四 錆びた鋏に映るもの
その後わたしは、姉を殺したために牢屋に閉じ込められることになる。それは別に気にならなかった。外にいたって特に面白いものもない。
ただわたしは、その牢の中にいる間に少しずつ自分が変わって行くのを感じていた。体の奥から不思議な力が湧いて来るような、そんな感覚が日増しに強くなっていった。
そんな生活が何年も続いたある日のこと、珍しいことに、わたしの住む小さな城に母が姿を現した。
久々に見た母親の髪には白髪が増えていたようだったけど、顔は相変わらず厚化粧が塗り込まれていて、若作りに余念がないようだった。
「ねえ、艶子、あなたはどうして笑っていられるの?」
虚ろな目で母はわたしを見つめ、そんなことを言っていた。
「聞いて、この前ね、座敷牢の存在がお父さんのお友達にばれてしまったの。勝手にこの部屋を覗いたのよ。あなたのことはまだ知らないみたいだけれど、きっと時間の問題。誰かがこの部屋に踏み込んだとき、あなたがいてはいけないの。分かる?」
数年振りに出会った母は、娘にそんな言葉を掛けた。
「それに、お母さんはずっとあなたのことが憎かった。自分の娘が娘を殺したのだから、当たり前でしょう?昔からあなたは、何を言っても反省することもなかった。だからお母さん必死であなたをまともに戻そうとしたのに」
ほとんど娘に関わることもなかった母親が何を言っているのだろうと、特に気にも留めなかった。
「それに、冴子さえ生きていれば、あの子がお父さんの病院を継いでくれたかもしれないのに」
下の姉はどうやら医学部には入らなかったということは本人から聞いていた。彼女なりの家への反抗だったのかもしれないが、そもそも自分の子供を疎んじていた人間が言えることではないだろう。
馬鹿らしくて、わたしは母を鼻で笑った。その直後、母の背から右手に握られた包丁が現れた。私が反応する間もなく、母は背中に隠していた包丁で私の首を突き刺した。
「あんたさえいなければ……、あんたさえ……」
眠くなるような、意識が遠のいて行く感覚と共に、わたしは母の声を微かに聞き、そして床に倒れた。好奇心は猫をも殺すなんて諺があったけれど、今回の猫は覗いた方ではなく、わたしのようだ。
だけど、わたしはそれでただ死ぬことはなかった。
わたしは何もない空間に漂うような曖昧な夢の中でぼんやりと、体の奥から湧き上がる力のようなものを感じていた。今まで感じて来た力と似ているけど、ずっと強いもの。
母の突き立てた包丁が、わたしにとって第二の切っ掛けになってくれたのだとわたしは直感し、そして血でへばりついた体を床から引き剥がした。
昼も夜もないこの場所だから、どれだけの間眠っていたのかは分からない。しかし母が私の死体を処理しようとした形跡がないところを見ると、長い時間ではなかったようだ。
ここを出る時が来た。わたしはそう思った。きっとそれが、わたしが完全に人間からそうではないものに変わった瞬間だったのだろう。
わたしが牢の扉に当たる格子を握って少し力を込めると、あっさりと鍵が壊れて軋んだ音を立てながらそれは開いた。わたしは二メートルほど下の床に向かって跳び下りると、まずかつての自室へと向かった。
そこは既にほとんど物置と化し、埃の被った家具や道具に埋もれていた。だがわたしのものが捨てられた訳ではなかったらしい。わたしは裁縫箱を探し出して、その中に残っていた赤い鋏を手に取った。
あの日、姉を殺した後ここに隠した凶器。わたしを見つけた人間たちは、わたしがその時持っていた鋏を凶器と勘違いして処分したらしい。
五年振りの鋏はとても手に馴染んだ。まるでわたしの体の一部のよう。わたしは二度、鋏をちゃきりと鳴らした。
もう必要なものはない。物も人も。わたしは部屋を出て、目に付いた人間を殺して行った。父も母も偶然屋敷にいた人間も。全てわたしが殺した。小学生の頃水に濡れた半紙を破いてしまった時のように、それは簡単だった。
