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非存在観測部隊の怪現象譚~ミコト教授のケースログ~  作者: LostCun
ケース5

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バカでかいカブトムシ 1話

「おい!カブトムシだ!で、でかいカブトムシが居たんだ!」

ツーツーツー


その言葉を最後にして電話が切れた。

これは怪現象があふれる非存在の森に迷い込んだ人の話。



ノエダ。54歳。趣味はアウトドアと昆虫採集。

学校の教師をしている。ほぼ引退しているようなもので、

今日は有休を使ってキャンプ場へ来ていた。

平日のキャンプ場は良い。静かで、落ち着いていて。

ちらほらと薪を囲んでいるソロキャンプの人が見えたが、

キャンパー同士の高度な自治が働いており、互いに話しかけたりはしないのだった。


「明るいうちに仕掛けてしまうか」

時間は正午を少し回ったくらい。

昼飯は食べた。カップヌードルだった。醤油味だ。


ノエダは森に入ってカブトムシ用の樹液を木に塗って回った。

こうすることで狙った位置に標的を集めるのだ。

「昨今は虫嫌いの若者も増えたものだが……私はまだまだ現役だな」

捕まえたカブトムシは釘を打って標本として飾ることにしている。

妻からは悪趣味だと言われるが……ノエダは自分が作る標本で誰かが笑うのが好きだった。


「さて、これでよし」

8か所に罠を仕掛けた。あとは夜を待つだけだ。



夕食はカルビを焼いた。

飯盒炊飯の米とプレートで焼いた肉がマッチして美味だった。

好きに作ってスキに食う。キャンパーの楽しみの一つだな。


夜には星を見て寝転がる。

大きめのシートを地面に敷いて空を見上げるのだ。

そうすると、まるで宇宙全体が自分一人のために存在しているかのような

万能感に包まれる。気がする。

市街の明かりでかき消されている星々のきらめきが

ここではハッキリと目に飛び込んでくる。

「ああ、いつ見ても美しい……」

思わず感嘆の声を漏らした。



とにもかくにも昆虫採集だ。

時間は22時。夜中だ。

罠を仕掛けた木に向かおう。

ライトにもなるランタンを手に取って森へと入っていく。

暗い夜に何度も入ったことがある慣れた道だ。

迷うことはない。


ベチャ……ベチャ……

なにやら聞き覚えのない嫌な音がする。


キーキキキ、ガーガーガー

キュイ!キュイ!バリバリムシャムシャ


いつの間にか森の中は音であふれていた。

異様だ。とノエダは直感した。

この時に戻っていれば、あんなことにはならなかったのかもしれないと後知恵で考える。



おかしい。罠を仕掛けた木はここを真っすぐ行ったところだったはずだ。

たどり着かない。

歩いても歩いても目印を見つけることができなかった。

周囲を観察する。

迷ったわけではないはずだ。

見覚えのある歩道が足元に続いていた。

何もけもの道を進んできたわけではない。

れっきとした歩道だ。管理され整備されている。

なのに、そこを進んでも目的地にたどり着かない。


まるで自分が小人になってしまったかのような歩みののろさだ。

「はあ……はあ……おかしいな。こんなに遠かったか?」


目印を見つけた。目的の木はすぐそこだ。

「た、たどり着いた!」

と思ったのもつかの間。罠の位置が明らかに高くなっていた。

「あんなに高い位置に仕掛けた覚えはないのだが」



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