あしきり事件 1話
その事件の全容は煙に包まれたかのようにハッキリしなかった。
◇
サトウタロウ。男性。21歳。現在、就職活動中。
大手の鉄鋼メーカーに面接をしてきたようだ。
結果は芳しくない。
「はあ……また面接落ちかなあ」
とぼとぼと道を歩いていると、突然……
辺りが霧に包まれていた。
「な、なんだ?周りが全く見えないぞ!」
足元が揺らいでいく。
「う、うわああああ!」
次第に上下の感覚も無くなり、立っているのかどうかさえも分からなくなった。
「この霧から二度と出られないのかもしれない」
サトウタロウは放心状態になって霧にとらわれていた。
物理的にも、精神的にもだ。
「ああ、終わってしまうんだな人生……」
ないで……
何か聞こえる。
「あきらめないで!」
「これは……ボクを鼓舞してくれる声だ!」
「あきらめないで!まだ人生は長いのだから!」
ちょっとだけ出た勇気で霧から立ち上がる。
頭の霧が晴れたように意識がハッキリしてきた。
「まだだ。まだ……こんなところで!」
視界も戻ってきた。
さっきのはいったい何だったのだろう?
「間に合ったわね。ケガはない?大丈夫?」
「右手を少し擦りむいたくらいです。アナタは?」
「これ、名刺」
非存在観測部隊No.1 ミコト
「非存在って?」
「あなたが今まさに襲われた現象を含めて国中で起きる未知の怪現象のことよ」
何かあったら連絡してほしい。と言ってミコトは去っていった。
「まるでヒーローみたいだな。颯爽と現れてサッと帰るだなんて」




