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ジンクスパンツ ときどきノーパン  作者: 焼肉一番


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16/35

蓮宮守男

「あたしね、いつも友達に分けたりしてるからちょっと多めに持って来てるんだ~。良かったら徳丸君も……」


「いや、良いよ。今日はちょっと約束があるから」


 正直、平岡には少々感心したが今日はそれどころではない。

 断られるとは思っていなかったのか、平岡の顔がこわばる。何だか俺、平岡にこんな顔させてばかりだ……。


「ごめんな」


「約束って水野さんと? 何だか急に仲良しだよねっ」


 本当によく見ている……。そう言って平岡は隣の席で一部始終を聞いていたであろう水野の顔を覗き込んだ。


「へあっ……あ、う……うん」


「仲良しとかじゃねぇよ」


 急に話しを振られて戸惑う水野に代わって俺が答えると、平岡が突拍子もない事を言う。


「ああ、もう付き合ってるんだ?」


「違ぇよ!」


「違うの?」


 平岡はまた水野を覗き込んだが、俺がもう一度違うと繰り返した。

 洞察力がある奴だと思ったばかりだが撤回だ。てんでずれてるじゃないか。


「ねーなになに平岡さん! 英彦に何か用事? 俺にも用事ないの? あるなら俺全部の用事キャンセルして平岡さんとこ行くよ?」


 四時限目を寝て過ごし、ようやく今起きたであろう原田が平岡に気付いてすぐにこちらへ走って来た。


「ふふっ、ありがとう原田君。でも何でもないの。また今度ね!」


「えーそうなの~? 何だぁ~つまんないの~」


 適当に原田をあしらって平岡は背中を向けた。


「……何だったんだよアイツ……まぁ良いや、行こうぜ?」


 軽やかに走り去る平岡の背中を見送りながら水野を促す。しかし何の反応もないので振り返ると、水野は何とも言えない、しかしハッピーではないと一目で分かる表情で俯いていた。


「水野?」


「はわいっ?!」


「ぷっ!」


 名前を呼ぶとハッと顔を上げたが、その素っ頓狂な声に思わず吹き出してしまう。


「……え?」


「何でもない。さっさと行こうぜ」


 俺が笑った事に少しだけ驚いた素振りを見せた水野は、俺に急かされてようやく立ち上がった。



「もうさ、無理やりはいてみたらどうだ?」


 本人にその気はないのだろうが、そう雑な提案をしたのは原田である。

 昨日からの流れで、全く役に立ちそうもない原田も昨日と同じ場所で一緒に昼休みを過ごしているのだ。


「触る事は出来るんだからさ、力ずくではいちまえばパンツも気付くだろ! あ、ここだったわ! って」


 とてもじゃないが……あのパンツは女子が抑え付けられるシロモノではない。

 俺がいくらポケットから引っ張り出そうとしても、ハサミで切り刻もうと挑んでも、あのパワーと素早さでどうにも出来なかったからな。そもそも……それじゃあ水野のパンツはうっかり持ち主である水野を忘れて家出したみたいじゃないか。絶対にそう言う事ではないだろう。


「分かった。やってみる」


 やってみるんかい。

 良い提案があると言っていた蓮宮を見るが、サンドイッチをもぐもぐしながらただ状況を見ているだけだ。


「触るよ?」


 そう断りを入れて、水野が俺のブレザーのポケットに手を突っ込む。そのままパンツを掴み、引っ張り出す。

 ここまでパンツは暴れもせず、水野に身を任せていた。


「良し! 一気に行け!」


 原田が檄を飛ばす。


「はい!」


 水野が応え、言われた通り、両手で一気にパンツのウエスト部分を広げた。そしてそこへ、まずは右足を滑り込ませる。まだ足首あたりにある状態だが、右足は無事、本来の場所へ納める事が出来た様だ。


「良いぞ! 左もやれ!」


「はい!」


 また水野が応え、左足をあげた時だった。水野の右足首あたりに居たパンツは急に俺の方を目掛けてロケットスタート。簡単に水野の手を離れ、更にその右足首ごと浮き上がった為、足を掬われた形で水野は盛大に尻もちを付いてしまった。


