ラーメンの具材が強過ぎる世界
グオオオオオッ!
巨大な洞窟の中。いかにも硬質な鱗の内側を赤黒く光らせ、巨大な龍が咆哮する。
巨龍が首を高く聳え立たせても余りあるほどの空間が、ビリビリと揺れた。
「姉さん! ここ…クリスティア鉱床ですよ…! 私アイリスも冒険者をして10年になりますが…こんなに大きいのは初めて見ましたよぉ!」
目をキラキラと輝かせ、生唾を飲み込めずに地に注いでいるアイリス。巨龍の咆哮よりも鉱床に目が眩むのは、商人の血筋によるものなのだろうか。
「だまらっしゃいアイリス! ようやく…ようやく私の目的に出会えたんだ…これで…これでようやくラーメンが…醤油ラーメンが作れる!!」
私は水門未来。独身OLの私はこの世に生を受けて28年、ラーメンにそのほとんどを捧げてきた。
「ミライ姉さん…アイツは無理ですって! クリスティアを採掘して逃げましょうよぉ!」
巨龍の喉元が鈍く赤く光り、口元に向かってゆっくりと移動していく。
「姉さん! ヤバイ! ヤバいってばぁ!」
と言いつつ鉱石を漁りながらも安全地帯を的確に見極め身を潜めるアイリス。さすが、リスク管理はお手のものだ。
アイリスに一瞥をくれていた間に、巨龍の口元から熱線が甲高い音を立てて放射され、洞窟の天井に突き刺さる、
「太古の洞窟に巣食い、鉱石を食する巨龍…ソイソシア・ブラックドラゴン…! その涙は透き通るような焦茶色で、芳醇な香りと旨みを含んだ濃厚な塩味…。 伝説通りならコイツの涙がこの世界の醤油なんだよぉ!」
鉛筆ほどの細さの熱線は、洞窟の壁を貫通し切り裂きながら、軌道がこちらへ向かって来る。
「姉さん! 危ないってばぁ!」
本当にそう思うなら鉱石を採掘する手を止めろ。そんなツッコミを飲み込んで、私は叫んだ。
「ナーベリア・フタルコス!」
眼前に魔法陣が眩く光り、私の身体を覆って余りあるほどの円形のシールドが展開される。
キィイイイイイ!
白銀のシールドに衝突した熱線は、激しく火花を散らして音を立てた。
「やっぱり姉さんの魔法はすごい…! 魔法は使用者の想いとイメージに相関して強くなる…。あの伝説の巨龍の熱線をものともしない防御魔法…。一体…ラーメンて何なの…!?」
私はシールドで熱線を防ぎながら、一歩また一歩と巨龍との距離を詰めていく。
「ラーメンオタクの耐火ステータス舐めんなよ…。アツアツラーメンを食べる為に、口の中までカンストしとるわい!」
距離を詰められた巨龍は後退し、ついに背後の鉱床に尾が触れた。
「いつまで熱線を吐き続けられるか…こりゃ忍耐勝負ですなぁ…。真冬の行列に並び続ける忍耐力、舐めんじゃねえぞぉ!」
巨龍の喉元の光が強くなり、次第にドス黒い煙を上げ始め、狼狽える巨龍。黒煙の影響か、その目はにわかに潤み始める。
「お前が泣くまで…私は迫るのをやめねぇ!!」
ーーーこれは、ラーメンオタクの私が、数ある世界のどの宇宙でも味わう事ができない、最高のラーメンを作る物語。




