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シロside

 朝、目を開けたとき、いちばん最初に見えたのは、いつもの布じゃなくて、ユウのお腹だった。

 その上に、ぼくはぺったり乗っかっている。


 ぬくい。


 ユウの体温と、昨夜の火の名残りと、なにより――このテントの中の、やわらかい匂い。

 森の、冷たい匂いは、ここまであまり入ってこない。


(ん……)


 少しだけ体を動かすと、お腹の下でユウが小さく息を吐いた。


「……重くはないけど、動けないんだよなあ」


 知ってる。

 毎朝言ってる。


 でもユウのお腹はあったかいし、ここにいると、胸の奥のほうまでぽかぽかするから、すぐには退きたくない。


 だから、耳だけぴくんと動かして、片目だけ開けて、ちらっと見上げてやる。

 ユウが、困ったような、でもちょっと笑ったような顔をしていた。


「シロ、ちょっとだけ退いてくれ」


 しょうがないなあ。


 ぼくは、むにゃっと横に転がって、ユウのわき腹のあたりに頭を押しつけて丸くなる。


「ありがと」


 なでられたところが、じんわりあったかくなる。

 なでられた場所だけじゃない。胸の真ん中も、じわっと光るみたいに。


 ……この感覚は、ユウと会う前には、なかった。


 ユウがもぞもぞ起き上がると、テントの入口から冷たい空気が流れ込んできた。


 森の匂い。湿った土、枯れ葉、樹皮。その向こう側には、鉄みたいな、薬みたいな、冷たい匂い。


 〈瘴気〉。


 森の生まれの魔物にとって、それは「そこにあって当たり前」のものだ。

 でも、できれば近づきたくない。

 ぼくらの身体を、精神を、少しずつ少しずつ削っていく、よくない匂いだから。


 テントの布の内側は、それよりもずっとましだ。

 ユウの匂いと、火の匂いと、煮込んだ芋の匂いが、瘴気の嫌な棘を丸くしてくれる。


 ぼくの目には、世界は色で見える。

 森の空気は、うすく濁った灰色。

 瘴気の濃い木のあたりは、黒紫のもやもや。

 ユウのまわりだけは――少しだけ、白っぽくて、ほんのりきいろい光が混じっている。


 ユウが外に出ていく。ぼくも布切れをくわえたまま、ちょこちょこついていく。


 テントの前には、火の魔法石で動くコンロと、ユウが頑張って作ったガタガタの台。

 まだ土だらけだけど、ぼくには、ここが森の中で、いちばん息がしやすい場所だと思う。


 ユウはコンロに火を入れ、鍋に水を張り、昨日とってきた芋や草を放り込んでいく。

 火の上に置かれた鍋から、白い湯気が立ちのぼる。


 ……いや、白だけじゃない。


 ぼくの目には、その湯気の中に、うすい金色の粒が混じって見える。


 芋を入れる前、鍋の中の水には、ほんの少し、灰色の靄が揺れていた。

 森の水だから、当たり前だ。


 でも、ユウが芋を洗って切って放り込むと、その灰色は芋に移って、次に火が通るたび、湯気と一緒に空へと抜けていく。


 まるで、「嫌なものだけ」が湯気にくっついて逃げていくみたいに。


(やっぱり、ふしぎだ)


 ぼくは、前足の先でちょいちょいと地面をかきながら、その光景を見ていた。


 前に自分で掘って食べた芋は、もっと重たい匂いがした。

 ユウが煮た芋は、軽い。

 甘くて、やさしい匂いがする。


 その違いを、ぼくの鼻も、体も、ちゃんと覚えている。


「はい、シロ」


 ユウがぼくの前に、具を細かくしたスープを入れた小さな椀を置く。


 湯気から漂う光は、さっきより強い。


 舌に、とろりとした芋が乗る。

 噛むと、じゅわっと甘みがひろがって、喉の奥から、少しずつ体の奥へと落ちていく。

 そのあとを追うみたいに、金色の光が胸の中に広がった。


(……やっぱり、ユウのごはんは、あたたかい)


