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令と和と  作者: 若松ユウ
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■後編:令一の日記

・令月二十三日水曜日。

僕が生まれた令和時代から、昭和時代へのタイムリープに成功した。

この時代の医師の中から、僕の研究に最適な環境を備えた家に、一人息子として潜入した。

明日には、研究活動の傍ら、転入生としてこの時代の高校へ通う手筈も整える。


・令月二十四日木曜日。

午前中に書面での手続きを終え、午後には高校の授業に参加した。

正直、四十五人を一人の教員が束ねるのは無理があると思った。

だって、明らかに配慮が行き届いていない生徒が一人いるんだもの。


・令月二十五日金曜日。

古典の時間に『万葉集』のうたが登場した。

まさか、この歌集の中にある梅花のうた、三十二首の序文にある「初春の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)()(ひら)き、蘭は珮後(はいご)(こう)を薫らす」が、のちの元号になろうとは、教壇に立つ福島先生でさえ、夢にも思わないことだろう。

余談だが、僕の名前である「令一」は、元号である令和から一文字拝借して付けられたものだ。


・令月二十六日土曜日。

偶然を装い、二十四日に目を付けていたダイヤの原石に接触した。

思った通り、メガネが無い方が何倍も魅力的に見える。

あとは、僕の研究成果を試すだけだ。


・令月二十七日日曜日。

この時代の眼科の設備を改良し、少女の裸眼視力を測定した。

僕の生まれた時代なら、レーザーで水晶体にメスを入れることも視野に入れるところだけど、あいにく、この時代で手術を行うのは困難だから、当初の予定通り、水の表面張力を利用して角膜にレンズを貼り付ける方法を取ることにする。

この時代にもコンタクトレンズはあるけど、僕の試作レンズは、それより遥かに優れていると自負している。


・令月二十八日月曜日。

驚かせようと、コンタクトを無くしたフリをして、わざとメガネを掛けて行ったら、逆に驚かされた。

この時代、髪は女の命と言われていると聞いていたから、思い切った決断であることには間違いない。

どうやらメガネからコンタクトに替えるだけで、内面まで変わってしまったらしい。予想外だ。


・令月二十九日火曜日。

一週間で帰るつもりだったけど、しばらく延期することにする。

次の研究課題が浮上してきたし、キリが悪いからね。

さよならは、春休みまで取っておくことにしよう。

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