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ジンクスパンツ ときどきノーパン  作者: 焼肉一番


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水野の心


 ――私は、英彦君の事が大好き――。


 え? 何だこれは?

 これは水野の、心?


 ――覚えてるかなぁ?


 中学一年生の時、部活見学中に飛んできたサッカーボールから私を守ってくれたの。

 その時から、大好き。

 単純かも知れないけど、すごくカッコ良かった。私は人よりどんくさいところがあるから、危ないと思った時にはいつももう手遅れ……。あの時ももうダメって思って目を瞑ったら、英彦君がポケットに手を突っ込んだまま、飛び出して来てヘディングで弾き返したの。


 本当にカッコ良かったぁ……。


 あの時の事、今でも鮮明に思い出せる。一瞬一瞬がストップモーションみたいに止まって見えてたの。

 それでビックリし過ぎて、ありがとうって言えなかった。 

 でも英彦君も、別に何でもないみたいな顔してた。

 何て良い日だったんだろう。またこんな日が来れば良いのに。

 そう思って、その時はいていた白いパンツを、同じ曜日にはいて行くようにした。

 そしてそれから……。


 偶然同じ委員会になれた。

 席替えで隣の席になった。

 髪を切ったのに気付いてくれた。

 休みの日だったのに駅でバッタリ会えた。

 初めて英彦君の方から挨拶してくれた。

 ある日の帰り道で、後ろから頭をポンってしてくれた。


 そうやって、嬉しい事がある度にその時はいてたパンツをジンクスパンツにしていたら、いつの間にか全部のパンツが大事なジンクスパンツになっていた……。


 いつまでも中学生の頃から同じパンツはいてるなんておかしいって思うけど、大人っぽい綺麗なパンツも欲しいなって思うけど。

 でも、どんくさくて、引っ込み思案で、本当は男の子と普通にしゃべる事なんか出来ない私が、今こうして、英彦君と同じ委員会で、隣の席で、普通に……本当はいちいち緊張してるけど、英彦君に変に思われないレベルでお話が出来てる事が、全部ジンクスパンツのお陰なんだって思ったら、やっぱり変えられなくて……。


 そのせいで、ややこしい事が起きてしまって、大好きな英彦君に迷惑を掛けちゃった。

 私の想いを支え切れなくなったきっかけは、あの時……、階段で英彦君に怪我をさせたかも知れないって思った時だと思う。


 その日の夜に、すごい自己嫌悪に陥って、もう二度と……大好きな英彦君を危ない目に合わせたくないって強く思った。守りたいって……。

 そうしたら、その時はいていた白いパンツが、私の気持ちを代弁するかの様に英彦君の元へ飛んで行ってしまった。


 英彦君が私のパンツに纏わり付かれてる、それですごく困ってる、それなのに、それがきっかけで英彦君と一緒に居られる時間が増えた事に喜んでしまう私も居たの。本当にごめんなさい……。

 でももう、英彦君を困らせたりしない。困っているなら、私が助ける。

 想いの強さでパンツのエネルギーが増幅するのなら、私は負けない。

 だって私は、英彦君が、大好きだから――。



 そう……か……。

 そうだったのか水野……。

 お前の想いの強さが、このイチゴパンツの大きさなんだな……。

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