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黄泉夜譚 ヨモツヤタン  作者: 朝里 樹
第三八話 影の中の記憶
151/206

一 姦姦蛇螺

 その娘の一生は、生まれた時から蛇とともにあった。

 蛇のために生まれ、蛇のために生きる。そう教えられて育てられた。それがこの家に生まれた女の宿命なのだと。

 娘は明りのほとんど灯らない寂れた村を眺める。自分の生まれたこの村が、巫女はとても好きだった。しかし今、彼女は自身が村に縛り付けられていることも強く思い知っていた。

 この村の者たちはある神を祀り、そして恐れていた。その神を鎮めることが、巫女として生まれたその娘に課せられた呪いでもあった。

 その神の名は、姦姦蛇螺(かんかんだら)という。


第三八話「影の中の記憶」


 四人組の若者たちが森の中を歩いている。陽は既に落ち、彼らの持つ懐中電灯だけが森の中における光源だった。

 四つの光の束は不規則に動き、森の木々を照らす。その無数の木の枝に大きな鈴が取り付けられており、風が吹くと微かな音が響く。

 先頭を歩く一人が何かを発見して足を止めた。他の三人も彼の横に並ぶようにして立ち止まる。

「なあ、あの箱がそうなんじゃない?」

 男の懐中電灯が照らす先には、古びた長方形の箱のようなものがある。結構な大きさがあり、子供なら簡単に中に入れてしまいそうだ。地面に直接置かれたその箱の側面にはいたるところに家紋のような模様が記されており、異様さを際立たせている。

「ほんとだ。持ちあがらねえ」

 四人の中でも体格の良い男が箱を掴み、上へ引っ張るがびくともしない。地面に直接固定されているようだ。

「でも確かひとつ外れるのがあるんだよね」

 四人の中で唯一の女が言った。彼女がひとつひとつ面を調べて行くと、長方形の四面のうち、面積が広い方の一面があっさりと外れた。

「ネットに書いてあった通りじゃん。マジにあるんだな」

 眼鏡を掛けた男が嬉しそうに言った。彼の懐中電灯は既に箱の中身を照らしている。そこには爪楊枝のような小さな棒が奇妙な形に置かれていた。片仮名のハを二つ並べ、その右側に不等号の>を置いたような形状だ。棒同士が接する部分のみが赤く塗られている。

 眼鏡の若者はにんまりと笑った。

 三人をこの森へと誘ったのは彼だった。大学も夏季休暇に入り、暇を持て余していた彼はインターネット上である都市伝説を読んだ。ある森に封印された化け物の話だ。

 彼も最初は信じてなどいなかった。だがそのネット上に具体的な地名とともに自分も似たような箱を森の中で見たという話を発見したとき、ちょうど自分が住む町からそこが近かったこともあり、長い大学の夏休みの暇潰しぐらいにはなると思った。それで友人を誘ったら思いのほか食い付きが良かったから、こうしてここにやって来たわけだ。

 森の奥へと進むと、六角形に張られた注連縄に囲われた空間に奇妙な箱が置いてあり、中には奇妙な形に置かれた棒がある。ここまではあの怪談の通りだ。

 そして本当にあの怪談が真実であれば、この森にはある化け物が封印されているという。それはこの棒の形を変えれば現れる。

 若者は唾を飲んだ。そっと棒に手を伸ばすが、やはりそれを動かすことは憚られた。ここまで都市伝説の通りであれば、本当に何かが出るかもしれない。今になって彼は恐怖を覚えていた。

「何やってんだよ」

 じれったそうに彼の友人が言い、彼の背を軽く押す。しゃがんで箱の中を眺めていた男は簡単にバランスを崩し、思わず棒の置かれた板の上に手を着いてしまった。

 その衝撃で棒の形が崩れる。それと同時に森の中に鈴の音が響き渡った。狂ったように金属をぶつけ合う甲高い音が夜の空気に(ひび)を入れ、さらに音は次第に大きくなっている。まるで何者かが彼らの方へと近付いて来ているように。

