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箱庭に花  作者: 時沢京子
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第五話「花の散る様」

 日毎膨らむ桜の蕾に急かされるように、季節は段々と春めいて参りました。

 弥生の初め、私は一人庭に出て桜の木の下におりました。桜はその散り様も大変に見事なものですから、私の心は早くも待ち遠しく躍っております。

 やはり花は愛されてこそ、その輝きを増すのでしょう。

 藤宮の庭の桜がどれほど誇れるものなのかは考えたこともありませんでしたが、祥助様が…良太郎さんが、それをご覧になったなら何とおっしゃるのか、思うたびに顔が緩むのでした。

 

*************************************



「椿お嬢様」

 ヨネはいつものように控え目に、しかし私がしかとこちらを振り向くように名を呼びます。そして桜の木から目をヨネへと向けますと、そっと私に右手を差し出すのでした。

「先日七枝屋のお若い方から預かりました。庭に落ちていたそうでございます」

「良太郎さんから?」

 私がのぞきこんだ先のその手には、日の光に輝く小さな貴金属が乗っています。見れば円形の細かな装飾が施された黄金の飾りで、外国の御召し物に似合いのものでした。藤宮家にはまだ外国の着物を好んで着る習慣がありませんでしたから、家の中の誰かのものかを考えると、心当たりは浮かんできませんでした。

 けれど私は何故かそれをよく見ていた気がしてならなかったのです。では小さな頃から知らず知らずの内に見ていたものかと問われるとそうではなく、つい最近、それも心疼くものを伴う思い出としては浮かんでくるのです。鼓動が早くなるような…呼吸が苦しくなるような、そんな甘く疼く心の痛み。

 そして私ははっとしたのです。

「…祥助様だわ」

 常日頃顔を上げられないばかりに、私は祥助様の胸元をいつも見遣っておりました。その焦点の先にあったもの、それこそヨネの手の内にあるものだったのです。

 先日お越しになった際に落としてしまったのでしょう。この飾りがただの装身具なのか、それともお勤めに必要なものなのかは分かりませんが、とても貴重な輝きにすぐに届けるべきと察しました。

「ヨネ、私これを届けに行こうと思います。貴女も来て下さらない?」

「言わずもがなでございます」

 ヨネは私に手の内の飾りを渡しますと、伊集院の家を調べに母屋へ戻って行きました。

 私は手渡された飾りを握りしめて、今一度祥助様のことが分かるかと思うと人知れず微笑みました。いつも祥助様の方からいらしていたものを、この度は私から参上したなら、どのように迎えてくださるのでしょうか。また思いがけず嫁ぐ前に家を拝見できるなど、有り難いことこの上ありません。あわよくば御母堂様にお会いして、そのご機嫌をお伺いしたいものです。

 けれど、そう折よくお会いできますでしょうか?

 御母堂様もさることながら、祥助様にお会いできる確証もないのです。せめて私が参ったのだとお伝えしたい…、そう思い立って私は庭の椿の木の前に進みました。

 弥生になって椿の花は全て枯れ落ちてしまいました。奥ゆかしい紅の花びら一枚でもお持ちできればと思ったのですが、もはやそれすらも見当たりません。そこで私は蕾のままとうとう咲かなかった椿の枝を、そっと静かに手折りました。この特有の丸い蕾をご覧になったなら、椿の枝と分かってくださるでしょう。

「お嬢様、準備整いましてございます」

 ヨネはその手に私の道行を携えて戻って参りました。

「ありがとう。それで、祥助様の御家は分かって?」

「はい、さほど遠いものではございませんでしたが、車をご用意いたしましょうか?」

「そうね…けれどこんなにいいお天気なのですもの。折角ですから、ゆっくり歩きたいと思いますわ」

「では道々お供いたします」

 ヨネは頭を垂れて、私に道行を恭しく差し出しました。私はそれを身に纏いますと、ヨネを連れて裏口から外へ出たのでした。



************************************


 

 伊集院家は藤宮家のある町と、その隣町の狭間にありました。幾分距離はありましたが歩けるものではありましたし、この暖かな気候に足取りも軽く感じられました。

 小鳥は囀り、桜を始めとする草花はどんどんと蕾を膨らませています。人ならずとも皆、春が待ち遠しくて仕方がないのです。

 伊集院家に向かう道程は、私にとって初めて歩くものでしたから、私はつい辺りを見渡しながら歩いておりました。小春に見知らぬ道を行くのは、なんと心躍ることでしょう。それが外ならぬ祥助様へと続くものなのですから、私は一人顔を綻ばせるばかりでした。今日こそはきっと落ち着いて祥助様にお会いできる…、そんな予感がまた嬉しさに拍車をかけるのでした。

