手袋に食われた乙女心。燃え上がる手編みと、男の毒白。
「これ!あげる!最近寒いでしょ!」
「おう、ありがとう!手編みの手袋か」
「毎日働いてご苦労様!」
交際3年目、男女の睦まじさが残るカップルが居た。
いわゆるイチャイチャカップルである。
今日は何の記念日でもないのに贈り物を送りあった。
手編みの手袋への返礼は少し高級な食事だ。
「おいしいね」
「オレの見立てはよかっただろう?」
「うん。よく見つけてくるねこんな店」
ほかの客の会話が聞こえてくる距離でありながら、
不思議な静寂に包まれている雰囲気のいいレストランだった。
「次はメインディッシュだ」
「たのしみね」
◇
「寒いね」
「そういえば、手袋を持っていたんだった」
「へえ?暖かいんだ」
「こうしたらおすそ分けできるかな?」
男は女の手を大きな手で包み込んだ。
さない……
「何か言った?」
「いや?何も?暖かいね」
「そうね」
ゆ、さない……
風がヒューンとなっていた。木枯らしだろうか?
ゆるさないから……!
「そろそろ手を放すよ」
「いや。もうちょっとだけ!」
イチャイチャカップルがいた。
すると、その時だ……
ボゥ!っと手袋が燃え上がった。
「なんだ!?」
「きゃあああああああああ!」
炎が女の髪に燃え移る。
男はジャケットを脱いで必死に火を打ち払おうとした。
「消えろ……消えろ……!」
数分後、髪と頭の皮膚が黒焦げになった女と驚愕している男が残った。
「ッチ。まだ……許してくれないのか」
◇
チーン
「今日で3回忌だね。そろそろ成仏してくれよ」
「そろそろ許してください。火傷、痛かったですよ」
手袋を編んだ女はすでに他界していた。
しかし、その怨念が現世に縛り付けられていた。
執念、だろうか。男に対する愛が遺恨となって残ったのだ。
人は時が過ぎ去るのに耐えられないものだろうか?
非存在として男を縛り続けることが本当に女の願いだったのだろうか?
「この間、ウワサ話を聞いたのよ。怪現象を倒して回る女教授の話を」
怪現象に困ったらミコト教授に頼りなさい。
そう界隈で噂され始めていた時だった。