「何? 何?」

 女が困惑して声を上げる。眼鏡の男は慌てて懐中電灯を動かした。あの都市伝説では棒の形を変え、鈴の音が響き、その後は確か……。

 彼の動かす光の束は、森の闇に浮かぶ何かを捉えた。彼の背よりもずっと高い位置にあるそれは、しかし確かに人の女の顔だった。続いて闇の中から続けて現れるのは人の腕。しかし通常の人間とは違い、それらは昆虫のように左右三本ずつ、計六本ある。女の化け物は器用にそれぞれ左右の腕で彼女の両側に聳える二本の木の肌を掴み、そして四人の若者たちを見下ろしていた。

 懐中電灯の光の中で女は歯をむき出しにして笑った。ネット上で見た怪異、名前は姦姦蛇螺。ただの噂だと思っていた化け物は、現実に彼らの目の前に現れた。

 四人は一斉に悲鳴を上げた。そして自分たちが来た道を全速力で戻り始める。だが、その後ろを鈴の音が追って来る。姦姦蛇螺の体が鈴に当たる音だろうと思うと恐怖で足がすくみそうになる。

 眼鏡の男が木の根に躓き、転んだ。三人の友人たちは彼を振り返ることなく走って行く。男は慌てて立ち上がろうとして、その足首を何かに掴まれて再びつんのめった。

 振り返らなくとも何が足を掴んでいるのかは分かっていた。だが彼は見てしまった。自分の顔に視線を向け、変わらず不気味な笑みを浮かべている化け物の顔と、そして、彼女の足があるべき部分に代わりに繋がった奇怪な下半身を。

 男の悲鳴が(こだま)し、そして水気を含んだ何かを引き千切るような音がそれに続いた。




 空は灰色に覆われている。夏の終わりの生温い空気が死神の白い肌を撫でる。

 美琴は村の入り口で立ち止まり、目を紫色に変化させた。薄黒い妖気が村全体に立ち込めている。しかしそれ以上に、村を覆う不気味な雰囲気が気になった。

 この珂々村(かかむら)は山間部に位置しており、隣接する村や町はない。一応村までの道路は整備されているものの、この村が道の最果てであり、村の向こうにあるのは山のみであるため、わざわざ外部からやって来る人間は少ないと聞いている。

 美琴は村の中心を伸びる他よりも少し広い道路を歩く。

 木造の民家の並びに雑貨屋のようなものが見え、肉屋や八百屋も並んでいる。その店先に人影はなく、商品の数もまばらだが、人の気配はある。だが村の住人達は窓の、戸の隙間から外部からの来訪者である美琴に訝しげな目を向けるのみで、話しかけようとするものはいない。

 この村を襲ったという怪異の影響だろうか。美琴は考えながら歩を進める。

 ふと視線を動かすと、山道へと続く入り口に鳥居が見えた。額束には「螺良(つぶら)神社」とある。見たことのない名前の神社だ。今回の事件にも神が関わっていると聞く。何か関係はあるのだろうか。

 だが美琴はその神社には足を向けず、そのまま真っ直ぐに村の奥へと向かう道を進む。関わりがあるのならば、自分をここに呼んだ人間が聞かずとも教えてくれるだろう。

 村役場を過ぎると傾斜の緩やかな長い坂が現れる。目的地はその麓にある家だ。表札には「稲垣」とある。今現在、この村の長を務めている男が住んでいるという。

 美琴がその家へと近付くと、扉を叩く前にそれが開き、中年の男が現れた。痩せた、五十手前程の年齢の男だ。

「あんたが、伊波美琴さんかな?」

「ええ。ここで場所はあっておりますね?」

 稲垣は頷いた。そして警戒するように周囲を見回した後、そっと美琴を招き寄せた。




 家の中に入ると線香の匂いがした。稲垣は無言のまま美琴を奥へと導く。

 稲垣がひとつの部屋の前で立ち止まり、そして襖戸を開けた。畳敷きの部屋には黒いスーツ姿の男と、白い小袖に緋袴(ひのはかま)を履いた巫女姿の若い女性が座っている。それぞれ三十代後半、二十代初めと言った辺りの(よわい)だろうか。