 お腹がいっぱいになるだけじゃない。

 冷えて固まっていたものが、内側からほぐれていく感覚。


 ユウと出会う前、ぼくはいつもどこか寒かった。

 毛皮の外側は平気でも、胸の奥だけ、ずっと冷たかった。


 それが、今は違う。


 ぼくは、自分のからだの内側を見ることができる。

 

 色と、音と、匂いで分かる。


 ユウと会う前のぼくの中は、あちこちに黒い針みたいなものが刺さっていた。瘴気のトゲだ。

 今は、その針のほとんどが消えている。


 かわりに、胸のあたりに、小さな光の粒が集まっている。

 それは、ユウのごはんを食べるたび、すこしずつ増えていっている。


 ユウのからだを見てみると――


 人間にしては、へなちょこだ。

 牙も爪も鋭くないし、きっと、グラード様の加護がなければ魔物に襲われて死んでしまうだろう。


 でも、その中心には、今のぼくと同じような光があった。

 ただそれは、ぼくのよりずっとおおきくて、ゆっくり回っていて――鍋をかき混ぜる腕を通じて、食べ物のほうに、すこしずつ流れていっている。


(……ユウの光が、ごはんのほうに移ってる)


 そんなふうに、ぼくには見えた。


 スープを飲み終えたころ、ぼくらは「視線」を感じた。

 ユウも、ぼくも、同時にそちらを見る。


 低い枝の上。


 灰色の羽に黒い目の、少し大きな鳥がとまっていた。

 体の周りには、うすい黒の糸みたいなものが何本も絡みついている。

 特に胸と翼のあたりが、濃い。


(……瘴気に、いっぱい触ってる匂い)


 鳥は、こわごわとこっちを見ている。

 でも、目の奥には、スープの湯気を追いかけていた。


「お前も食べるか?」


 ユウがそう声をかけると、鳥はびくっとして木の葉の陰に隠れた。


 けれど、逃げない。


 きっと、匂いが、あまりにもやさしいから。


 ぼくは知っている。

 森のごはんは、たいていどこか痛い。

 喉をひっかいて、胸を冷やして、それでも食べないと生きていけないから、みんな我慢して飲み込んでいる。


 ユウのスープだけは、最初から最後まで痛くない。


 ユウは、鍋から小さな椀にスープをよそい、テントから少し離れた場所にそっと置いた。

 ぼくたちは何も言わず、自分たちの場所へ戻る。


 鳥のほうを見ない。


 でも、ぼくの耳と鼻と目は、全部そっちを向いている。


 少しして、枝の上の気配が動いた。

 ためらう足音。

 土を踏む、小さな音。

 椀のそばで止まり、しばらく匂いを確かめる沈黙。


 それから――ちゅ、と小さな音。


 鳥が一口、スープを啜った音だ。


 その瞬間、鳥の胸のまわりの黒い糸が、一本だけ、ふっと薄くなった。

 代わりにその奥で、小さな黄色い光がぽっと灯る。


 もう一口。

 もう一口。


 飲むたびに、その光がすこしずつ大きくなっていく。

 尾羽がこくんと上がり、羽の端がすこしだけふくらむ。


 ぼくの鼻には、鳥の匂いの中から、冷たい錆みたいなにおいが消えていくのが分かった。


 鳥が椀を舐め尽くす頃には、胸のあたりの黒い糸はだいぶ薄くなっていた。

 代わりに、糸の隙間から、かろうじて灯っていた小さな光が、前よりもずっと明るくなっている。


 それでも、鳥はすぐにはユウを見なかった。

 森の奥のほうを、ちらりと一度だけ見やる。


 その先には、もっと弱く小さな光がある。

 ぼくにも、かすかにそれが感じられた。


(……あっちに、ちいさいのがいる)