全て終わった後で、わたしは思った。わたしは人間ではないものになったけれど、この人たちはどうなのだろう。もしかして、口が裂けた死体は、わたしと同じものになってしまうのではないかと、そう考えた。
折角彼らとは別のものになれたのに、また同じものになってしまうのは嫌だった。だからわたしは一つずつ、死体の口を裂いて行った。だけど彼らはわたしにはならなかった。
ただ傷口からだらしなく血を垂れ流して、死んだまま動かない。彼らは、わたしにはなれないのだ。そう思うと無性に嬉しくなった。
まともな服など与えられていなかったわたしは、母の部屋から鋏とお揃いの真っ赤なコートを見つけ出し、そしてそれを身に纏って家を出た。
それからわたしは人を襲うようになった。大した理由はない。ただ人ではなくなったわたしの存在を確認したいがために人にこの口を見せた。
普段は行動しやすいように大きいマスクを付けていたけれど、ひとたびマスクを外せば子供も大人も皆驚いて、恐れて、そして逃げ出した。最初はそれで満足していた。邪魔なものがいれば殺していたけれど。
その内に、わたしには「口裂け女」という新しい名前が付けられた。単純だけど、とても響きの良い名前。それは人でなくなったことをわたしに確証させてくれるようで、気に入った。
その頃からだろう。名前が付いたことでわたしを真似する人間たちが現れた。大きなマスクさえ付けて、刃物さえ持っていれば誰でもわたしの真似をすることができるから。だけどわたしはそれが許せなかった。
口裂け女は一人で良い。
それからわたしは人を殺すようになり、その際には自分の家のものたちと同じように相手の口を裂いた。わたしと同じように口が裂けた状態で殺されても、誰も口裂け女にはならないことを確認するために。
下校中の子供を狙って、夜に歩く大人を狙って、何人も殺した。
そして何人の命を奪ったのか、両手では到底数え切れる数ではなくなったころ、わたしは自分とは違う人ではないものに出会った。
「口裂け女か」
明らかに人間のものではない長い爪と牙を生やしたその男は、わたしにそう尋ねた。それが人間ではないものだと分かったのは、わたしもそうだったからだろう。
「わたし、きれい?」
わたしはいつものようにそう尋ねた。だけどその男は答えず、わたしに向かって襲いかかって来た。わたしを見て恐れない存在は、初めてだったかもしれない。
「貴様は人を殺し過ぎた」
男の口は既に裂けていた。その口の中にはびっしりと歯が生え、体も体毛で覆われる。
良く分からないと、わたしは思った。人ではないものなのに、人を殺すからわたしを殺そうとするのか。わたしはその男の片腕に鋏を突き刺すと、そのまま地面に押し倒した。
「ねぇ、人ではないあなたが、どうして人の味方をするの?」
鋏で突き刺したのとは逆の腕を、力任せに引き千切りながら問う。人外の男は悲鳴を上げた。私は鋏で傷口を抉り、尚も尋ねる。
「答えて」
「そうしなければ……、人と妖の秩序が保たれぬからだ!」
男はそう叫んでわたしに牙を突き立てようとしたけれど、わたしはその頭を掴んで地面に叩き付けた。アスファルトに思い切りぶつけたのに、意識さえ失わなかったのは人間ではなかったお陰だろう。
「妖……?」
この男はそう言った。妖、妖怪、それは人とは違うもの。それなのに、秩序という言葉を後ろ楯に、行為を正当化して自分たちを守ろうとしている。
人も人外のものも、結局は同じだったのか。わたしは心の底から落胆した。わたしが昔憧れたものは、こんなものだった。わたしは鋏を男の腕から引き抜いて、そして男の元々大きな口の中に突っ込んだ。
悲鳴を上げる間もなく、わたしは男の口を頭の後ろまで切り裂いた。もう片方も同じように。ほとんど上顎と下顎が分かれたような状態になって、男はやっとわたしに恐怖の目を向けていた。
