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第六話「終末世界」

 

 


 世界はすでに死んでいた。

 大地は無数の超新星を宿した淡い氷のように煌めいている。


 頭上を彩る無数の星星は、暗い夜空を背景に、地球の神秘を詰めた輝きを放っていた。


 だが目をよく凝らせば星星は蠢き、暗黒の空は波打っている。


 大地もまた、揺れ動いていた。美しく根をはって輝きを詰めた青白い花々は不規則に動いていた。

 まるで自我があるかのように。


 (俺は廊下で倒れたはず、一体どこだ、ここは。)


 星も大地も花々も、全てが煌めいて、その輝きはどこか神聖さすら感じさせた。


 そんな光が集中している星星の河が、暗い夜空を流れていた。その光の河はずっと奥の地平線まで途切れることなく続いている。


 (夢なのかこの世界は。明晰夢だっけ、自我のある夢。夢だからなんでもできるよな。)


 (日々のストレスを発散するか。)


 俺はそんな神々しい夢の世界で縦横無尽に走り回った。体が軽い。一度飛び跳ねれば、想像の何倍も飛び上がることができる。


 (なんか楽しいな。夢だし、何してもいいよな。)


 青白い花を握りつぶした。グシャリと、氷の結晶を握りつぶした時のように簡単につぶれる。


 一つ、二つ、三つ、四つ。


 気づけばあたりの花々はみんな壊れて、泣いていた。


 花々が叫んで俺の鼓膜を襲った。


 「ギギッギギッッッッッッアアアア。」


 悲痛な叫び。まるで人の声のような響き。


 俺は辺りを見渡した。けれど人影は見当たらない。


 (空耳か。まあ夢だし、楽しいからいいかな。)


 五つ、六つ、七つ。


 花を握りつぶすことに飽きた俺は、今度は飛び跳ねて星を襲った。


 飛び上がって、空を滑空しながら夜空に散らばる星を噛み砕く。


 ガザリと、星々は口の中で音を立てて崩れた。氷の結晶のようなざらざらとした舌触りは、俺を惹きつけた。


 夢中になって星々の輝きを食い荒らす。


 一つ、二つ、三つ、四つ。


 気づけば、あたりで煌めいていた星たちは消え失せていた。俺の腹の中で、星々は心の底から叫んだ。



 「ギッギッギギッッッッッッギャアアアアア。」


 (さっきからなんなんだよ。幻聴にしてもタチが悪いぞ。)


 「次は何で遊ぼうかな。」


 地上に飛び降りた俺は周辺を観察する。壊された花々に、齧られた星々。そこに最初の神々しさはなかった。ただ不快で残酷な風景であった。


 俺は一体何をしているのか、自分でもわからなかった。

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