 美琴は稲垣に促されるまま、彼らの対面する形で敷かれた座布団に腰を下ろした。

「こちらが伊波美琴さんだ。とても強い霊能者だと聞いている。彼女ならあの化け物を……」

「村長ともあろうものが、短絡的な行動をされては困る」

 稲垣の言葉を遮り、男が叱るように言った。その声に稲垣は彼を睨み付けるが、男は表情一つ変えずにいる。

「それに外から来た者にどうにかできるものではない。昔ながらの方法で鎮めるしかない」

「そんな悠長なことをしている間に、私の息子は殺されたんだ!」

 今度は稲垣の方が怒声を上げた。しばし稲垣と男が睨み合う。それを諌めたのは若い巫女だった。

「稲垣様も西塚様もやめてください。お客様の前です」

 巫女に西塚と呼ばれた男はその言葉で口を閉じ、そして美琴の方を向いた。右の頬に傷跡がある。目つきの悪さも手伝い、容貌だけならばとても堅気のものには見えぬ。

「客人。悪いがこれはこの村の問題だ。何も知らない貴女には何もできることはない。お帰り願いたい。人ではない貴女にできることなどなにもない」

 稲垣が驚いた顔で死神を見た。しかし美琴はそれを無視し、そしてこの屋敷に来て初めて口を開く。

「それは承諾しかねますね」

 美琴は男を冷たく見つめ、そう答えた。空気が張り詰める。

「あなたたちは既に気付いているようですが、私は人ではない。妖です。それ故これが妖と人の問題である以上、人のみに任せては置けない」

 西塚が脅すような低い声で言う。

「妖が神を殺すとでも言うのか?」

 美琴は視線を逸らすことなく答える。

「人に神が殺せるのに、妖にはできぬと仰いますか」

「何でもいい、あの化け物を殺してくれ!」

 稲垣が叫んだ。血走った目でスーツの男と和服の死神とを交互に見る。西塚は小さく溜息を吐くと、立ち上がった。

「西塚様」

「葵殿、ここで言い合っていても何もなりませんな。しかし姦姦蛇螺が解き放たれたのは事実。最終的に決断するのは貴女です」

 葵と呼ばれた巫女は頷いた。そして済んだ瞳で美琴を見つめる。その視線に微かな妖気を感じ、美琴は微かに首を傾げた。

「伊波さん……!」

 呼んだのは稲垣だった。稲垣が美琴へと向き直り、そして手を床に付いた。涙を堪えるような様子で、彼は美琴に声を絞り出す。

「私の息子だけではない……。もう何人もあの化け物に村のものたちが殺されている。村の代表として頼みます。この村を、救ってください……!」

「承知いたしました。顔をお上げ下さい。出来る限りのことを致しましょう」

 もう既に犠牲者は出ているという。ならば黙って見ているつもりはない。美琴は若い巫女に視線を向ける。

「姦姦蛇螺と呼ばれる怪異について、詳しく教えて下さいませ」




 かつてこの村には人を食らう蟒蛇(うわばみ)がいたという。村を囲う山に住み着き、時折人里に下りては人を食らい、そして村に病を流行らせた。その病にかかったものは皆臓腑を食い荒らされたように破壊され、見るも無残な最期を遂げたという。

 蛇神が何故人を襲うようになったのか知る者はいなかった。だが人々もそのまま黙って蛇に食われているのみではなかった。彼らは神の子として代々力を受け継いだ村の巫女の家に大蛇の討伐を頼み込んだ。

 依頼を受けた巫女の家は、その家の中でも特に力が強く、また若い一人の巫女を大蛇退治に向かわせた。それまでもその家は多くの妖たちから村を救っていたため、人々はやっと安堵した。

