの姿を見なければ、それは幼いころの思い出として記憶の奥底に沈んでいたかもしれない。ここにいるみんなと同じように。

 その時不意に川辺に蛍の光が乱舞した。人々は感嘆の声を上げ、空を見上げる。荻野もまたその光の軌跡を見た。彼がみずはを見たのも、蛍の光の中だった。

 そして荻野は思い出す。この町では死んだ人間の魂は蛍になると伝えられていたことを。かつてこの町でみずはやすだまとともに暮らした人々の魂も、蛍へと変わったのだろうか。

 蛍の数はその間にも増え続けた。それは光の雨のように夜を照らし、そしてあの水神と山神の祀られる祠の方に向かって飛んで行く。




 不意にたくさんの蛍が美琴の頭上を飛び交い、そして邪魅の目の前に光の壁を作るようにして留まった。それにより邪魅の動きが止まった。美琴が刀の背で受け止めた彼女の爪から力が抜け、そっと大地に下ろされる。

「この村の人々は、あなたを忘れた訳ではなかったのよ」

 美琴は刀を収めた。すだまの中から少しずつ悪鬼が抜けて行くのを感じる。人々が彼女を思い出したのだろう。かつて神として周淡村を守ったすだまの物語を。

 彼女の怒りは人々の為にその身を犠牲にしたその過去を、人々が忘れ去ってしまったことによるもの。それが吸収した人々の邪気によって増幅され、彼女を支配している。

 だが人々がすだまという名の神であった彼女を思い出したなら、身を挺して人々を守ったことを知ったのなら、それは村の守り神であったすだまとしての彼女の力となり、彼女の中にある邪魅の力を拮抗する。そしてもう一つ、人々が村の神を思い出すことには意味がある。

「それにどんなことがあろうとも、あなたのことをずっと思い続けていたものがいる。そうでしょう?」

 邪魅の黄色い瞳が美琴からずれ、そして美琴の背後に現れたみずはに移る。みずはは邪魅を見上げ、そして言う。

「すだま様、もう一度眠りましょう。あなたが元に戻ることができるその日まで、私はいつまでもあなたを守り続けますから」

 みずはの赤い手が邪魅の黒く固い毛皮に触れる。邪魅はただ、みずはを見つめたまま頷いた。

 そして邪魅の体は再び黒い闇の塊となって大地に崩れた。それは蛍の光に紛れるようにして消えて行き、やがて邪魅は再度みずはによって封じられた。

「ありがとうございました美琴様。あなたたちのお陰で、私たちはまだこの村の神であり続けることができそうです」

 みずはは美琴を振り返り、そう笑んだ。美琴もまた微笑し、頷く。

 かつて神のために開かれたこの祭の夜に周淡町の人々が神としてのみずはとすだまを思い出した。それは信仰とまでは行かなくとも、みずはにとっては霊力、妖力となり、また邪魅にとってはすだまであった頃の力を呼び覚まし、そして邪魅としての力を抑えることにもなった。

「ええ、今日蓄えたあなたの力が尽きるより前にきっと邪魅は元の姿へと戻るでしょう」

 そう告げる美琴の肩に蛍が止まった。見れば、あんなにも数多に乱舞していた蛍の姿はみずはの戦いを見届けたように、次第に数を減らして行く。

 みずははその蛍たちを見て呟く。

「死んだ人間の魂が蛍になる。そんな話が人々の間には伝えられていました。もしかしたら、彼らもまた私たちに力をくれたのかもしれません」

「そうね。ならばこの蛍たちは、あなたたちが守り続けた村の人たちが、今度はあなたたちを見守りに来てくれたのかもしれないわ」

「私はそう、信じています」

 美琴の肩から蛍が飛んだ。みずはは役目を終えて消え行くその数多の光たちをいつまでも見つめていた。




 あの祭の夜から一日が過ぎていた。昼食を取った後ぼんやりと縁側から庭を眺めていた恒の隣に美琴が座った。

「お饅頭食べる?」

「すみません、頂きます」

 美琴に差し出された饅頭を手に取り、口に運ぶ。口の中に甘い餡子の味が広がった。

「みずはさんはもう、消えることはないのでしょうか」

「さあね。それが確実かどうかは分からないけれど、しばらくは問題ない筈よ。邪魅の力は弱まり、そして水神の力は強まった。だからきっと無茶なことをしなければ、少なくとも邪魅が魑魅に戻るまではあの場所に居られると思うわ」

 美琴のその言葉に恒は安堵する。村のために自ら死ぬなんて選択を、もう彼女にはしてほしくなかった。

「これからもみずはさんは、あの村の神であり続けるのでしょうね。いつかは荻野さんにも、みずはさんのことが見えたりするのでしょうか」

 恒のその問いに、美琴は小首を傾げた。

「魍魎という妖怪はね、古くから人の声を真似て河川を通りがかった人を惑わすと伝えられているわ。だからその朦朧とした姿は見えずとも、もしかしたら声は届くかもしれないわね」




 川のせせらぎは、今日も高く昇った太陽の光を様々に反射させている。みずははまたその場所でその水の流れる音を聞いていられる幸福を噛み締めながら、二つの祠の間に佇んでいた。

 そしてその日も同じ時間に荻野はやって来た。いつものように祠に手を合わせ、そして二つの祠に言葉をくれる。だけれどみずはがそこにいることに気付くことなく、いつもと同じように彼は祠に背を向けてしまう。

 このさんさんと晴れた空の下で、彼の目はみずはの姿は映さない。それでもみずはは彼に何か言葉を伝えたかった。例えそれが届かなくても、自分とすだまとを救ってくれた人間をそのまま何もせず見送ることはできなかった。

「あなたのお陰で私は今日もここにいます。本当に感謝しております」

 その声は、確かにみずはの口から紡がれた。そしてそれはいつものように彼を通り過ぎ、夏の空に消えるはずだった。

 しかし祠に背を向けて元の道を辿ろうとしていた彼の足は止まり、まるで、誰かに呼び止められたかのようにそっとその顔を振り向かせた。



異形紹介


邪魅じゃみ

 鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』に描かれた獣のような妖怪。解説には「邪魅は魑魅の類なり。妖邪の悪気なるべし」とある。


 邪魅は元来中国にて使われていた言葉で、主に悪しきもの全般を指すような用法が目立つ。例えば『無垢淨光大陀羅尼經』という経の中における邪魅は夜叉、羅刹等と並んで人を害するものの一種として並べられており、『金光明最勝王経』における邪魅は悪星、変怪、蠱道、といった言葉とともに並べられている。また『大唐六典』には呪禁師は呪禁をもって邪魅を追い出し治療を行うとあり、『南海寄帰内法伝』には鬼障はすなわち邪魅であるとの文章が記される。さらに『本草綱目』においては「術者は犬を地厭として一切の邪魅妖術を祓う」、「狗の血は諸々の邪魅を避ける」、「虎皮を焼いて飲めば卒中風を治し、また瘧疾おこりを治して邪魅を避く」といった文言が見られ、これを元にした日本の『和漢三才図会』においても「術者は犬をもって地厭となし、一切の邪魅妖術を祓う」との内容が書かれている。他にも同書には、象牙は一切の邪魅およびかさを治すといった言葉も見られ、邪魅という言葉が妖魔のような存在から疾病まで様々な悪しきものを指すものであったことが予想できる。

 その一方で石燕の影響か現代における邪魅は妖怪の一種として認識されることが多く、また人の悪心によって生まれる妖怪として描かれたり。また人に憑く妖であると様々な性質が描写されている。


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