そこで思った。わたしはこの男とも違う。わたしは、ただ一人の存在になれば良い。人とも他の妖怪とも違う、本当にきれいなものに。
わたしは口裂け女。それ以外の何物でもない。
わたしは男の顎の上下にそれぞれ両手を置き、そして怯える彼の顔を真っ二つに引き裂いた。
どれだけの口を裂いただろう。人も妖もたくさん殺した。わたしは自分の存在が唯一であることを確かめるために誰かの口を裂き続けた。その誰もが、口裂け女にはなれなかった。
わたしは口裂け女。他の何物でもなく、そして何者とも違う唯一人の存在。それがわたしの全て。とても幸福で、かけがえのない現実。
わたしは錆びた鋏を握り、そして目の前に現れた、人ではない少女に向かってマスクを取った。
ちゃきりちゃきりと音が鳴る。血濡れの鋏の音が鳴る。
美琴は強い霊気と妖気とを感じてその場所へと急いだ。ここからなら近い。人目も憚らず建物の屋根に登り、跳躍する。
辿り着いたのはもう何十年も使われていないようなぼろぼろの倉庫のような建物だった。戸の内側か禍々しげな気が漂う。
美琴は刀を抜き、戸を切り裂く。真っ二つになったそれは簡単に金具が外れ、地に落ちた。
その向こうに赤いコートの女が立っていた。血濡れの鋏を片手に、口裂け女はマスクを取る。
「わたし、きれい?」
「ええ」
美琴が刀を振り上げる。口裂け女は鋏を持って突っ込んで来る。
振り下ろされた太刀は、錆びた鋏によって受け止められた。
「やはり、怨恨が殺人の理由ではないようね」
「うふふ」
口裂け女が太刀を弾き、美琴は後方に下がる。相手からは怨嗟の霊気は感じられない。
「わたしは今幸せだもの。誰も恨む必要なんてない」
口裂け女の伸ばした手が美琴を掠め、ぼろ小屋の壁を砕いた。腐りかけた木片が散らばる。
「わたしはただ唯一の存在になれたのだもの」
美琴の振るった太刀は横に跳んだ口裂け女を外れ、小屋の柱を切り裂いた。崩壊する小屋の天井を破り、二人は外に立つ。夕暮れの闇が二人を包んだ。
「わたし以外の誰も、口裂け女になることはないと分かったの。血を分けた姉でさえも、わたしと同じ存在にはなれなかった」
姉とは、先程小屋の中に倒れていた女性のことだろうか。口裂け女は裂けた口を更に釣り上げ、笑う。その澄んだ瞳は一切の疑いの色を浮かべてはいない。
「この世は皆醜いもの。人も妖もみんな。だからわたしは、その何にもなりたくないの。本当にきれいなものでいたいの。そして誰にもわたしになって欲しくはない」
この女が犠牲者の口を裂いていた理由は、彼らが自分と同じ怪異にならないことを確かめることだったということか。ただそれだけのために人にその鋏を突き立て、そして邪魔になった彼らを殺した。
世間一般が信ずる善悪も美醜も彼女にとっては意味はない。口裂け女は己の中にある基準のみで動いている。それが狂っていると言われようとも、自身を一切に疑うことのない彼女にとっては意味はない。
口裂け女の鋏は彼女の中の歪みを映すように、錆だらけのまま人を切り裂き続ける。
口裂け女の鋏が美琴の片頬を抉った。刃が頬肉を貫通し、血が飛び散る。だが、美琴の太刀も口裂け女の脇腹を深く切り裂いた。
口裂け女は笑い声を上げながら美琴の首を掴み、そのまま前方へ投げ飛ばした。崩壊した小屋の破片を砕き、死神の体が地面に叩き付けられる。
「さあ、あなたの口も裂いてみましょう」
太刀を握った右手は口裂け女の左手で押さえ付けられ、冷たい鋏が美琴の顔に近付く。だが美琴は左の拳を握ると、それを口裂け女の顔に向かって叩き込んだ。
口裂け女の怪力が緩む。美琴は右腕を振りほどくと、口裂け女の体を袈裟斬りにした。その衝撃で口裂け女が後ろに飛ぶ。
「強いのね、あなた。でもきれいではないわ」
