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ジンクスパンツ ときどきノーパン  作者: 焼肉一番


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25/35

パンツ×二枚

 とうとうその場にぺたりと座り込み、そのまま上半身を倒れ込ませて蹲る。

 前はすっかり隠れたが、お尻の方のスカートがひらひらとめくれ上がり、平岡のピンクのパンツが見え隠れする。

 両サイドに結び目が付いているのでどうやら紐パンと言うやつだ。素材は木綿ではなさそうで、なんだかテロンテロンしている。ナイロンってやつか?

 いくら平岡に興味がなくても、さすがに目の前でこんな風に悶えながらお尻を丸出しにされたらさっきチラリとしか出来なかったパンツの観察くらいはしてしまうってもんだ。

 いかんいかん、不可抗力とは言えまたどんないちゃもんを付けられるか分かったもんじゃない。俺はなるべく視線を外しながら平岡に声を掛ける。


「うっ……後ろもめくれてるからな? 見てないけど。てか大丈夫なのか? どっか苦しかったりするのか?」 


「あーっ! もうっ! ダメだったらぁ!」


 なるべく平岡を見ない様にしていたのに、そんな声を出すのでついまた見てしまう。それにこの悶え方は見る見ないの問題じゃなくて何か大変な事が起こっているんだ。そう、大変な事が……。


 スルリ……。


 平岡の紐パンの紐が、両サイドとも解けたのを確認した。


「なっ!」


「いやあああああ!」


 紐が解かれた紐パンはどうなるか。当然、お尻を隠す役目は失われる。そして普通ならば、そのままストンと地面に落ちるだろう。

 平岡はそれを前から、股間に挟んだ両手で抑え込んでいるのだと思う。しかしその紐パンはズルズルと動き、まるで重力に逆らって平岡の手から逃れようとしている様だった。


「お……おい、何が起きてるんだ……お前、そのパンツ……!」


 飛ぼうとしているんじゃないか、そう言おうとして飲み込んだ。仮にそうだとして平岡がその通りであるとは言わない気がしたからだ。


「知らない! 知らないわよ! 助けて! 脱げちゃうぅぅ~!」


 このままじゃ平岡がノーパンになるのは時間の問題だ。空飛ぶパンツを、俺は良く知っている。もしこれが同じ現象だとしたら、こいつを抑えつけておく事なんで出来やしないんだから。

 俺はせめてと、ブレザーを脱ぎ、それで平岡のお尻を隠してやった。結局はブレザーも、スカート内部から吹き上げる謎の風力で多少ははためくが、上から腰の辺りでブレザーを抑えてやってれば足首まで覆い隠せるので丸見えになる事はない。


「良し、大丈夫だ平岡、これで見えないから無理せず手を離せ! 逆らうと危険だ!」


「いやよっ! 何考えてるのよ変態! ああっ……でももう、ダメぇー!」


 平岡は最後の最後まで抵抗したが、とうとうそのピンクの紐パンは平岡の両足の間から飛び出し、俺のブレザーを勢いよく弾き飛ばしては高々と空へと舞い上がった。


 生まれたのだ。空飛ぶパンツが、もう一枚。


「あ……あ……何だこれは……どうなっている……」


「ひ……これは何……何なの徳丸君!?」


「俺だって分かんねーんだよ!」


 二人でそれを眺めて喚く。

 すると不穏な空気を感じたのか、胸ポケットにしがみ付いていた俺のパンツは、もとい水野のパンツは、初めて見た時の様にパタパタとそこから飛び上がり、俺の頭上をくるくる回り始めた。

 今更、ほら見ろ、言った通りこいつも飛ぶだろうが、なんて言う気には到底なれない。


「どう言う……事……? もう嫌! 何なの?!」


 二枚のパンツを確認した平岡は、そう叫んでワケの分からないストレスを爆発させた。

 気持ちは分かるさ。日が全く当たらない旧体育館の裏でまさかこんな光景が展開されているとは誰も思うまい。故に、例えば……この紐パンが俺を殺す勢いで襲い掛かって来たとしても誰も助けには来ないと思う。


「うわあああっ!!」


 当たったら死んでたんじゃないか。

 そう思わせる勢いで、急にそのピンクの紐パンは俺の顔面を目掛けてその身を突進させたのだ。


「な……ん……」


 パンツが俺を襲った……。

 その事実に俺は少なからずショックを受ける。

 突然の滑空に何とかギリギリ身をかわしたが、紐パンはまたただちに空へ舞い上がり、まるで俺の動きを見張っている様で……明らかに水野の白パンツからは感じられない敵意を感じた。

 すぐに向き直るが紐パンもまたすぐに俺に突進して来る。


「なんっ……! 何なんだよ!」


「きゃあっ!」


 ワケが分からず怯え切った平岡が俺の後ろに隠れた。かわしたら平岡がただじゃ済まないだろう。いや、もともとの持ち主である平岡に傷を付ける様な事はしないか? 一瞬そうも思ったが考えている暇はない。平岡をタックルする様に乱暴に地面に伏せさせる。


「いったぁい!」


 俺を責めるような言い方をした平岡に構わず、俺は立ち上がって走った。一体今日はどれだけ全力疾走したら良いんだよ。だけどこの場を……平岡から離れておかないと巻き込まれる危険があるんじゃないか? 明らかに俺を狙って来ている。


「待ってよ徳丸君! またあたしを一人にするの?!」


 せっかく離れてやろうとしているのに、平岡は腰に俺のブレザーを巻き付けながら後を追い掛けて来た。


「バカ来るな! 危ないだろう!」


 そのすぐ後ろを追い掛けてくるパンツ×二枚。

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