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仮定  作者: 花霞
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感染…じゃなくて観戦

私だって、普通の女子高生なのだ。

恋には興味があるし、人気の小説だって読むし、そこそこ勉強に時間を費やしたり、そんな一般的な女子高生なのだ。

だから、好きなサッカー選手が生で観れるなら、たとえ変態と恐人祖母といっしょだろうとテンションが上がってくるものだ。

そんな風に考えてた私がバカだった。

いくら、好きなサッカー選手(サッカーのルールなんてもちろん知るわけないが)のプレーを観戦しようが、隣に座る二人がいる限り、テンションが上がるなんてありえなかった。

「尭人君はどんなプレイがお好みなの?ちなみに杏はSMプレイが大好きなのよ」

「ちょっと!なにでたらめ言ってるのよ!」

「ああ、Mっぽいなぁとは会った時から思っていたんですよ」

「人の話を聞きなさい!」

疲れる…

私は、テンションが乗らないまま試合に目を向ける。

ほかの二人も静かに試合を観だした。

今の状況は、スティーブのチームは彼のゴールで一点入れて、勝っている。

あ、笛が鳴った。

私はルール知らないから、なんで笛なったのかわかんないけど。

すると、前の方から「今のはオフサイドじゃないだろ!」

とやじが飛ぶ。

どうやら、サイドはオフかそうでないかで争っているようだ。

サイドにオフもオンもあるのか知らないけど

すると、そのあとにゴールに向かったボールをキーパーだっけ?が華麗に止める。

おお、と会場が沸く。私たち二人を除いて。

こんなに、こんなにも同じ場所に居る私たちとそれ以外の人たちのテンションの違いには驚く。

まるで、私たちだけが、この世界から隔離されたような、そんな感覚。

この私たちの隔離された世界が壊れて、このテンションがみんなに移ったら申し訳ないな、と思った。

すると、そこでスティーブのチームが1点決められてしまう。

ああ、と周りが嘆くのに、相変わらず私たちは静かだった。

10分後、また入れられる。

スティーブの動きが鈍ってきた。

疲れたのだろうか。

さらに、15分後、またも点を決められる。

周りのテンションが下だってくる。

ああ、私たちの隔離された世界が壊れていく。

私たちのテンションが感染していく感じ。

もちろん、私が一方的にそう感じているだけなんだけど。

また、一点とられる。

スティーブも限界なのか、交代された。

それだけで、周りの女連中は(私含め)テンションがさらに下がる。

すると、突然、隣の尭人が立ちあがった。

なにをするのかと思えば、「まだまだ、いけるぞ!!」と大声で叫び始めた。

「がんばれ」や「そこだ!」などと、大声で叫ぶ尭人は、尭人のキャラじゃなかった。

変態ではなく純粋なファン。

そんなの尭人のキャラじゃない、と思う自分もいるが、それもあいつのキャラじゃないかな、と思う自分もいた。

すると、周りの観客も、尭人の応援に便乗して、声を出し始める。

大人も、子供も、老人も、男も、女も。

そのうち、試合始めと同じ熱気に会場が包まれた。

私は、その時、二つの事を考えていた。

ひとつは、やっぱり、テンションなんかの類なものは感染していくんだなぁ、といったこと。

二つ目は、そういえば、今日は9時から観たいテレビがあったな、といったことだった。

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