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黄泉夜譚 ヨモツヤタン  作者: 朝里 樹
第四三話 黄泉夜譚(前篇)
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三 死神の名付け親

「ば、化け物だ!」

 村の誰かが叫んだ。今まで何度も私にぶつけられて来た言葉。だが今に限っては意味が違う。私は本当に化け物になってしまったのだろうから。だが恐ろしくはなかった。悔いることもない。これは私が望んだことだから。私は炎の向こうに霞む群衆を睨む。

 人でなくなったから何だと言うのだ。元々私には人の世に居場所などなかった。人だろうと化け物だろうと、こうして私の意思がある以上、私は私だ。それが変わることはない。

「本当に物の怪になりやがったか」

 樋野伎の声が聞こえた。直後彼が目の前に迫り、その刀が私の腹部に突き立てられる。その刃先が私の背を突き破った感覚があった。それを見た人々から感嘆の声が上がる。

 だが痛みはあまりなかった。私はこんなものでは死にはしない。

 私はもう人ではない。妖なのだ。私を食らおうとしたあの化け物たちのように、そして私のせいで死んだ岐蝶のように。

 村のものたちは化け物をこの村から遠ざけようとして、逆に化け物を作り出した。樋野伎の武器など私の今の妖力の中ではほとんど意味をなさなかった。

 私は樋野伎に目を向けて、そして彼の纏う霧のようなものに気付いた。私は本能的にそれが彼が今まで命を奪って来たものたちの怨嗟であることを知り、顔を歪めた。

 恐らく樋野伎はずっとそうやって、弱い妖や私のような人間に全ての罪を被せ、殺すことで各地の村の人々に危機は去ったと嘘を吹き込んで来たのだろう。そうして嘘がばれる前に報酬を手に入れ、また次の村へと流浪する。それは容易に想像がついた。

 この男は罪なき命を幾つも奪って来た。だがそれも今宵で終わりだ。

 私は己の臓腑を抉る刃を右手で掴むと、そのまま力任せに樋野伎の手から刀を奪い、同時に己の体の中から引き抜いた。そしてその柄を握り直すと、相手が反応する間もなく血の滴る刃で首を刎ね飛ばす。樋野伎の頭部は口を開いたままに固まり、地面に転がった。

 それから少し遅れて樋野伎の体は首から血を吐き出しながら紫の炎に向かって倒れた。彼の体は焼け焦げ、そして炭となって行く。樋野伎は私のように起き上がる様子はなさそうだった。私はそれから目を放し、目前の村人たちを見た。

 私は刀を握ったまま一歩踏み出した。樋野伎という後ろ楯を失くした人間たちは、怯えるばかりでもう私に立ち向かって来ようとはしなかった。

 あるものは逃げ、あるものはその場で座り込み、親は子の前に立ち、夫は妻の前に立つ。あんなに恐ろしかった彼らの姿は、今の私の眼には酷く弱々しいものに見えた。

 私は彼らから目を背けた。怨みが消えた訳ではない。許すつもりもない。だがもう彼らを斬る意志は沸いて来なかった。村人たちを全て殺すことなど今ならば容易だろう。しかしそうしたところで私の過去が返って来る訳でも、岐蝶が甦る訳でもないと思うと虚しさが去来する。

 もう村人たちは私に手を出すことはできない。ならば私も、もうこの村には関与はしない。これ以上、この村や村人たちと私との間に繋がりができることが嫌だった。だから私の方からこの村を捨てよう。

 私は樋野伎が落とした刀の鞘を掴むと、その中に刃を仕舞い込んだ。これからどんな妖が現れ、そしてこの村が滅びようともそれを悔やむこともないだろう。

 もう村に用はない。私は彼らに背を向けた。私は化け物となったのだ。ならば私が願った通りに、そして彼らの望み通りにこの村から姿を消すだけだ。

 空を見上げれば下弦の月が夜を照らしていた。私はその月が浮かぶ方へと目的もなく歩き出した。




 それから私は、ただ独りの物の怪として各地を放浪した。他の物の怪に出会い、襲われることもあったが、その度に戦い、退けた。傷の治りは人であった時以上に早かったからどんなに傷付いても死ななければ問題はなかったし、身体能力もあの頃に比べればずっと強くなっていた。