 誰もがその巫女の勝利を信じ、そしてまたかつてと変わらぬ日々を送れるのだと信じていた。

 巫女もまたそれを信じ、たった一人で大蛇へと立ち向かった。その戦いは大蛇の住む山に始まり、一昼夜を掛けて人里に及んだと言う。

 巫女は傷だらけになって戦った。大蛇もまた満身創痍だった。村人は戦いの様子を固唾をのんで見守った。だが、人々の希望は一瞬にして絶望へと変わることとなる。

 僅かな隙を突き、大蛇は巫女の下半身を食らった。足を失った巫女は大地に落ち、それでも腕のみで大蛇に立ち向かおうとした。しかしそれは誰の目から見ても勝敗は明らかだった。

 大蛇に抗ったものは食われるか、呪われる。巫女が大蛇を殺せなかった今、怒りの矛先が村人たちに向かうのは明らかだった。

 村人たちはそれを恐れた。あの巫女がいなければ大蛇を殺すことなどできるはずがない。それは、あの巫女を大蛇討伐へと向かわせた巫女の家族も同じだった。

 彼女たちは自らの一族の一人を助けようとはしなかった。もうどうしようもないと諦めていたのかもしれない。

 そして、巫女の家族たちは村人に提案した。巫女を犠牲にすることで自分たちが生き残る道を。村人たちは少しの間誰もが迷うような顔をして、しかしすぐにその提案を受け入れた。

 この巫女を生贄にする代わりに、自分たちを助けてくれ。ある村人が言った。

 この巫女を食らえば、他のものを何人食らうよりも大きな神通力を得られる。別の村人が言った。

 ならば、大蛇は言った。吾がその巫女を食らい易いようその巫女の腕を切り落とせ。それがお前たちにできるか。

 巫女は縋るように村人たちを見つめていた。だが、一人が斧を両手に握り現れた時、村人は誰もそれを止めようとはしなかった。

 巫女の悲鳴が村中に響き渡る。巫女の腕は、大蛇ではなく人の手によって斬り落とされた。腕も足も失い、ただ首を動かすことができない巫女の目は、大蛇ではなく村人たちに向けられていたという。蟒蛇の口に消えるその時まで、怨みを湛えたその目は村人たちを捉えていた。




 それからしばしの平和が村に訪れた。だが、村人たちに裏切られた巫女の怨念はそれを許しはしなかった。

 異変はすぐに起きた。あの日以来大蛇が姿を見せることはなくなったが、村人たちは次々と何者かに襲われ始めた。

 まず犠牲になったのは六人の巫女の家族だった。その誰もが片腕を引き千切られるようにして失い、恐怖と苦悶の表情を顔に張り付けたまま死んでいたという。

 村人たちは噂した。これはあの巫女の怨念ではないのかと。巫女を大蛇へと差し出すことを提言したものたちが真っ先に殺されたのだ。誰もが最後、村の者たちを捉えて離さなかったあの巫女の視線を思い出さずにはいられなかった。

 そして、それは真実となって彼らに襲い来る。村で、山で、田で、人々の亡骸が見つかった。腕を千切られ、頭を砕かれ、体を引き裂かれ。その死に様はどれも凄惨なものだったという。

 村人たちはやっと、自分たちは大蛇よりも恐ろしいものを生んでしまったと知り、そして巫女の怨念から逃れる術を探した。

 そこで村人たちが頼ったのは、大蛇に食われた巫女とはまた別の家系を持つ巫女、呪術者の一族だった。次々と村人が消えて行く中、彼らは巫女を生贄にしたのは巫女の家族の画策であることを突き止め、そしてその家を調べることで祟り神と化した巫女の怨念を鎮めるための方法を編み出した。