「お嬢様、こちらの御家でございます」

 半刻ほど歩いたところで、ヨネは長く続いた垣根の切れ目を指し示しました。そこは我が家と同じほどに広いものでしたが、雰囲気はまるで違うものに感じられました。

 質実剛健な垣根、そして庭。母屋はどっしりと構えて、動かざる様子は山のようにも思えます。門扉は過敏なほどに頑丈に造られていて、我が家が庭園なら伊集院家は砦のようにも見えました。

 先程までの私の躍る心は、途端に足を止めてしまいます。その厳格なる様は、誰をも引き入れぬ強いものを感じさせるのです。

「怖じることはありません、お嬢様。どれ、このヨネが扉を開いて見せましょう」

 ヨネは私の心持ちを読み取って、数歩前に歩み出ました。そして重ねた年の功で堅く閉ざされた門の向こうへ、「お頼み申し上げまする」と声をかけました。

「…へい、どちら様でございましょう?」

 するとややあっておもむろに通用口が開いて、見覚えのある小男が顔を出しました。初めて祥助様にお会いした時に、呼びにいらしたあの方です。相変わらず腰が低く前屈み気味な立ち居振る舞いに、禿頭がより印象に残ります。

「おや、藤宮のお嬢様で?」

 小男は私を見ると即座に言い当てました。私がヨネに何でも話したくなるように、祥助様もこの方に色々お話しになるのでしょう。私はその一言に小さく安堵の溜め息をつきました。

 私の名をお呼びになったその一言だけで、この厳格な雰囲気の中に受け入れていただけたのだと、どこか安心したのです。

「先日拙宅で祥助様の落とし物を拾いましたので、お届けに上がりました」

 そういって右手を開いて黄金の飾りを示しました。

「おぉ…これは確かに坊ちゃまのもの。どこぞで落としたかと探しておいででした。まして貴女がお拾いになっていたと分かったら、さぞお喜びになりましょう。さ、お入りくだされ。私が話をつけましょうぞ。お嬢様が直接坊ちゃまにお渡しになってくだせえ」

 小男は嬉しそうに手招きをして、私とヨネを庭へと入れてくれました。私の胸は未だ動悸を感じていましたが、どこか高揚した気分でした。

 今いる場所が祥助様の生まれ育ったところなのだと思うと、私もそんな中に入れたような気がして、早くも私が種となって新たな庭に来ることが出来たのだと、先走った気持ちになっていたのです。

「この辺りでお待ちくだせえ。母屋にいらっしゃるはずですから、お声掛けして参ります」

 小男はそう言い残しますと、私とヨネを庭にひとまず残して、腰の低いまま屋内へ入っていきました。

 春風がどこか遠くの花の香りと、伊集院家の庭の緑の香りを混ぜ合わせて運んできます。常日頃藤宮の花々の咲く庭を見慣れていましたから、このように雄々しい庭がとても新鮮に思われました。たとえ胸が躍っていてもその場で背筋を伸ばしていないといけないような、そんな緊張を心に落とす…庭はまるで直立不動のまま私達を取り囲むようです。

 私の心臓はとくとくと程よい強さを持って高鳴っておりました。そして拾い物を渡した時の祥助様を思い浮かべると、早くお会いしたい気持ちで満たされていったのでした。

 

「どうぞお考え直しあそばして、祥助さん」

 不意に母屋の幾分距離を置いた離れから、女性の声が聞こえて参りました。感情的になっていましたが、どうやら祥助様の御母堂様のようです。

 私とヨネは互いに目を見合わせて、いけないと思いつつも耳をそばだてました。

「何故なのです、母上」

 次いで祥助様のお声が聞こえてまいります。小男は祥助様が母屋にいると申していましたが、実のところはこの離れにいらっしゃるようです。

「母にはこのご縁が良いものにはとても思えません。まだ結納も済ましてません故、お断り申し上げることができるはずです」

「お言葉ですが母上、私にはご縁をお断りする理由がないように思われます。母上もあれほど待ち望んでいらした話ではありませんか。それを何故今更…」

「あぁ…この母の心を分かって頂戴、祥助さん」

 御母堂様のお声は途端に悲痛なものになりました。もはやお二人のお話が、間違うことなく私のことであるのは明白です。それも不穏なものであることは火を見るより明らかで、私はその場から一歩も歩くことができませんでした。

「あの娘御、名を〝椿〟と申すではありませんか。なんと不吉な…。伊集院家には昔から、椿の花だけは庭に植えないしきたりなのです。それなのに貴方があの娘御と一緒になって、その身に何か起きるのではないかと思うと、母は居ても立ってもいられないのです。もしものことがあろうものなら、私はあの娘御を怨むほかないのですもの…!」

