スペース・ミステリアスー宇宙の不思議ー
時は、2030年―
地球では地球以外に住む生命体~宇宙人~と交流を持つべく、宇宙人にむけて呼び掛けの電波を送り続けた。
地球の文明は約20年間の内に大きく躍進し、今では電波だけなら約900兆光年先までの宇宙全体にむけて、すぐに発信することができる。
この時代の電波は、光速よりも遥かに速くなっていたのだ。
そして2030年9月3日、ついに地球へ向けて、地球からの呼び掛けの電波を受け取った宇宙人からの返事の電波が送られてきた。
その電波はどこから来たものかも分からなかったが、なんと日本語でのメッセージとなっていた。
地球から送った電波は日本から日本語で送っていたため、宇宙人は日本語を解読してくれたのだろう。
そして、わざわざ日本語に直してメッセージを送ってくれた。
「我々は金河系光明星に住んでいるものだ。我々は今、最大の危機に面している。
その危機とは、温暖化という宇宙現象である。
今、宇宙・金河系はすごく暑くなってきている。
その影響は我々の星にも現れ、星の氷がどんどん溶け海面が上昇し、今ではもう光明星のほとんどの国が海に沈んでしまった。
これでは我々の絶滅も、もはや時間の問題。
我々は受け取った電波の発信原を、特定することにした。
だから、あなた達のすむ地球の位置も分かる。
我々の文明をもってすれば、行けない距離ではない。
どうか、我々を地球の方へ移星する権利を頂けないだろうか。
こちらの文明はおそらく、地球よりも発達している。
地球にとって悪いようにはしない。約束する。
これは、こちらにとってもある種の賭けではあるが、今現在我々に残された唯一の希望なのだ。
危機ゆえ、なるべく早く返事を頂きたい。」
このメッセージを聞き、日本総理大臣は不気味に笑った。
そして周りの者たちに言った。
「フハッ、ハハハハ。これで日本の文明はさらに進化するかもしれない。
まぁ、光明星のレベルがどんなもんか知らんが、少なくとも奴らは地球の位置を特定し、さらにはここまで来れると言っている。
それが本当なら、素晴らしいことだ。
その文明を我々日本が独占し、世界との差をさらに広げてやろうではないか。
それにしても我々も依然として温暖化には苦しめられているが、宇宙が温暖化することもあるのだな。
ハハハハッ。
まぁ我々には好都合だ。
相手の欲求に答えてやろう。
なに、暑いのが嫌いなら北極にでも住ましてやろうじゃないか。
とにかく宇宙情報班、直ちにこちらに避難するよう、助けのメッセージをくれてやりなさい。
我々は光明星とやらの位置は分からないが、もう一度宇宙全体に発信すればよかろう。」
こうして、さらにその後いくつかのメッセージのやりとりがあり、宇宙人は1年後に地球に到着することとなった。
またこのことは、世界にも日本国民にも、知らされることはなかった。
なにせ、混乱を招く。
日本総理は心を躍らせた。
「どんな文明が存在するのか。どんな乗り物でやってくるのか。」
無論、このことに反対の大臣も多数いた。
「宇宙人に侵略されるのではないか。」
そして、宇宙人に対する、いろいろな対策もなされた。
いろいろな、といっても、その全ては宇宙人への攻撃兵器であった。
万が一のときは、それで宇宙人を滅するのだ。
宇宙人になにが効果的か分からかったため、多彩な種類の攻撃方法が用意された。
爆撃系、物理系、レーザー系、呪文系。
中には、冷凍ビームなんていう氷タイプの兵器も作られた。
こうして1年が過ぎた。
「もうすぐ地球に到達する。」
宇宙人からのメッセージが来た。
総理大臣は驚いた。
地球近辺の宇宙は全てレーダーで見張っているため、宇宙人が近づこうものなら、一発で分かるはずである。
しかし、レーダーに反応はない。
やつらのスピードは私達の想像を遥かにこえる速さだということか。だから、例え今レーダーに写らない距離にいたとしても、そこからすぐに来れるというのだろうか。
総理は今さらになり恐怖を覚えた。
そして、ようやく気が着いた。
相手がそんなに速いのなら、こちらがいくら兵器を用意しようが無駄だった。
まず、当てることすら出来ない。
地球が……侵略される。
さらに宇宙人からメッセージが届いた。
「たった今、地球に到着した。」
総理は唖然としている。
状況が飲み込めない。
地球には、何の変化もない。
やつら、地球とは間違って、他の星に行ったのではないか。
やがてそういう考えに達した。
しかし、宇宙人から更なるメッセージが来た。
「お前たちのいう地球とは、我々でいう宇宙のことだったんだな。
この宇宙に住む魔物どもめ。
お前たちのせいで、ここ数百年間で宇宙は随分壊された。
宇宙温暖化もお前たちのせいだ。
今、地球という我々が想像していたような星はないとわかった以上、我々に残された道は一つとなった。
それは、宇宙を元に戻すこと。つまり宇宙回復だ。
それにはまず、お前たちを全滅させるしかない。
何年かかるかも分からないが、お前達には死んでもらおう。」
総理はことの真相を、ようやく理解した。
やつらは、宇宙人なんかじゃなかった。
敢えていうならやつらも地球人、つまり地球上生命体だ。
恐らく、地球の中に、さらに小さな星があったんだ。
その星はとても小さな星。
私達からすれば目にも見えない極小の星。
だから私達は気付かなかった。
それなら、やつらでいう宇宙は、地球ということになる。
宇宙温暖化=地球温暖化ということだ。
やつらはミクロの世界の生命体だったんだ。
なんということ…
そんなことが……。
それから間もなく、日本東京をはじめとして原因不明の死者が続出した。
恐らく、やつらだろう。
やつらの文明は発達しているといった。
私達には確認出来ないが、やつらの攻撃だ。
いうなれば【ミクロ攻撃】
まさに最強だ。
毒を体内にいれて殺すのか、何をしているのか知らない。
でも、とにかく死ぬ。
私達からすれば、何も分からずに死んでしまうのだ。
総理は自分が死ぬ前にすこしだけ考えを巡らせた。
もしかしたら、私達の宇宙の外にも、別の星があるのかもしれないな。
その星からすれば、私達の地球がミクロの世界で。
そういうループも、なかなかおもしろい。
もしそうだとしたら、私達の宇宙人は、すごく環境にやさしいのかもしれない。
宇宙温暖化なんて、起こっていないんだから。
人間とは、恐ろしい生き物だ。
おもしろい反面、すごく恐ろしいのだ。
―2080年。
人間は絶滅した。
一方、光明星。
危機は救われた。
それから年月が過ぎる度に、宇宙は回復し、緑豊かになった。
気温も元通り下がり、最近では非常に暮らしやすくなっている。
光明星は至って、平和である。
平和。
光明星人が、人間と同じ過ちを犯し絶滅するのは、まだまだ、ずっーと先のお話。
―終わり―