「きゃあっ!」

「惜しい!」


 何も惜しくなかったと思うが……。


 ついでに言うと、転んだ拍子に水野の木曜日パンツもバッチリ見えてしまった……。まぁ似た様な中学生パンツだったが薄い緑ってのは悪くないんじゃないかな。うん、水野に似合ってた気がす……。


「やっぱり今のパンツの上にはくなんて失礼なんじゃないか? ただでさえ家出したパンツだぞ? しっかり脱いでから、お前しかいないんだと言う気持ちで……」


「ぶっ?! いやいやいやまずいだろ! それでさっきみたいに尻もち付いたらどうすんだよ! 今度は……」


 絶対にもっとやばいもん見ちゃうだろうが!

 その言葉を飲み込んだ俺に原田が続きを促す。


「今度は何だよ?」


「今度は……いよいよ……痛いだろう! 二回もお尻打ったら!」


 まぁすでに相当痛そうだったがな。


「大丈夫! あたしやってみる!」


 やってみるんかい。


「良く言ったぞ水野!」


 こいつら……何だかおかしなテンションになってるな……。

 せっかく止めてやったのに、さっき木曜日パンツ丸見えだったぞと教えてやらないとダメなのか?


「あ、でも大丈夫か? 昨日から一日中英彦のポケットに入ってたんだから汚ねぇんじゃね?」


「は? 俺のポケットは別に汚くねぇよ! それに昨日ちゃんと手洗いしたし」


 原田がおかしな事を言い出すもので……思わず、究極に言わなくて良い事を口走る。水野の顔がカァッと赤くなるのを見てから気付いた……。


「わ……私のパンツ……手洗いしてくれたの?」


「……そうだ……だから……安心して、はけよ」


 何かカッコ良さげに言ったらどうにかなるかな~なんて思ったけど……、どうにもならないなこれ! やめとけって言った筈なのにはけよって言っちゃってるしな! あー死にたいな!


「茶番はそこまでにして。そのパンツの呪いはそう言う事じゃない」


 沈黙を守っていた蓮宮がこのタイミングで口を挟む。どうせならもう少し早くそれ言って欲しかった。そう言う事じゃないのなんか俺だって分かってたのにサンドイッチ優先させやがって。


「じゃあどう言う事なんだよ?」


 急かす原田に蓮宮は極めてマイペースに、いつも小脇に抱えている本を開いて話し出した。


「本来動くはずのないものが動いたり、その物に関わった人間に不幸が襲い掛かったり、古来から物に魂が宿ると言う逸話は数多くある。ディブクの箱、リトルバスタード、アナベル人形……これくらいは聞いた事があるでしょう」


 知らないがようやく話し出した蓮宮の邪魔をしない様に黙っておく。


「日本では九十九神なんて言うのも居るけど、それは長年大事に使われた物に魂が宿るとされている。水野さんのパンツは何年物?」


「ご……五年かな……」


 五年?!


「……年頃の女性のパンツとしては寿命をとうに超えてるわね。相当大事にはいているのは分かる……けど! 一般的に考えれば神が宿るにはまだまだの筈。であれば、やはり悪しき呪いがそのパンツを憑代にして動かしていると見るしかない」


 一般的に考えれば……て、こう言う事に一般的とか常識的とか、そう言う事を簡単に当て嵌めて良いんだろうか? あらゆるパターンがありそうな気がするのだが……水野はすっかり蓮宮の言葉を鵜呑みにしてしまった。


「そ……そんな……どうすれば……」


 すると蓮宮は分厚いその本をボスンと閉じて言った。


「とっておきだけど、お爺ちゃんの蔵を解放するわ。量が膨大でとてもじゃないけど私ひとりじゃ無理。手分けしてこの案件に似た事例を探すのよ」


「結局どう言う事なんだよ?」


 また原田が急かすが俺も同じ気持ちだった。いよいよ本題を喋った事は何となく分かるんだが、お爺ちゃんの蔵で何するってんだ。


「まっ……まさか……蓮宮さんのお爺ちゃんってまさか! 蓮宮守男?!」

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