「そんな…それはただの言葉の綾に過ぎません!いかなる御名前であろうと、あの方が立派な藤宮の娘であることに代わりはないではありませんか?!」

「私だって…私だって!あの娘御がもし違う名であったなら、結婚を心から喜べたのです!それが何故あんな…」

 御母堂様はそれっきり、声をあげて泣き出してしまいました。歯を食いしばるような呻きと、悲鳴にも似た嗚咽を伴う鳴き声が、離れから嫌でも聞こえてまいります。

 何も知らぬ者がそのお声だけを聞いたならば、幼子を亡くした母が悲しみに発狂したのではないかとすら思うでしょう。そしてそのように泣く母がどんなに憐れかと。

 けれど今この憐みの根源は他ならぬ私なのです。

 あぁ、なんと根拠なき罪悪感の募ること。

 しかしその時の私はというと呆然と何も考えることができず、ヨネが気遣って「お嬢様…」と呼び掛けたことにさえ気付きませんでした。一瞬のうちに私の脳裏を駆け巡ったのは、先日の見合いの時のことでした。あの席で御母堂様が一人乗り気でなかったのは、私が粗相を犯したからではなかったのです。いえ、いっそのことそうであったなら、どんなにか良かったことでしょう。〝椿〟という実母から頂いた名前の時点で、御母堂様とは縁遠いものだったのです。よしんば祥助様とご一緒になれたところで、ゆくゆくは御姑様になる御母堂様は辛い思いをするばかり。お嘆きになるのを知っていて、どうして一緒になることができましょう。

 ここに来るまであれほど高揚していた私の心は、今はすっかり凍り付いてしまいました。そして御母堂様のお言葉が頭の中で繰り返されるたび、私の心に刃が深く突き刺さるのでした。

「坊ちゃま…!」

 御母堂様のお声を聞きつけて離れに飛び込んでいった小男の声に、私ははっとしました。それと同時にこの場にいてはいけないと思い立って、離れの縁側に黄金の飾りを置きました。

 携えてきた椿の蕾は、添えることができませんでした。

 御母堂様のお言葉に、この伊集院家の庭に持ち込んではならぬものと思ったのです。そして私は小走りに、逃げるように伊集院家を後にしました。次に祥助様にお会いする時には、まるで何も聞かなかったかのように振る舞わなければと、冷たくなった心でそう思いながら、ひたすら走りました。

 その背後で小男に私の来訪を聞いた祥助様が、慌てて離れから飛び出していらしたことは、とうとう知らないままだったのです。

 

 

 椿は花びらを一枚一枚落とすことなく、花ごと根本からぽとりと枯れ落ちます。その様が首斬りに見えることから、武家の間では大変に忌避されてきました。

 伊集院家は元々生粋の武家の血筋でしたし、御母堂様の旧家も同じように武家であったに違いありません。お小さい頃から椿が不吉であると言われてお育ちになったのでしょう。弁解の余地もないほどに椿の花を嫌う御母堂様のご様子に、私は俯いてトボトボと来た道を帰っておりました。

 ほんの半刻前には空を見上げて桜の咲きそうな様子を愛で、囁きかける小鳥の囀りを楽しんでおりましたのに、今目に映るのはぼやけた自分の足元で、耳に聞こえるのは繰り返される御母堂様のお声だけでした。ヨネは何も言わず、そんな私の後を静かについてまいります。

 〝結婚は女の幸せであれ〟…そう口癖のように申してきたヨネにとっても、何も言葉にならないのでしょう。私は胸元に持った椿の蕾を見遣りました。

 季節を終えて尚、花を咲かせなかった遅咲きの椿。

 花を咲かせる幸せも知らないままに、また長い眠りについてしまった夢見の蕾は、その深緑の殻の中で何を思っているのでしょう。

 私にはその小さな蕾が、今後の自分を示唆しているように思えてなりませんでした。

「…私…桜が羨ましいです」

 私はふと咲きかけの桜を見上げて、誰にともなく呟きました。

 桜は一斉に薄紅色の花をたわわに咲かせ、そして潔く散っていく様が見事だと、誰もが口を揃えて称賛するのです。武家にとっても商家にとっても、美しく縁起の良い花。もし私が〝桜〟という名前だったなら、御母堂様は私を受け入れて下さったのでしょうか。

 けれど所詮は椿、暖かな春にまみえぬ冬の花。

 寒空の下でいくら懸命に咲いたところで、首をぽとりと落としては、桜にはどうあがいても敵わない…想いが届くこともないのでしょう。

 私の目にはじわりと涙が滲んでまいりました。

 

「あれ?椿お嬢さん?」

 不意に私を呼ぶ声が耳に入り込んで来て、私は顔を上げました。

 するとそこにはいつもの七枝屋の羽織りを脱いで、ゆったりとした袴姿の良太郎さんがいらっしゃいました。片手に小ぶりの風呂敷を下げて、どこからかのお帰りのようでした。そのお顔にきょとんとした表情を浮かべて立っておいでだったのです。

