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ジンクスパンツ ときどきノーパン  作者: 焼肉一番


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空飛ぶ三角

 白くて、三角で、真ん中にピンクのリボンが付いていて、ところどころレースで装飾されている布状の物体。


 そいつが今、俺、徳丸英彦の目の前をパタパタと飛んでいる。


 風に乗って飛んでいるというわけじゃない。

 言っただろ? パタパタと飛んでいるんだパタパタと。

 両端を翼の様にはためかせてまるで……そうまるで、自分の意思で飛んでいるかの様に。


 自分が何を言ってるのか分からないが、事実飛んでいる。


 気持ち悪いと思わないで欲しいのだが四つ年下で、中一の妹のパンツを見てしまった事がある……いや、ぶっちゃけよく見てしまう。

 しかしそれは不可抗力なんだ。あいつが洗濯カゴの中に無造作に入れてしまうからであって見ようとして見ているわけではない。

 話を戻すが、今目の前でパタパタと飛んでいる布状の物体と、洗濯カゴに入れられた妹のそれは……酷似している。

 つまり……、女物のパンツが飛んでいる……と言う事になるな。


 デザイン的にとても素朴で、およそ男を誘惑する為の機能は持っていないと思われる。

 いやまぁ女物のパンツと言う時点でその効力はあるのかも知れないが俺から見ればそれこそ中学生がはく様な色気も何もないパンツだ。

 妹のパンツを見ているせいなのか、妙な既視感と懐かしさすら感じるが、さすがに……。


「こえぇ……」


 何これどう言う状況?


 俺は間違いなく男だが、目の前に女物のパンツが浮かんでてラッキー! と喜ぶ程おめでたくはない。この状況で喜べる男が居たら是非とも友達になりたいもんだな。


「英彦! 何それ女のパンツじゃん! ラッキー! なぁ! もらって良いのかなぁ? なぁ英彦? お前んじゃねぇんだろ? 英彦? 英彦ってぇ~~、何シカトしてんだよぅ~?」


 友達ではない。

 断じてこんな奴は知らない。

 友達ではないただのクラスメイトで幼馴染で家も近所の原田健太が、空飛ぶパンツの前で呆然と立ち竦む俺に、ラッキー百円落ちてる~みたいなノリで話し掛けてきた。


「ああ、断じて俺のじゃねぇよ……。欲しけりゃさっさと持ってけ。気持ち悪い」


「悪いな! お前が先に見つけたのによ?」


「全然悪くないから早いとこ持って行け」


「早起きは三文の徳ってさ~、昔っから婆ちゃんが言ってたワケ! でも俺早起き苦手じゃん? そんでいつもギリギリで学校行ってたけど、正直早起きしても遅刻しない事くらいしかメリットないと思ってた~。まさかさ~パンツ拾えると思わねぇよなぁ? ま、実は今日の俺は早起きじゃなくて朝までゲームやってたからだったりするんだけどよ! もう気が付いたらカーテンから朝日が差し込んでてさ~、これ今寝たら絶対また遅刻す……」


「良いから早く拾えよ! パンツ拾うとこ誰かに見られたいのか?!」


「ぷはっ!」


 原田は吹き出し、どっちかって言うと見られたくないなと言いながらやっとパンツに手を伸ばした。俺なら絶対に見られたくない。

 いつも早めに登校する癖が付いているが実は五分程パンツの前で動けなくなってしまった。朝の五分はあまりにでかい。間もなくこの通学路は生徒で溢れるだろう。


「あれっ」


 原田が手を伸ばすと、その場で浮かんでいるだけだったパンツはスルリと右にスライドした。


「このっ」


 パンツを追って原田がまた手を伸ばすと今度は左へスライドする。


「それっ」

「おいっ」

「待てっ」

「こらっ」


 右へ左へと、原田がパンツに翻弄されている。

 何をやってるんだとろ臭い!

 こんなワケの分からないパンツは原田にさっさと任せようと思っていたが急にじれったくなって俺は思わずそれに手を伸ばしてしまった。


「~~~何やってんだよ! ほら!」


 さっきまで華麗なステップ? で原田の攻撃をかわしていたパンツは難なく、俺の手のひらに収まった……。


「うっ……わ……」


 自分の手の中に……女物のパンツが……。


「すっげぇ英彦! やるな! なぁなぁ! 俺にも貸してくれ!」


 触れてしまった事を後悔するやら妙な感動に襲われるやら、軽く動揺している俺に原田が変わらぬテンションで俺にパンツを貸せと手を伸ばしてくる。


「貸すも何も……お前のだろ?」


 俺は原田にパンツを差し出す。

 しかし、原田が「ありがとう!」とパンツに触れようとした瞬間にまたパンツはパタパタと空へと羽ばたいてしまった。


「あっ……」


 原田が残念そうに空を見上げる。


「おい逃げるなよ! そんなに俺に触られるのが嫌ならせめて殴ってくれよ! 出来れば往復で頼むよ!」


 さっぱり理解が追い付かない。原田、お前は何を言っているんだ。お前の性癖なんて俺は一生気付きたくなかったぞ。


「……なぁ原田……。頼むからそろそろ気付こう……これ、おかしいだろ……。まるで自分で飛んでるみたいじゃないか……」


「まるでって言うかどう見てもそうだろう」


「怖くねぇのかよ? これ超常現象だぞ?」


 怖くないのかなんて、何だか情けなくて聞きたくなかったがとうとう我慢が出来なくなって聞いてしまった。

 しかし原田はそれを聞いてもなんら自分のペースを崩す事はなかった。いやむしろエンジンが掛かってしまったんじゃないだろうか。


「はははっ、ただの三角の布を縫い合わせただけの女のパンツじゃないか、怖くなんかないよ。むしろ愛しい。ただの三角の布がむしろ愛しい。なんで飛んじゃってるんだろうこの子。はははっ! 不思議カワイイ~」


 ダメだ……もう原田に普通の感覚を求めるのは諦めよう。昔からちょっと頭のおかしな奴だったじゃないか。


「だけど残念ながらお前は愛しいパンツに嫌われてるらしい。しつこくしたら余計嫌われると思うからもうさっさと行こうぜ?」


「ううっ……お前ばっかり何でパンツにモテるんだよ」


「ああ、代われるなら代わってやりたい。ほら、行くぞ」


 仕方ない諦めるかと、ガッカリ顔の原田を促し俺はその場を離れる事を提案する。一体どんなカラクリなのか超常現象なのか、とにかく自分の常識を軽く飛び越えたこの現実から逃げ出したかった。


「あ~あ、せっかくパンツ拾えると思ったのになぁ……あれ? なぁ英彦? パンツ付いて来るぜ?」


「はぁ?!」


 反射的に後ろを振り返る。

 げっ! 本当だ!

 パンツがパタパタと俺達を追い掛けて来る!

 何だ? 怒ってるのか? 何かの化身か?


「走ろう原田!」


 俺は本気で怖くなってその場を駆け出したかったが、原田は全然走ろうとしなかった。置いて行くのはさすがに気が引けるので早くと腕を掴んで急かす。だが原田はそんな俺の気持ちを笑い飛ばすのだ。

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