 それに何日も眠らず、食べずでも動くことができたし、五感も鋭くなり、また今まで見えなかったものも見えるようになった。それは死したものの魂であったり、空間に現れた裂け目であったり、そして樋野伎の体に纏わりついていた、奇妙な匂いを持つ霧のようなものであったりした。

 その不可思議な匂いを持つものたち。それらに対しては言いようのない殺意が沸いた。彼らは皆、凄まじいまでの怨恨を他の者たちから買っていた。殺し、騙し、罪のない人々を不幸に陥れるような存在、そのものたちから私はその匂いを感じた。

 勿論正義感から来る憤りもあったのだろう、だがそれ以上に、私は本能的な殺意を抱いた。匂いが強ければ強い程、私の中に生まれる殺意も強くなった。

 時に戸惑いながらも、私はその本能に従って流浪した。だがそれだけでは生きられぬ。幾ら体が変化したとは言え、いつまでも食べず、寝ずでは限界がある。そのため食物、眠る場所を得るために、各地の村を回っては物の怪を退治して報酬をもらい、糊口を凌ぐこともあった。

 そんな日々を続け一年ひととせ程過ぎた頃のこと、私はあの人と出会った。私に名を与えてくれたあの人と。




 青紫に瞳を染めた、女の物の怪。その凄まじい妖気を前にして、私の足は竦んだ。瞳と同じ青紫の和装を纏ったその女性は、剣を右手に握り、そして切れ長の目で私を睨む。

「近頃この辺りで暴れているという妖は、あなたね」

 その人は私にそう問うた。私はその時、ただひたすらにあの匂いを持つものたちを見つけては殺していた。それしか生きる目的を見つけられなかったから、ただ独りで刀を振い続けていた。その先に何があるかなんて考えることもなく。そしてそんな私の前に突如として現れたのが彼女だった。

 私は震える手で刀を構えた。あちらが私に敵意を向けている以上、私の選択肢は戦うか逃げるかどちらかしかなかった。だがきっと逃げても無駄だ。それならば戦うしかない。

 私は刀を振り上げて、その人に向かって大地を蹴った。そしてその疾走の勢いのまま、彼女に辿り着く直前に刀を振り下ろす。渾身の一撃の筈だった。だが、私の太刀は彼女に触れる前に容易く弾かれた。

 全く敵わなかった。もう一度刀を叩き込もうと横に振うと、その人は片手に持った剣で私の刀をあしらい、刃を叩きつけて私の太刀の刀身を折った。

 弾かれたさっ先が土に突き刺さる。私はもうほとんど使い物にならなくなった太刀の柄を握り締めながら、それでもその人と対峙した。

 勝てる訳がないと分かると、どうしてもあの死の瞬間を思い出してしまう。痛みと恐怖と怒りと憎悪に塗れたあの時を。それがどうしようもなく怖かった。それでも私は、武器を握ることしかできなかった。

 しかし私を鋭い視線で睨んでいたその人の目がふと和らいだ。私は困惑して、思わず折れた太刀を下ろす。

「あなたも死神なのね」

 その人はそう、幼子に見せるような優しげな笑みを見せた。死神、それは初めて聞く言葉だった。私の妖としての名前だろうか。

「死神……?」

「ええ。私たちのようなものはね、死神と呼ばれているの」

 その人は言い、私の頬を撫でた。思わずびくりとしたけれど、危害を加えることはなく、ただ私の頬に付いた汚れを拭ってくれただけだった。冷たくて、心地の良い手だった。

 彼女の纏う青紫の蛇たちはいつの間にか消え、そしてその瞳は黒に染まっていた。

「その名の通り死に関わる存在よ。あなたも知っているでしょう? 私たちは誰かを見た時、どうしようもない殺意を抱くことがある。そんな誰かの命を奪うために生まれたような存在、だから死神」

