表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非存在観測部隊の怪現象譚~ミコト教授のケースログ~  作者: LostCun
ケース14

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

サルの手と傲慢な教授 ~10割(パーフェクト)の救済を願った代償~

ミコトは研究室の中で古い桐の箱を開けてなぞっていた。

「先生……私は非存在を追い続けます……」

箱の中身は何かの右手のミイラ……小指が折れ曲がっている。

指はあと4本……



「先生!冷蔵庫買ったんですか!飲み物を入れてもいいですか!」

「いいわよ。牛乳とコーヒーのストックが少なくなったら補充してね」


ジリリリリ!

「着信ですか?」

「仕事用の電話ね。出るわね。少し静かにしてて」


「はい!非存在観測部隊No.1ミコトです。何かお困りごとですか?」

「こんにちは!あなたがミコト教授ですね!お噂はかねがね伺っております」

「こんにちは。用件は何かしら?怪現象?ラップ音?」

「まあまあ。落ち着いてください。私はとある雑誌の記者なのですが」

「マスコミ!なんの用かしら」

「貴方、国中の怪現象を追いかけて回っていると。のみならず解決してまわっていると

ウワサになっていますよ。ぜひ、取材させてほしいのですが」


ミコトは数秒間沈黙したのちこう答えた。

「いいわよ。ついてこられるのなら、だけどね」



晴れた昼間、構内にていつものダウジングをしていた。

非存在の早期発見にはこれが一番とミコトは思っている。

「へえ!原始的ですね。これでいつも先回りしたように怪現象の現場に現れるんですね」

「ええ。なるべく犠牲者が出る前に、ね」

「間に合わない時もあるんですか?」

「8割は早期発見できている」

「残りの2割で間に合わないんですね」

「まあ、そうね」

「10割にしたいとは思わないんですか?」

ギリっと奥歯を噛む音がする。ミコトは記者をにらみつけた。

「おおこわい。犠牲者は出ますよね。だって理不尽な災害のようなものなんですから」

「失礼ね。アナタ」

「それが仕事ですので」

「取材対象を煽って怒らせるのは記者の仕事じゃないわよ」

「怒らせた方がポロっと本音が漏れるものですよ」

「はあ……取材やめる?」

「ごめんなさい。以後気を付けます」



「電車で3つ行ったところに非存在の反応があるわ。

行くわよ。ついてきなさい」

「わかりました!」

「あと、釘をさすようだけど。現場では下手に言葉を重ねないで。

具体的に言うならば、黙っていなさい」

「何か理由が?」

「非存在の標的になりたくなかったら忠告は聞くものよ」



「いた。アレね」

「どれですか?」

「あそこ、つむじ風がずっとおんなじところで止まっているわ」

「へえ!めずらしいですね」

「油断しないで。忠告を思い出して」


ミコトが颯爽と走り出した。スプレーを持って。

「ぶつばつてきめん!」

シューーーーー!

つむじ風がだんだんと小さくなっていく。

「へえ!やりましたね!」

「まだよ!」

ヒュン!と音が鳴って雑誌記者の方につむじ風が飛んで行った。

ズバ!!

「い、いてててて!目がー!両目が切り裂かれた!」

「ほらあ!油断するからー!」


救急車を呼んだ。

まったく。大事になったものだ。

「眼球は傷ついてませんね。まぶたがちょっと切り裂かれただけですよ。

念のため、目が開くまで入院するかい?」

「はい。おねがいします」



「と言う診断でして、入院します」

「取材は一旦停止ね。わかったわ」

「3日たったらまた研究室に伺いますね」



「治りましたぜ!ミコト教授!次はどの案件ですか!」

「元気がいいわね。今日は助手も一緒に行くわよ」

「タツです。よろしくお願いします!」


「今日は車で近くまで行くわ。飲み物を買ってから行きましょう」



「今日は古い非存在の再検証をするわ」

「へえ?こんな山奥で?」

「先生。暗くなる前に宿に向かいましょうよ」


古民家を改修した宿で泊まる3人

「自分の宿代は自分で出してね。助手くんのは私が出すけど。

明日は朝から山に登るわよ」


ジジジジジゲコゲコゲコ、ザーザーザーー。

夜、食事を食べて寝ていた時だ。

意外な発見だった。田舎もとてもうるさい。

木や草が擦れあう音がする。

虫やカエルの音も気になる。



朝、陽気がまぶしい。

「さあ、行くわよみんな!」

森に入って山道を登っていく。

今日の目的地は中腹にある祠だそうだ。

「ぜえ……ぜえ……まだ登るんですか?」

「まだまだ、よ。半分来た程度かしら」



祠にたどり着く。

タツと記者は汗だくだ。

ミコトはすました顔をしている。

「体力お化け先生……」

「非存在と向き合うのには体力も必要なのよ」

「それ、いいですね。メモしますぜ」

ミコトが祠の正面に立つ。

「いい?いまから祠を開けるわよ。何が起こっても驚かないで」

そして、扉を、開いた。

ギギギギギギ……と蝶番の金属が鈍い音を出している。

すると……


辺りが突然真っ暗になった。

「先生!」

「なにが起こったんです!?」

ガアガアガアガア

カラスだろうか?妙に野太い鳴き声がする。


バタンと扉を閉める。

「終わったわ。中身を新しい器に取り換えたわ。あら?2人とも?」

カアカアカアカア

カラスの鳴き声が響いていた。



研究室の中で桐の箱に入った指のミイラを触っているミコト

「先生。それ、なんですか?」

「サルの手、よ。先代の教授から受け継いだこの研究室の秘密兵器、ね」

「それって何かを願うと歪んで叶えられるって言うアレですよね」

「ええ、そうよ」

「先生の音が言ってなんですか?」

「私は……」



「私は全ての非存在を犠牲者が出る前に打ち倒したい。悲劇に追いつきたいと願っている」

パキン。指はあと3本。



「起きて……!起きなさい!」

「はあ、はあ。先生!?」

「はあ。危うくウチの研究室から犠牲者が出るところだったじゃない」

「記者さんは?」

「あっちでのびているわよ。何の夢を見ているんだか」

「先生!サルの手って知っていますか!」

「ええ?知っているけど何かあるのかしら」

「研究室にありますよね?サルの手」

「!?どこでそれを知ったのかしら」

「夢の中で先生がサルの手に願い事をしていました」

「なんですって?それは……厄介なことになったかもしれないわね」


「ぷはああ!!い、生きてる!」

不穏な空気が流れる後ろで記者が息を吹き返していた。



「ありがとうございます。いい刺激になりました。記事になるかはわかりませんがね」

「お疲れ様。謝礼もありがとう。事前の話よりちょっと多めね?」

「エキサイティングな経験をさせていただいた分を足しときました」

「そう。さようなら。良い記事が欠けるといいわね」

部屋を出ていこうとする記者……最後に言葉を投げていく。

「10割、目指してくださいよ。ミコト教授」

「善処するわ」

ひらひらと手を振って見送った。


桐の箱を開けて中身を確認する。

指の数はあと3本……

本当に願いを叶えてしまったのだろうか?

実態は次に非存在に出会うときに分かるだろう。

たぶん、きっと、そうに違いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
学校内でダウジングって だいぶ香ばしい教授だのw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