 鳥ははっとしたように翼を震わせ、慌てて椀から離れる。

 椀の底に残っていた芋の欠片を、くちばしで器用につまんで、森の奥へ飛び去っていった。


 それからも、同じような日が何度か続いた。

 ユウがスープを置けば、鳥はおそるおそる降りてきて飲み、胸の光を少しずつ大きくしていく。

 森の奥にある、小さな光――あの雛のものらしい気配も、ほんのわずかずつだが強くなっていくのを、ぼくは遠くから感じていた。


 そんなふうに、少しずつ光が増えていった、ある日のこと。


 今度は、鳥が黒紫の実をくわえて戻ってきた。


 あの、瘴気の木の実だ。


 実のまわりには、さっきの黒い糸よりずっと濃い、どろりとしたもやがまとわりついている。

 近くにいるだけで、ぼくの鼻がむずむずした。


「おいおい」


 ユウの声が少しだけ低くなる。


 ぼくはすぐにユウの足もとに寄って、小さく唸った。

 あれは、たべちゃだめなやつだ。


 鳥もそれを知っているはずなのに、それでも実を離さない。

 翼は震えているのに、目だけは真剣だった。


 怖い。でも、引き下がれない、という色をしていた。


 ユウは、ゆっくり手を挙げる。


「食べるなよ。そのまま食べるのは、やめとけ」


 その言葉を聞いて、鳥は動きを止めた。


 そして、ゆっくり、ゆっくりと枝を歩き、幹を降りて、地面へ。


「ここ以上近づきたくない」ぎりぎりの場所で止まり、ぎゅっと目を閉じて、くちばしを少しだけユウのほうへ突き出す。


 その仕草が、「お願い」に見えた。


 ぼくにも、ユウにも。


 ユウが実を受け取り、調理台へ運ぶ。

 ぼくは少し離れたところから、それを見ていた。


 小刀で実を割ると、中から濃い紫の果汁があふれ出す。

 空気に触れた瞬間、黒いもやがふわっと立ち上る。


 ぼくは思わず鼻を押さえた。

 喉の奥がぴりぴりする匂い。


 でも、ユウは顔をしかめただけで、逃げない。


 小さな鍋に水を張り、実を皮ごと入れる。


 じわじわと火が通り、鍋のまわりに、さっきとは違う湯気が立ちのぼり始めた。


 最初は黒混じりの紫色。


 でも、ユウが火を弱めて、ゆっくりゆっくり煮ていくうちに――


 黒い部分だけが、少しずつ湯気になって飛んでいく。


 鍋の上の空気に、黒い糸みたいなものが立ち上り、それが風に混ざって、どこかへ消えていく。


 鍋の中には、濃い紫と、うすい金色が渦を巻いて残った。


(……黒いのだけ、抜けてる)


 ぼくの目には、そう見えた。


 柔らかくなった実を取り出し、皮と種を取り除き、果肉だけを鍋に戻す。

 今度は水をほとんど足さず、火を少し強める。


 木べらで混ぜるたび、とろり、とろりと果肉が鍋底を這い、空気に触れた表面がつやつやと光る。


 湯気の匂いが変わった。


 さっきまで喉をひっかいていた棘が消え、かわりに甘くて素直な香りだけが残る。


 よく煮た木の実と、黒蜜のような、落ち着いた甘さ。

 森の冷たい匂いを、少し忘れさせる匂いだ。


 ユウは木べらの先についた果肉を少しだけ指でつまみ、味見する。


 その瞬間、ユウの胸の光がふわっと明るくなった。

 それが腕を通り、指先から鍋へと、ほんの少し流れ込む。


 鍋の中のコンポートも、ふっと色を変えた。


(……ユウのなかみが、また、入った)