 その人は小首を傾げ、そして問うた。

「私の名は伊耶那美いざなみ。あなたのお名前は?」




 私と伊耶那美様はそうして出会った。同じ妖だからなのか、独りだった私に彼女はとても優しくしてくれた。

 最初は警戒していた私だったけれど、親しげに話し掛けて来る彼女に次第に親近感を持って行った。そんな風に私に接してくれる誰かは岐蝶以外に出会ったことがなかったし、それにその時は私はただ寂しかったのだと思う。怨みを抱かれたものたちが纏うあの匂いを彼女が全く持っていなかったせいもあり、私はいつの間にか彼女を信頼していた。

 そんな伊耶那美様に連れられて、私は境界を潜った。そこが私が初めて見る異界の景色だった。

 黄昏刻の薄暗い空の下に、広大な世界が広がっていた。異界の中心には大きな川が流れ、木々が大地を覆っている。

「この異界を、私は黄泉国よもつくにと呼んでいるわ」

 私の横に立つ伊耶那美様が言った。黄泉国、私は心の内で繰り返す。そんな私に向かって、伊耶那美様は微かに十六夜の月が浮かんだ黄昏空を背に微笑する。

「ようこそ黄泉国へ。あなたはこの国の、私以外の最初の住人よ」

 それは、私にとって初めて自分を受け入れてくれる場所を与えてくれた言葉だった。そしてその日から私はこの黄泉国に住まう妖となった。

 それから私は伊耶那美様とともにひとつに屋敷にて暮らすようになり、そして彼女に様々なことを教わった。死神のこと、妖のこと、日の本の歴史、文字の読み書き、言葉の使い方、そして戦い方も。伊耶那美様は何も知らなかった私に、ひとつひとつを丁寧に手解きしてくれた。

 私を包むあの紫の小袖は私を守る妖力の塊であるということを教えてくれたのも彼女だった。最初は感情の高ぶりにより発現できなかったそれは、伊耶那美様に妖力の使い方を教えてもらったことにより自由に纏うことができるようになった。刀の振るい方もまた彼女に習った。

 誰かに愛された経験がなかった私は、本来の母親というのは伊耶那美様のようなものなのだろうかと感じていた。そう思うと私の心は暖かく満たされた。そして伊耶那美様は知識や技量だけでなく、形のない様々なものを私に与えてくれた。彼女と過ごした日々は、私にとってかけがえのない大切な時間となった。

 そしてそんな彼女が与えてくれた大切なもののひとつ、それが私の名前だった。

「ねえ、こと」

「私、その名前はあまり好きではないのです」

 黄泉国で暮らすようになって幾日か過ぎたある夜のこと、私は名を呼んだ伊耶那美に対して正直にそう漏らした。

 ことという名前は私を殺そうとした村の人たちが付けたもの。呼ばれる時には大抵嫌な思いをしたから、どうしても好きにはなれなかった。

「そう……、そうねぇ。なら『みこと』という名前はどうかしら」

 伊耶那美様は少し考える様子を見せた後、とても良い思い付きだという風に両の手を合わせ、そう言った。私は伊耶那美様の顔を見上げる。

「あなたの名前に、私の名から字をひとつあげましょう。伊耶那美の美。美は美しいという意味とともに、女性を表す言葉でもあるの。あなたは綺麗な子だから、ぴったりね」

 伊耶那美様はそうとても楽しそうに笑った。みこと。不思議な響きだった。だけど嫌ではない。

「字は美に琴で美琴。どう? この名前は気に入らない?」

 嬉しそうに庭の砂に枝で字を書きながら、伊耶那美様はそう問うた。美琴。伊耶那美様が付けてくれた新しい名前。

「美琴……、嬉しい」

「ふふ、喜んでくれた? それにしても名付け親になるなんて、本当にあなたが私の娘になったみたい」

 伊耶那美様は私の髪を愛おしそうに撫でる。私も本当にそうだったら良いのにと思いながら、頷く。私は人であった頃得られなかったたくさんの幸せを、黄泉国にて享受していたのだろう。

