唐突に始まるミステリー。そしてそれはすでに終わっていた。1話
オレの名前はタイト。24歳。フリーター。
平凡な日常を謳歌するモブキャラだ。
事件とか事故とかに巻き込まれるような人生ではない。
このまま大した盛り上がりもなく人生を終えていくのだろうと思いながら、
今日も深夜のコンビニでレジ打ちをしている。
日々の日銭を稼ぐので精いっぱいだ。
銀行口座の預金残高は3万円。
働けば腹が減るってことでエンゲル係数が高めの生活を送っている。
食べなければもっとお金が貯まるのに。とは姉の談。
お金を貯めても今の空腹が満たされるわけでもないしな。
それでも、多少の節約はする。
今日は廃棄のお弁当が出そうだ。
持って帰って明日の朝ごはんにすれば何百円か生活費が浮くだろう。
夜に働いて昼に眠る生活にも慣れたものだ。
冷蔵庫にはビールが入っていた。
数日前に勢いで何本かかっていた残りだ。
「つまみは、と」
冷蔵庫にしまってあったカニカマを見つけた。
ドンドンドン!
唐突に鳴り響くノックの音。呼び鈴押せよ。誰だよ。
少し不機嫌になりながら扉へ向かう。
「はーい!どなたですかー!」
ガチャリ、と扉を開ける。
誰もいない?
外を見回した。右、左、正面。誰もいない。
「何かのいたずらか?」
そうつぶやいて足元を見る。
「なんだ?起き配か?」
そこには小さな小箱があった。
部屋に戻って小箱を開けてみる。するとそこには……?
貴方は当選しました!おめでとうございます!
と書かれた紙片とどう見ても人間の物には見えない奇妙な指のミイラが入っていた。
「何なんだいったい?」
よくわからない届け物だ。指のミイラは……寺にでももっていくか?
タイトは座って改めてビールを飲みなおす。カニカマをつまみにして。
翌日の昼。起きると小箱が目に入る。
別に指が動きだしたりはしていない。
「なにかの嫌がらせかねえ?」
ガタガタガタガタ!
なんだ?指のミイラが小刻みに揺れ始めた。
そして……宙に浮いた!
「うわあああああああ!」
タイトは叫んで逃げ出そうとする。
直観が告げていた。あれは幽霊だ。見えない何かが指を浮かせていたのだ。
バリ、ボリ、グシャ!
あれは咀嚼音だ。何かが指のミイラを取り込んでいる。
どこかのマンガで見たような光景に怖気が走る。
扉まで……あと3歩だ。逃げるんだ!
あれ?ドアのノブって右に回せばいいんだっけ?それとも左?
完全にパニックに陥っていた。
指の咀嚼を終えた何かがこちらを向く。そんな気配がした。