 ぼくは、息を呑んだ。


 それからユウは、さっき鳥がスープを飲んでいたのと同じ、小さな椀を取り出した。

 そこにコンポートをほんの少しだけ入れ、冷まし、テントから少し離れた平らな場所にそっと置く。


 鳥は、さっきと同じように、おそるおそる近づいた。

 椀の縁にくちばしを寄せ、匂いを嗅ぐ。


 その瞬間、鳥の目がまるくなった。


 短く震えを走らせてから、恐る恐る果肉にくちばしを差し込む。


 何口か食べたところで、鳥の動きがふと止まる。

 名残惜しそうに椀の中を覗きこみ、それから縁をくちばしでつまんでぐい、と持ち上げようとした。


 当然、椀は重すぎて動かない。


 かちゃり、と空しく土の上で音を立てるだけだ。


 何度か同じことを繰り返してから、鳥は尾羽をしょんぼりと落とした。


(……持って帰りたいんだ)


 ぼくがそう思ったのとほとんど同じタイミングで、ユウもぽつりと呟いた。


「……持って帰りたいのか?」


 鳥はびくりと肩を震わせたが、椀から目を離さない。


 そんな鳥を見て、ユウは小さく息を吐いた。


「……ちょっと待ってろ」


 ユウはテントのそばに積んであった大きな葉を一枚取り、内側を軽く拭ってから手のひらの上で折りたたむ。


 舟のような形になるよう端をきゅっと留め、その中にコンポートをひとすくい。


 ころん、と丸く落とし入れると、冷めて少し固くなってきているおかげで、形は崩れない。


 さらに端同士をくくって、こぼれにくい小さな包みにした。


「こぼすなよ」


 鳥のほうへ歩いていき、しゃがみ込んで、葉っぱの包みを差し出す。


 鳥は驚いたように目を見開き、それからおそるおそる首を伸ばした。


 葉の端を、そっとくちばしでつまむ。


 体格のわりに、信じられないくらい慎重な動きだった。


 葉の包みがぷらりと揺れるたびに、鳥は足を踏ん張り、バランスを取り直す。

 それでも最後まで落とさず、しっかりと咥え直した。


 ちら、とユウの顔を見る。


 何かを確かめるような視線。


「大事なやつに、分けてやれ」


 そう言うと、鳥の尾羽がふるふると揺れた。


 それから彼は、葉っぱの包みをくわえたまま、森の奥へと飛び立っていった。


 ――そのあと。


 ぼくはユウの足もとに丸まろうとした。


 けれど、胸の奥のなにかが、ざわざわした。


(……見にいきたい)