 そういえば、どうして伊耶那美様はここで一人で暮らしていたのだろう。ふとそんな疑問が浮かんだ。私はこの人の過去を何も知らない。それが少しだけ嫌だった。

 だからそれを問うと、伊耶那美様は困ったように笑った。

「そうねぇ。何から話せば良いのかしら」

 伊耶那美様は首を傾げ、そして訥々と話し始める。

「私が元々神と呼ばれていたことは以前教えたわよね」

 私は首肯した。私が生まれるよりもずっと昔の話、この国には人や妖に神と呼ばれた存在がいたという。今ではほとんどこの地を去ってしまったが、かつては様々な神がいて、人や妖と関わっていたそうだ。

「私はその中でも最初期に生まれた神の一人だった。まだ人も妖もこの国にいなかった頃の話よ。そんな時代に、私は生みの女神として多くの神を生んだわ。彼らはこの国の各地や異界に散らばり、それぞれの役割を果たしていた。だけどある時、外からやってきた神がこの世界を襲ったの」

 伊耶那美様は夜を眺めながら、少しずつ言葉を紡ぐ。

「この国だけでなく、他の国も同じだったわ。だから世界中で神と呼ばれたものたちが外なる神と戦った。その中で命を落としたものも多かったわ。私自身もその一人だった。だから私は、あなたが人として死んでいるのと同じように、神としては一度死んでいるのね」

 伊耶那美様は小さく息を吐いた。月光に照らされたその顔は、透き通るように青白い。

「だけど私は甦った。私の子供たちは、外なる神にその多くが殺されていたわ。私はそれがどうしても許せなかった。その怨みが私に再び命を与えたのでしょうね。私は妖として甦り、そして私はこの国で最初の死神となったわ。だから死神という呼び名が使われるのは、私が死んだ神だったせいもあるのね、きっと」

 伊耶那美様は悲しげに微笑した。死神という妖が、とてつもない怨みを持って死んだ存在が変化して生まれるものだということは以前伊耶那美様に聞いていた。私自身もそうだったからそれはすんなりと受け入れられた。そして伊耶那美様もまた、私と同じように怨みをその身に抱えながら死んだのだろう。そして、神ではなく妖として甦った。

「その戦いの末に私たちは勝利を収めた。その戦いののち、神族はこの地の上に干渉することをやめ、天と冥との異界へと去ったわ。だけど最早神ではなくなった私は、神としては生きようとは思えなかった。だからたった独りで人と妖の世をさ迷い歩いて来たわ。そしてあなたと出会った。また私に娘ができるなんて、思ってもいなかった」

 伊耶那美様は私を見て今度は暖かく微笑んだ。私は少しだけ恥ずかしくなって、下を向く。

「私も、伊耶那美様と会えて良かったです」

「ふふ、ありがとう」

 伊耶那美様は私の頭を撫でてくれた。この感触は何度体験してもむずがゆく感じるけれど、嫌いではなかった。



異形紹介


・蝶

 良く知られた昆虫の一種だが、鳥とともに世界各地において死者と関連付けられる動物でもある。

 日本においても同様で、蝶は死者の霊または死体が変化したものとして現れると伝えられる話が多い。例えば山形県蔵王山には蝶が好きで蝶を追って暮らしていた女性が死した後、その死体が蝶に変化したという話が伝わっており、この怪異を水木しげる氏は蝶化身と名付けている。これに似た話は幾つもあり、秋田県には足を滑らせて沼に転げ落ちて息絶えた秋元備中という人物の死骸が大きな蝶となったという伝説が伝えられている。また新潟県では雪崩で死んだ人々の魂が蝶となって舞ったという話が伝えられ、『和漢三才図会』には立山の地獄道に蝶が集まることを生霊の市と呼ぶ、という記述がみられる。さらに『甲子夜話かっしやわ』にも揚羽蝶(恐らくクロアゲハまたはカラスアゲハ)は人魂が蝶になったものだとする話が載せられている。

