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エンゲブラ的短編集

美男美女しか赦されない王族

作者: エンゲブラ

ズラリと並ぶ肖像画。

歴代、この国の王族には、美男美女しか存在しない。


肖像が、美化されているわけではない。

絵では、表しきれぬほどの美貌を持つ一族。


当然といえば、当然。

彼らは、()()()()()()の存在でもあるからだ。


初代の王は、聖女の恋人で、村長むらおさだった。

かつては不毛の辺境であったこの土地を、聖女とともに、豊饒ほうじょうの楽園へと変えた。


二代目は、女王だった。

魔王降臨による混乱に、終止符を打った勇者。

そんな彼と結婚した王女が、そのまま女王となった。


以降、飢饉や魔王の再臨に直面するたびに、時の王子や王女たちが、聖女や勇者に輿入れし、その伴侶として王となった。


聖女や勇者は、異世界召喚によって呼び出される。

彼らの多くは「容姿至上主義者」であったため、この国に繋ぎとめるのは、容易なことでもあった。



私は、捨て子である。

この国の王族に生まれながら、今は貧民街で生活している。


赤子の頃は、歴代でも屈指の美しい顔立ちをしていたらしい。

だが、三歳あたりから、容貌が崩れはじめ、今では街のどこにでもいる、平凡な見た目となっていた。


母は、この王国のミスコンで、三年連続で優勝するほどの美女であった。その容貌を買われ、王族入りした元・町娘だ。


私の美貌が崩れはじめた頃、母の立場も危うくなった。

美男子を生む才能がないのではないか、と内外から誹謗中傷を受けた。


しかし、弟が生まれ、順調に育ち始めたことにより、彼女の立場は安定し、私は晴れて、城外へと捨てられることになった。


次は「飢饉が訪れる順番」なので、召喚する聖女のために「美しい王子の準備」は絶対であった。



「ねえ、貴方ひょっとしてアーデルハイト?」


雨の中、うずくまっていた路地裏。

頭上から、猫なで声の女の声が聞こえた。


見上げると、歴代聖女が身にまとっていたローブを羽織る、見るからに異世界人の風貌(平たい顔)の女が立っていた。


「あー、やっぱり!ステータスに<呪いをかけられた元・王子>って、ビンゴだわ!」


「えっ、あっ……(呪いをかけられた、っていったい何だ?)」


「まあまあ、このくらいの<状態異常>。お姉さんにかかれば、ちょちょいのちょいなんだから。えーと、なんだっけ……そうそう、<ブレイク・カース>!」


―― バキ、ボキボキ。

顔面が、音を立てて、変形を始めた。

痛みはなかったが、自分の顔が別の生き物かのように、数瞬、暴れ続けた。


「ちょっ……うはー、まじか!ちょっとヤバすぎなんですけど♡ 弟君もヤバかったけど、これは段違いですわ(ハァハァ)」


聞けば、弟もかなり美男子であったが、ステータスに<この国で二番目の美男子>とあったため、この女は、必死に私を探して回っていたらしい。―― 「どうせ呪いかなんかで、あれなんでしょ?」と、王城の制止を振り切って。


「で、どうする? このまま、また城に戻る?」


「えっ……」


「お姉さん的には、この国のことなんてどうでもいいし、アンタに呪いをかけた犯人も知ってるんだけど、アンタはどうしたい?」


「え、あっ……はい?」


私に呪いをかけたのは、腹違いの姉の・ヒルデガルトであった。次が勇者の番ではなく、聖女の番であったため、彼女自身には直接の価値はなく、女王になれぬことに立腹しての、逆恨みであったという。


ヒルデガルトは、私の初恋の相手でもあった。

王族は、その美貌を保ち続けるため、腹違いや種違いであれば、美男美女と認められる者たちに限り、親族間の婚姻も認められていた。



―― 五年後、王国崩壊の報が、耳に飛び込んできた。

全土を覆う大飢饉の爆心地となり、ほとんどの人間が餓死したという。


私は聖女に従い、貧民街の者たちを数十名ほど連れ、帝国へと移り住み、村を作っていた。もちろん、皇帝からも聖女は歓迎され、私もまた歓待を受けた。


帝国でも、王国の消滅を受け、<今後の政策>として、皇族は美男美女を積極的にもうけていくことに決まった。


私は<種馬>として、聖女には内緒で、皇女たちを次々と抱き、子をなすこととなった。


聖女との間にも、子が生まれたが、彼女の血を色濃く受け継ぎ、平たい顔をしている。この子では、次の召喚勇者を繋ぎとめることもできないので、仕方のない話でもあった。


―― Fin.



主人公と聖女が最初に出会ったのは、主人公が12歳、聖女が30歳の頃の話である。


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― 新着の感想 ―
聖女以外の女性との間に内密の子を産んで、更に聖女との子をも産むとは、過去よりこれからの方が波乱万丈ですね いっその事、一夫多妻制の世の中にすれば平和におさまりそうです(年齢制限無しで)
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