 気づいたら、ぼくは立ち上がっていた。


 ユウがテントの中に何かを取りに入った隙に、森の奥へ向かって駆け出す。


 鳥の匂いと、甘いコンポートの匂いをたどって。


 森の中は、さっきより暗く、重かった。

 瘴気の木の近くを回り込むように、そっと進む。


 そこだけ、空気がどろっとしている。

 黒紫の色が濃く、触れたら足が沈んでしまいそうだ。


 けれど、コンポートの匂いが、その中を細い道みたいに切り開いてくれている。


 甘い香りと、金色の光が、ぼくの鼻と目を導いた。


 低い木の枝の間に、小さな巣があった。

 草と枝で作られたその真ん中で、灰色の小さな雛が丸くなっている。


 羽はしぼみ、目は半分閉じて、胸の上下はかすかなものだ。


 雛のまわりには、濃い灰色のもやがまとわりついている。


 ぼくの目には、その中の光が、今にも消えそうな小さな火種に見えた。


 巣の縁には、さっきの鳥がいた。


 葉っぱの包みをそっと置き、雛のそばに寄り添う。


 翼の先が震えている。


 それでも雛から離れようとしない。


 包みの中では、黒紫のコンポートがとろりと揺れていた。


 甘い匂いだけが、はっきりそこにある。


 ぼくは木の陰に隠れて、息を潜めた。


 鳥は、雛のくちばしをそっと突く。


 しかし、雛の口はなかなか開かない。

 力がない。


 鳥は一度目を閉じてから、自分のくちばしでコンポートを少しすくい、それを雛の口元に押し当てた。


 雛の口が、かすかに動いた。


 とろりとした甘い果肉が、舌の上に乗る。


 その瞬間――


 ぼくの目には、雛の胸の真ん中で、ぽ、と小さな光が灯るのが見えた。


 さっきまで灰色に沈んでいた火種が、ほんの少しだけ明るくなる。


 二口目。


 三口目。


 コンポートが少しずつ喉を通るたび、光が大きくなる。


 灰色のもやが、巣の中から押し出されていく。


 冷たい水の中に沈んでいた小石が、ゆっくりと水面に浮かび上がるように。


 雛の胸の上下が、少し大きくなった。


 しぼんでいた羽毛が、ふわっと広がる。


 かすかな鳴き声が、土と葉っぱの匂いの中で震えた。


(……死から離れてる)


 ぼくは、ぞわり、と背中の毛が逆立つのを感じた。


 これは、ただの「回復」じゃない。


 もうほとんど向こう側に足をかけていた小さな命を、こっち側へ引っ張り戻している。


 あのコンポートが。

 ユウの鍋が。


 巣のまわりを取り巻いていた灰色のもやが、すこしだけ薄くなった。


 代わりに、淡い黄色と、ほんの少しの緑色が混じった光が、巣全体を包み込む。


 雛は弱々しいながらも、親鳥の翼に顔を押しつける。


 親鳥は何度も、何度も、雛の頭を羽で、頭で撫でていた。


 ぼくの鼻には、瘴気の匂いが、ほんの少しだけなくなったのが分かった。


 ここだけ、森の中で一番きつい場所のはずなのに――

 さっきよりも、少しだけ息がしやすい。


 胸の奥の冷たさが、わずかに和らいでいる。


(……ユウのごはんは、ほんとうに、森を変えてる)


 ぼくはそっとその場を離れた。


 気づかれてはいけない。


 僕に気づいたら、あの鳥たちは緊張で固まってしまうだろうから。


 テントへ戻ると、ユウが心配そうな顔で待っていた。


「シロ、お前、どこ行ってたんだ? そんなに泥だらけになって」


 ぼくは、べしょべしょの足でユウの足もとに駆け寄る。


 何も言えないから、代わりに尻尾を全力で振った。


 すごいよ!すごかったんだよ、ユウ。


 本当はそう言いたい。


 でも、ぼくの口から出るのは「きゅう」とか「わふ」とか、そんな音だけだ。


「……まあ、元気ならいいけど」


 ユウは肩をすくめて笑い、ぼくの頭をぽんぽんと叩いた。


 その手からまた、あったかい光が少しだけ流れ込む。


 遠くで、小さな鳴き声がした気がする。


 さっきの雛の声だ。


 さっきより少しだけ、強くて、明るい声。


 ぼくの耳だけが、それを拾った。


(……ユウのごはんで、ひとつ、消えそうだった光が残った)


 ぼくはユウの足もとで丸くなりながら、胸の中でそっと思った。


(お腹だけじゃない。胸の中もあったかくする。

 瘴気を追い出して、森の空気まで、ちょっとだけ楽にしてしまう。

 そんなごはん、聞いたことない)


 ユウは、きっと、知らない。


 自分のごはんが、どれだけおかしくて、どれだけすごいものか。


「明日は、芋をつぶして焼いてみるか……オーブンがほしいなぁ」


 ユウはそんなことを言いながら、火のそばで明日のメニューを考えている。


 ぼくは、その横で尻尾をふわりと一度振った。


(……ユウのごはんがあれば、きっと、もっとたくさんの光が消えずにすむ。

 そのかわり――ユウのことは、ぼくがちゃんと見てなきゃ)


 そんなふうに思いながら、ぼくはそっと目を閉じた。


 森の冷たい匂いの中で、ここが、やっぱりいちばんあったかかった。

ここまで読んでいただいた方ありがとうございます!

もしよければブクマ、☆☆☆☆☆いただけますと、今後の執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

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