尚も笑みを絶やさず、傷だらけの口裂け女は言う。赤いロングコートの色が抜けて行くように、赤い血だまりが彼女の足元に広がっている。
美琴は言葉を発さず、口裂け女に向かって駆け出した。擦れ違いざまに振るわれた太刀は、口裂け女の首を胴から切り離す。長い髪を夕暮れに靡かせて頭部が地に落ち、続いて体が倒れた。
美琴は女の亡骸を見下ろす。月光の下、口裂け女の死して尚笑んだ硝子のような瞳に、錆びた鋏が辛うじて映されていた。
それから口の裂けた死体が見つかることは、勿論なくなった。口裂け女は死んだ。少なくともしばらくの間は。それに口裂け女はこれからも子供たちに恐怖を与える存在として語り続けられて行くことだろう。その言霊がいつか彼女を蘇らせることも想像に難くはない。
人でありながら人であることを拒み、妖となった後にも他の妖と同じ存在であることを拒んだ女。彼女の心の深淵が美琴に分かる筈もないが、しかしその心が口裂け女という怪異を生んだのは確かなのだろう。
「誰か、艶子さんを本当に理解できる人がいたら、もしかして違った未来があったのかもしれませんね」
美琴の目の前に座った朱音がコーヒーを一口飲み、そう言った。二人は朱音が弘子の話を聞いたというファミリーレストランにやって来ていた。
「それは分からないわ。艶子と言う人間は、都市伝説に、そして怪異に、なるべくして生まれて来たのかもしれない。運命なんて言葉は好きではないけれどね」
善悪美醜の考え方が他の者たちとは生まれながらにして異なっていた人間。それが人の世界で生きて行くことは困難だっただろう。人の世界から疎外されたものは、例え人間であっても異形のものと呼ばれる。
だが、彼女の場合は人外のものとも分かりあえる基準を持っていなかった。そして、艶子はそれを否とはせず、むしろ是とした。そして口裂け女という新たな存在となった。
それが善か悪かの判断を下すことはできないが、彼女がこの世に存在し続けることは許されなかった。今回は、それだけのことだ。
「自分を信じ続けられた彼女は、ある意味で最も純粋だったのかもね」
美琴はそう、錆びた鋏と同じ赤褐色の紅茶を見て呟いた。
異形紹介
・口裂け女
口が耳まで裂けている女という容姿の都市伝説。普段は顔半分を白いマスクで覆っており、子供に近付いて「わたし、きれい?」と尋ねるという。それに対して「きれい」と答えると「これでもきれいかぁ!」と叫んでマスクを取り、鎌(鋏、包丁、メス、斧などであることも)で子供の口を自身と同じように裂く、または切り殺す。また「きれいじゃない」など否定の答えを出した場合は問答無用で死の結果が待っている。被害者が女の場合、口を裂かれて同じ口裂け女になるとされることもあるようだ。
この問い掛けに対する答えは「まあまあです」と言うのが良いとされ、この返答に迷っているうちに逃げ出すことができるのだという。また他にこの妖怪から逃げる術としては、べっこう飴が好物なので、それを与えて食べている間に逃げる、ポマードが苦手なのでその匂いを嗅がせる、「ポマード」と三回唱えると逃げ出す、などがある。
赤を好むようで、赤いコートを着ている、赤いスポーツカーに乗っている、赤いハイヒールを履いているなどの情報がある。これは返り血を目立たなくするためだそうだが、逆に血の目立つ白い服を着ているとされることもある。
百メートルを3~6秒で走るという驚異的な身体能力を持つとされることが多く、稀に空を飛ぶとされることもある。また、口裂け女は3人おり、3人は姉妹であるという情報もある。
口が裂けた理由は諸説あり、整形手術を受けていた際、医者のポマードがあまりにも臭く、思わず顔を背けてしまったために手術が失敗して口が裂けてしまった、とされることや、硫酸などの化学薬品によるもの、何らかの呪いや霊によるもの、交通事故によるもの、火傷によるもの、口が裂けた他の姉妹によって裂かれたというもの、また口が裂けてしまった姉たちを見て発狂し、自分で裂いたというものなどがある。