 それによって彼らが巫女を山へと鎮めた時、既に村で生き残っているものは四人となっていたという。

 しかしそれからも巫女の怨念は決して消えることはなく、やがて彼女は姦姦蛇螺と呼ばれるようになり、そして今でも供養のため、様々な祭祀が行われているという。




「これが姦姦蛇螺様の伝説です。私たちの家系は姦姦蛇螺様の怨念を鎮める方法を編み出したという巫覡(ふげき)の子孫。だからこそ、姦姦蛇螺様をもう一度鎮めることは私たちにしかできないと西塚さんは思っておられるのでしょう」

 姦姦蛇螺と呼ばれる妖の伝説を語った巫女は、最後にそう付け加えた。名字で呼んではいるが、西塚は彼女の伯父であるという。

「私たち一族は姓を葵と言い、姦姦蛇螺様に仕える役割を担う者は、特に葵官女(あおいかんじょ)と呼ばれます。私もその一人。西塚さんはああ言っておりましたが、姦姦蛇螺様を鎮めねばならぬ身としては、貴女様の存在がとても心強いです」

 葵と名乗る巫女はそう笑んだ。美琴は頷く。二人は既に稲垣の家を出て村を歩いていた。既に日が暮れていることもあって、相変らず屋外に出ている人の姿は見えない。葵によれば、姦姦蛇螺が封じられていた結界から解放されたのは今日より五日前。既に六人が彼女の犠牲になっているという。

 その中に、あの稲垣の息子も含まれているらしい。子を殺された彼は葵家のみには任せておけず、独断で美琴へと依頼したようだ。

「唯一つ覚えておいて下さい。現在姦姦蛇螺様はこの山や森、そして村の中を自由に動くことができる状態にあります。いつどこで姦姦蛇螺様と出会うかは分かりません」

「それはこの村に入った時から覚悟しているわ」

 山に姦姦蛇螺が祀られるようになって以来、このようなことは何度か起きているらしい。その度に葵の一族が駆り出され、そして彼女を再び結界の中に戻したものは例外なく死んだと言う。

 巫女と同じく、両腕と両足を失った無残な姿で。

「五日前、ある者たちが姦姦蛇螺様を祀るための結界を壊してしまいました。こうなった以上、姦姦蛇螺様を鎮めるのは私の役目」

 葵は言い、そして螺良神社の鳥居を見据える。姦姦蛇螺を鎮める、それは葵の話が真実ならば、彼女の死を意味することとなる。

 人身御供として大蛇に食われたかつての巫女は、自身も同じ生ように贄を要求するということだろうか。村人たちへの復讐として。

 葵が鳥居を潜った。美琴もそれに続く。石の階段は途中から石畳の道へと繋がっていたが、その先に拝殿も本殿も見えない。

「ここにはもう神社はないのかしら」

「ええ。かつて蛇神を祀るために作られた神社だったようです。その蛇神が村人に祟りをなし、そして最後には姦姦蛇螺様へと変わってしまった故に村人たちの手によって壊されたのだと聞いております。これも姦姦蛇螺様の怒りを鎮めるためだったのではないでしょうか。それにここはこの村で唯一の神社だったそうです。ですから今ではこの村には、巫女はいても神社がないのです」

 美琴は頷いた。自身を食らった蛇神を村人たちが祀り続けるなど巫女が許すはずもないと、そう考えたということだろう。しかし何故村人は大蛇を祀る神社を作ったのだろう。祟りを収めるためだったのか。悪神の祟りを鎮めるため、その神を祀るという方法は遥か昔から行われている。

 しかし、結局巫女に退治を頼んだと言うことは祭祀では祟りを鎮められなかったということなのだろうか。伝説と実際の歴史が必ず符号するとは限らないが。

 石畳の道は途中で終わっている。ここに本来なら拝殿があったのかもしれぬ。葵は途切れた道の先にある森の中へと入って行った。美琴は一度立ち止まる。

 森の奥からより強い妖気が流れて来ている。この森、そしてその奥に聳える山のどこかに姦姦蛇螺はいるのだろう。美琴は妖術で隠した刀を腰に佩いていることを確かめ、そして祟り神の領域に一歩足を踏み入れる。



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