表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

賢者

「魔法………生成………」

「はい!『魔法生成』です!」


 いや、うん、なんとなくすごいことは分かるんだけど。多分すごすぎてピンときてないというか………。なんとなく鈴村さんの方を見ると


「?????」


 なんとも表現に困る顔をしながら、首をかしげていた。


「あの、それは一体どんな能力になるのでしょうか………?」

「言葉の通りです!魔法を生み出せます!」

「あの、それは分かるんですけど、どんな感じでなんでしょうか?」

「あ、そうですね。例えがないと、分かりにくいですよね。ちょっと待っていてください」


 するとハンナさんは、自分のもってきた鞄の中をあさり始めた。そして、かなりの厚さの本が出てきた。


「この世界には、魔法書というものがあります。これには、魔法を発動させるためのテキストが書いてあって、それを詠唱すると発動できるんです」

「「へえ」」

「そして、この魔法書は、『賢者』の方にしか、書けないんです」

「………なるほど」


 なんとなく分かった。分かったんだが、分かると、この『賢者』というスキルがいかにとんでもないスキルかがぞわぞわと理解できる。


「それは、『賢者』にしか魔法が作れないからですか?」

「その通りです!」


 ハンナさんが、ビシッと僕を指さして言った。そんなに嬉しかったのだろうか。


「この世界に流通する魔法や魔法書は、全て歴代の『賢者』の皆様が作ってきたものなのです」

「ええ!?それじゃあ、青木くんはもしかしたらその歴代の『賢者』に名を連ねかもしれないってこと!?」

「そうなんです!」

「すごいじゃん青木くん!!」

「それは、鈴村さんもそうでしょ?」

「そんなの比にならないって!だって私が使える魔法も昔の『賢者』の人が作ったんでしょ?じゃあ青木くんの方がすごいよ!」

「あ、うん、ありがとう」


 まるで自分のことのように喜ぶ鈴村さん。これが、みんなに人気な理由だろうな。


「そして、魔法を生み出すためには、『賢者』の方が魔法紙にテキストを記すことで初めて成立するんです」

「なるほど………」

「………って言っても分からないですよね。私も『賢者』の方を鑑定したのは初めてなのでちょっと説明が難しいんですよね。う~んどう説明すればいいのかなぁ」


 ハンナさんが頭を抱えていると、今まで黙っていた王が急に話し始めた。


「私の友人に『賢者』の者がいる。話は通しておくから、あとで話を聞きに行くといい」

「あ、ありがとうございます」


 急な提案に驚いたが、先輩の『賢者』の話を聞けることは嬉しい。


「そして、『賢者』にはあと2つ、ちょっとした能力があるんです」

「まだあるんですか?」

「はい。といっても補助的なものですが。まず、1つ目が、必要魔力の減少です」

「必要魔力ですか」

「はい。魔法の発動には、魔力を使用します。魔力が少なくなると、魔法の力が弱まったり、発動できなかったりしてしまいます。そして、『賢者』はその魔法の発動の時に必要になる魔力が、他のスキルの方より少なくできるんです」

「なるほど」


 鈴村さんは、元々の魔力量でカバーしていたが、僕の場合はその消費量を抑えるというタイプということか。


「そして2つ目は魔法の無詠唱発動です。これは、言葉の通りで『賢者』は魔法を詠唱しなくても発動できるんです。なんでも頭の中でのイメージが他の人より、より鮮明にできるからだとか」


 無詠唱発動というのは、使いようによっては便利かもしれない。例えば、咄嗟に身を守らなければならない時、悠長に詠唱なんてしていれば、間に合わない可能性がある。そういう時には、すぐに発動できた方がいい。


「なるほど、分かりました」

「良かったです。これで、スキルの説明は終わりになります」


 僕たち2人は、スタートの時点でかなり優位な場所に立つことができた。あとは、いかにしてこの能力を使いこなせることができるかだ。


「青木くん、一緒に頑張ろうね!」

「うん、頑張ろう」


 鈴村さんは、相も変らぬ笑顔で僕にそう言ってきた。ついさっきまで戸惑っていた様子が嘘のような顔だった。


 急に異世界転移なんていうラノベみたいな事態になったけど、思ったより大丈夫そうだし、なにより楽しそうだ。この世界には僕の知らないことであふれている。せっかくだから、この世界のあらゆることを知り尽くしてやろう。




 そんなことを、あの時の僕は考えていた。でも、この後僕に待っていたのは、知りたくもなかった事実と、残酷な運命だった。






「おーしホームルーム始めるぞー。ん?青木と鈴村がいないなんて珍しいな。皆何か知らないか?」

「しらないでーす」

「あれぇおっかしいな?先生ちょっと職員室戻って聞いてくるわ」

「でも確かに珍しいよな。成績優秀な2人が休みとか」

「でも荷物あるよ」

「え、じゃあ学校いるじゃん」

「青木はともかく、鈴村さんがいないのはやだなぁ」

「………ん?なんか床光ってね?」

「あ、ほんとだ。てか、どんどん強くなってるぞ!」

「なになになに!?」

「うわああああああああああああああ!!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