三姉妹とされる他にも、口裂け女は三という数字に関わりが強いようで、三鷹や三軒茶屋に頻繁に現れるとされることもある。
1979年頃から爆発的に広まった都市伝説だが、実は江戸時代にも口裂け女と思わしき妖怪についてしるされたものがある。江戸時代の怪談集『怪談老の杖』や読本『絵本小夜時雨』には、耳まで口が裂けた女の記述が見られる。また、京都府には猫又が化けた、首が着脱可能な口の裂けた女が出て来る民話や、香川県には首切れ馬に乗って現れた口の裂けた女の民話が残っている。
小松和彦氏は『妖怪学新考』の中でこの「ポマード」による対処法について、日本神話における伊耶那岐が伊耶那美や黄泉国の者たちから逃げる際に呪物を投げつけた話や、昔話「三枚の護符」における小僧が三枚の護符を使って山姥から逃げ切った話の類似性を指摘し、口裂け女は現代に合わせて形を変えて現れた妖怪だと記している。
また発生したのは1978年12月ごろから子供たちの間で噂が流れ始めたという話があり、1979年1月26日の岐阜日日新聞にて初めてマスコミに登場した。
また『週刊朝日』1979年6月29日号に記事が掲載され、岐阜県加茂郡八百津町で口裂け女を見た老婆が腰を抜かしたという噂が紹介される。
これらのことから口裂け女が発生したのは岐阜県だと考えられているが、名古屋であるという説も存在している。ただし70年代中頃に「原爆少女」という原爆のケロイドで焼爛れた少女の幽霊が「わたしきれい?」と尋ねて来る都市伝説があり、これに関しては「私はどこからきたか」という質問をして来るのでそれに対し「カシマ」と答える必要があることから別の都市伝説「カシマレイコ」の影響が見られ、また原爆少女に似た都市伝説として78~79年頃に現れた「整形おばけ」という都市伝説があり、ここでは前髪で顔半分を隠し、「私、きれい?」と尋ねて来る髪の長い女に対して「きれい」と答えると「これでも!」と前髪で隠していたケロイド状の顔を見せるという噂が広島県にて流行っている。また、口裂け女の本名が「カシマレイコ」とされることもあるため、これらの都市伝説には何らかの影響があった可能性もある。
また、陰謀説も存在している。自衛隊が口コミ情報の速度を計るために口裂け女の噂を流して実験した、というものでありこの場合の発生地は青森となる。
さらに滋賀県に口裂け女にはモデルがいたという説があり、明治時代中期、滋賀県信楽に実在した「おつや」という女性が、恋人に会うために山を隔てた町へ行く際、女の独り身で山道を行くのは物騒なので、白装束に白粉を塗り、頭は髪を乱して蝋燭を立て、三日月型に切った人参を咥え、手に鎌を持って峠を越えたといい、これが都市伝説のモデルになったという説があるらしい。ちなみに「白装束に白粉を塗り、頭は髪を乱して蝋燭を立て」という部分は丑の刻参りの作法に似ている。
また他に岐阜県において1968年にバス2台が川に転落し、女性の白骨化した頭部を引き上げ復顔してみたところ口が耳元まで裂けていた、この霊が口裂け女になったのだろうという説が紹介されることもある。
他にも心理学者による子供たちの口うるさい母親の恐怖が口裂け女の幻影を見せた、塾へ行きたいという子供を諦めさせるために大人が流した噂、などの説、岐阜県周辺の精神病の女性が夜な夜な座敷牢を抜け出し、口元を赤く塗り徘徊していた説などがあり、明確にどこで発生したのかは分からない。
現在広まっている口裂け女は、現代妖怪らしく刃物で口を裂くという猟奇的な行動を取る。「カシマレイコ」や「ひきこさん」などからも見られるように、都市伝説の怪異は自身と同じ境遇には被害者を陥れようとする傾向があるようだ。




