憑依
僕、影倉純弥は存在感が希薄だ。
何をしていても周りに気付かれることは無い。
「あの子と話したいんだけどな」
クラスの人気者と話したいんだ。なぜ話したいのかは言わなくても分かるだろう。
僕は彼女に惚れてしまった。
クラスで1番可愛い女子・相澤沙耶。
彼女は男女問わず平等に接していて明るく優しいためそんな所に惹かれていった。
好きになった理由は他にもあるがそれはを話すのはまた別の機会にしよう。
「純弥!明日からまた学校なんだから早く寝なさいよ!」
「分かったよ!」
母にそう返事をしてから僕は寝ることにした。
「まったく、休日明けだから起きれるといいんだけど」
母の心配など知らずに眠りに入る。
***
「樺恋!起きなさい!」
「分かった!」
「ん、待てよ。今、もしかして樺恋って言ってなかったか?」
「樺恋!早く起きないと遅刻するわよ!」
「やっぱり聞き間違いじゃない。樺恋と呼んでいる」
深呼吸した後で落ち着いて状況を整理する。
「僕は樺恋なんかじゃなくて純弥」
起きてからやけに頭も重いし肌も白い。
見知らぬ部屋を見回すと鏡があったため自分の容姿を確認する。
「これは...胡桃樺恋の身体」
(見・・・・で)
状況を呑み込めた頃、頭の中で声が聞こえる。
「今、声が聞けえたような」
(見ないでっていってるのよ!)
「誰だ!?」
(樺恋よ!)
「なんだ、樺恋さんか……て、どうなってるの!?」
(それはこっちのセリフ。なんであんたみたいな陰キャが私の身体の主導権握ってんのよ)
「僕だって知らないよ!朝起きたらこうなってたんだ」
(ま、どうでもいいけど)
「どうでもいい?」
(私、最近ウンザリしてたのよ。学校なんて行きたくなかったし)
「二大美少女もそんなこと言うんだね」
(二大美少女なんかじゃない。私は普通の女子高生よ)
「確かに、そうだね」
(遅刻するわよ。早く着替えなさい)
「僕は気にしないけど、樺恋さんはいいの?」
(なにがよ?)
「いや、下着とか見ることになるから」
(目をつぶって着替えなさい!)
「そんな無茶な」
(あと、樺恋でいいわよ)
「いいの?」
(あなた、私の身体で私の友達にさん付けで呼ぶの?)
「呼び捨てしていいのかな?」
(気にしなくていいわよ)
「分かったよ樺恋」
僕いや、私は制服に着替えてリビングに降りる。
「やっと起きてきたわね。樺恋」
呆れた声で話しかけてくる母に「おはよう!ママ」と伝えると「おはよう。早くご飯食べなさい」と言われた。
洗面所で顔を洗ってからリビングのテーブルに座ると既に朝食が用意されていた。
「いただきます」
樺恋の家の料理、豪華だな。
普通、こんな豪華な食事じゃないはず。
ほとんどの家庭がカップラーメンかスーパーで買ったお惣菜や冷凍食品なはず。
「美味しい」
「樺恋、熱でもあるの?」
「なんで?」
「樺恋、美味しいなんて滅多に言わないじゃない」
「言わないだけで常に美味しいと思ってるよ」
「樺恋・・・」
「ご馳走様。行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
私は母に見送られて学校へ向かう。