 そしてその蝶は死者の化身であるという幻想は、創作物の中で妖術使いと結び付けられていった。二代目為永春水の合巻『北雪美談時代加賀見ほくせつびだんじだいかがみ』においては蝶の妖術使い、藤浪由縁之丞春辰ふじなみゆかりのじょうはるたきが主人公に据えられ、またその妖術は曾祖母岩藤によって授けられたものとされる。妖術を授けられる場面において岩藤は春辰に対し、心の中で我が名を呼べばその魂は数多の蝶となって力となると話す場面がある。同様に死者の魂が蝶となり、主人公に蝶の妖術を授ける物語には、落語家三遊亭円朝の噺『菊模様皿山奇談きくもようさらやまきだん』、またそれを元にした山々亭有人さんさんていありんどが書いた同名の合巻があり、この作品中では主人公、松影大蔵まつかげたいぞうが諏訪神社にて蝶の姿となった現れた死した姉、胡蝶に通力を授けられる。この作品では妖術によって大蔵が巨大な蝶に変化する場面も見られた。他にも山東京伝の読本『善知鳥安方忠義伝うとうやすかたちゅうぎでん』では死んだ人間の魂が蝶の群れと化す場面が描かれており、またそれは将門の乱の前兆として起きた怪異と同じであることが語られている。

 このように伝承や創作において死者と関連付けられて語られる蝶の怪異であるが、蝶の民俗研究家である今井彰氏は、幼虫から蛹へ、そして成虫へという完全変態を行う蝶の生態から、古の人は蝶を幼虫から蛹へと変態する段階で一度死に、そして成虫となって甦る、死と再生を象徴する不思議な生物として見ていたのではないかと唱えている。

 また死霊の化身としてではなく、蝶そのものの怪異が語られる例もある。高知県には夜更けの道で白い蝶が飛んできて目や口を覆って呼吸を詰まらせるという怪異があり、これは出会っただけで病気になって死ぬと言う。また同じく白い蝶の話は秋田県にあり、ここでは寝ている間に口の中に入って来てしまった白い蝶を飲んだ男に災いが降りかかる。娶った妻は婚礼の日の夜に何者かに喉を喰い切られてしに、男もまた原因不明に息絶え、その口から白い蝶が無数に飛び立っていったという。

 また前述した死霊との結びつき等から、蝶そのものを不吉な存在として見なす例もある。『堤中納言物語』には「蝶を捕えれば瘧病おこりやまいを患うから捕えてはならない」と言われる場面があったり、沖縄では蝶が家に入ると汚れるとして、禊ぎを行う習慣がある。そして一部の地域においては蝶は死霊の化身であるから蝶模様の着物を着ることを忌むところもある。一方で蝶模様の着物は少なくとも奈良時代には存在しており、現代に到るまで使われている。江戸時代の国学者柏崎永似はこの蝶模様について、衣裳の元となる絹は蚕によって生み出されることから、衣裳ができるまでの仕組みを着物を着る子女に知らしめるために蝶の模様が使われるようになったのではないかと考察している。これに関して前述した今井彰氏は、奈良時代の蝶模様は蛾の姿形に近いことから、古くは蚕蛾を模したものであった可能性は高く、時代が下るにつれて子女に対する教訓の意味が失われて行き、次第に揚羽蝶等の華美な蝶が模様として使われるようになって行ったのだろうと述べている。


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