「…どうかしたんですかい?」

 良太郎さんにそう尋ねられて、私は咄嗟に顔を背けてしまいました。涙を堪えて顔のあちこちが真っ赤になっているのが分かったのです。私は初めて良太郎さんと話すときに目を合わせることが出来まず、ただその足元を見るばかりです。

 すると良太郎さんも何か察するところがあったのでしょう。足元だけでも一呼吸置いて思考を巡らせているのが分かります。

「…遅咲きの椿ですか?」

 ややあって良太郎さんは趣旨の異なる質問をなさいました。

「い、いいえ…これはもう…」

 〝咲かないのかもしれません〟と、私は自らの見解をどうしても繋げることが出来ませんでした。その一言がすべてを決定づけてしまうように思えて仕方がなかったのです。

 しかしそれがますます自分を惨めに思わせて、とうとう私の目から涙が零れました。人前で、しかも外出先で涙するなど以っての外。立ち居振る舞いは美しく、健気で気が利き、如何なることにも取り乱さない…それが由緒ある藤宮の娘であるといわれてきました。

 けれどそうは言っても涙はとどまることを知りません。堪えようとすればするほどに情けなく、見る間に零れた涙が手を濡らしていきました。

 どうして…どうして…、と心が自問自答を繰り返します。

 何故椿という名前だったのでしょう。

 何故祥助様が武家のお家柄だったのでしょう。

 何故見合いのお話が舞い込んだのでしょう。

 枯れることを知っているなら咲かずにいればいいものを、何故短い命で花は咲き誇ろうとするのでしょう。

 蕾のままなら夢を見ながら、傷つくこともなかったのに…。

 

 私は声を押し殺して泣きました。いつもなら私を窘めるヨネも、ただ口を閉ざすばかりです。私にはもう何もかもダメになってしまったように思えてなりませんでした。花には何の罪もないのに、椿すら憎く思えてしまうのです。

「…遅咲きの花は綺麗に咲くといいます」

 良太郎さんはそんな私を前にして尚、柔和な落ち着いた声で「何故だか分かりますか」と続けました。無論私は返答できず、ただ控え目に良太郎さんを見遣ります。

「それは蕾の中に秘めたものが沢山あるからなんでさ。だから咲いた時、他のどの花よりも綺麗なんです」

 そして一呼吸置いて、またニッコリと微笑んで「その椿も咲きますよ」とおっしゃいました。

「けれど…椿の季節は終わってしまいました…」

 冬は明けて今は春、意固地になっていた私はつい良太郎さんの言葉を自嘲的に否定してしまいました。彼が心から慰めて下さっているのを知っていて、それでも受け入れられなかったのです。

 もう良いのです…もう咲かないままでも。

 咲いた後の散る様を、あれほど忌み嫌われるものならば、この丸い蕾のまま庭に慎んでいるべきだったのです。

 身の程を知らされた気分でした。もとより私のような甘い考えで、伊集院家に嫁いではならないものに違いなかったのでしょう。

 そう思うと、自嘲の笑みさえ私の口元から消えました。涙はまたポロポロと静かにこぼれます。

「でも、椿は木編に春と書くでしょう?」

 良太郎さんは私の涙を前にしてなお、とても落ち着いた柔和な声で仰いました。そんなお声でなければ、今の私の心には聞こえてはこなかったかもしれません。

 私は涙眼を少し開けて、良太郎さんのお声に耳を傾けました。

「だから本当は椿は春の花なんです。いや…椿が咲く頃が本当の春なのかな?そう思うといつ椿が咲いたっておかしくはないと思うんでさ」

 そこまで一息に言い切ると、良太郎さんは私に歩み寄りました。

「その枝、僕にくれませんか?」

「…え…?」

 良太郎さんの唐突な申し出に、私は涙で顔が汚れているのも忘れて顔をあげ、つい呆気にとられてしまいました。良太郎さんはいつもと変わらず茶色い髪を自由に風になびかせて、私に微笑みかけています。そしてそれ以上ねだるでもなく強要するでもなく、ただ私の言葉を待っているのです。

 私はその真っすぐな瞳に、言われるがままそっと椿の枝を差し出しました。良太郎さんを信じているはずですのに、小刻みに震える指先は、椿の開花を諦めていることを示唆しているものでした。

「大丈夫ですよ」

 椿の枝を受け取って、それを優しく撫でるようにすると、良太郎さんは柔らかな声で囁きました。

「藤宮の椿の花が綺麗に咲かないわけがないんでさ。この椿もきっと咲きます」

 そしてまた優しく微笑みかける良太郎さん。

 私はそのお言葉に何もかもが救われた思いが致しました。私の背中を後押ししてくださった暖かさに、凍てつくようだった心は溶かされて、私はまるで子供のように溢れる涙を拭うばかりだったのです。

 


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