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異世界召喚された結末

作者: アマノウズメ

稚拙な文ですが、暇つぶしにでもなれば幸いです。

異世界召喚された結末


私は、勇者アイリ・ネモ・サクラ。日本から異世界召喚された勇者です。私は3年の旅を経て、ようやく魔王の討伐に成功しました。しかし、その時思いもよらぬ事態が起こったのです。私は私のほかに3人の仲間と旅をしていました。老騎士ガイナン、神官エリス、魔術師カルリア。その3人が魔王を倒した直後、私を殺そうとしたのです。私は逃げました。勇者として隔絶した力を持ってはいても、仲間を殺したくない。そう思ったからです。しかし、仲間たちが所属する国が私が魔道に堕ちたと公表し、討伐隊を結成、仲間の3人が中心となって私を追い詰めたのです。


私は樹にもたれ掛かって目の前の老騎士を見た。兜でその表情は分からないが、手に持つ剣は私の喉元に突き付けられていた。


 「勇者殿、すまぬ。これも帝からの勅命なのでな。そなたの命をもらい受ける。」


魔導士と神官は何も言わない。だけど、その表情からは悲壮な決意が感じられる。


 「こんな結果になってしまって残念だわ。後悔しないようにね。おじいちゃん。」


私は旅の途中でもそうだったように、最後に老騎士ガイナンをそう呼んだ。本当に祖父のように思っていた。私は首を斬られて意識を失った。



********************************************************


1年。私たちが勇者を殺してしまった日から1年が経ちました。今世界は荒れています。理由は分かりません。はじめは些細なことでした。雨が多くなったり、太陽が強く照り付けたりなど、異常気象ということもなく、そんな日もあるだろう。みんなそう考えていたのです。ですが、それが破滅への序曲だったと気づいたのは10か月後、今から2か月前の事でした。


 「カルリア、何かわかったのですか?」


私はかつての仲間の魔導士カルリアに世界について話があると言われたので、カルリアの屋敷兼研究所に来ました。


 「世界の精霊たちの様子がおかしい。ここ最近の異常気象はすべて精霊たちが起こしてることだ。」

 「精霊たちが?その理由は?」

精霊は本来この世界に干渉する力はあまり強くないはず、それが異常気象だなんて。


 「何か強力な力を授かっているとしか思えない。人知を超えた力だ、あの勇者でさえ時間や空間に干渉できても世界規模ではできなかったからな。」

 「新たな魔王ですか?」


一つの可能性。魔王ならば確かに世界に干渉することは可能だろう。だが、カルリアは横に首を振る。


 「魔王ならば魔物の活性化もあるはずだが、今回はそれがない。だから魔王じゃない。」


なんとも歯切れの悪い言い方をする。出来ることなら一番否定したい結論なのだろう。


 「エリスよ。魔王以上に世界に干渉することが可能な存在を君は忘れているよ。その存在なら今世界で起こっていることも理解できる。理由までは分からないけどね。」


私は驚愕した。確かにその存在なら可能だろう。でも、それが私たちを滅ぼそうとするなんて・・・。


 「勇者を追い詰めた時、私は感じていたよ。精霊たちが怯えるのを、何故怯えるのかわからなかった。考えてみれば勇者は異世界の人間だ。この世界の理で考えるべきではなかったかもしれない。私たちの知らない真理がある。その結果がこれなのだろう。」


私にはわからなかった。勇者討伐は教皇様が神託を受けたとか言って命令を出した。それが間違っていた?では、この世界を作った女神さまは神託を授けてはいない?頭が混乱する。

その時、私たちのもとに1羽の鳥がやってきた。鳥なんてここ4ヶ月ほど見なかったのに。鳥は私たちを誘うかのように何処かへと空間をつなげて飛んで行った。


 「行きましょう。この先に私たちの答えがあるかもしれない。」


繋がれた空間は閉じることはなく。私たちはその空間に足を踏み入れた。



********************************************************


帝国王宮のダンスホール。夜会などのパーティをする場所で催しが開かれていた。皇帝や貴族ばかりではなく、教皇や隣国の王族たちもいる。世界が平和になった1周年の記念パーティの様だ。皇帝の後ろに傅くようにガイナンがいる。


「こんなところにつながっていたとはね。」


呆れたみたいにカルリアは言う。私たちにも招待状は来ていたけど、参加する気にはなれなかった。カルリアは研究を理由に、私は女神さまへの祈りを理由にしていたのだ。私たちに気付いた皇帝が声をかけてきた。


「おお、君たちも来てくれたのか。世界を救った3英雄がそろったぞ。」


皇帝は上機嫌で声を上げて、周りに知らせる。だけど、カルリアが呆れた声で言い放つ。


「皇帝様。世界を救ったのは私たちではなく、勇者様です。私たちは何もしてません。ただついていっただけです。私たちは足手まといの何者でもありませんでしたよ。」

「何を言う。その狂った勇者を討ったのがそなたたちであろう。其れは褒め称えるべき偉業なのだよ。」


私たちの会話に教皇様も入ってきた。顔は笑っていても目が笑っていない。暗に余計なことを言うな。と威圧をかけてくる。私たちは黙って引き下がる。


「まぁそんなことより、そのような格好では悪目立ちしてしまう。ドレスを用意させよう。着替えてくるがいい。」


皇帝がメイドに指示を出すと私たちはそれについていった。


私たちはドレスに着替えて、パーティに参加した。と言っても壁の花になっているけど、正直ダンスなど踊れないですし、さっきから貴族の男性から声をかけられるがカルリアが体よくあしらってくれる。そして、一人の女性に気付いた。信じられなかった、そこに死んだはずの勇者がいた。


「ごきげんよう、皇帝陛下。お久しぶりですね。」


勇者は皇帝に笑顔で話しかける。まるで会いたくて仕方なかったかのように。対して皇帝は驚きに満ちていた。まぁそうでしょう、死んだはずの人間が目の前に現れたのだから。ガイナン殿も同じ思いなのか目を見開いていた。


「勇者?そなたは死んだはずでは!?なぜこの場にいるのだ!!?」


皇帝の問いに勇者は笑顔で答える。


「ええ、確かに私は死にましたよ。そこにいる老騎士ガイナンの手によって首を斬られてね。ですから、女神さまが私の魂を迎い入れてくださり、再度肉体を与えられたのです。」


「馬鹿な女神様の敵であるお主を女神さまが助けたというのか!!?」


教皇も話してきた。周りも何事かとこちらを注視している。


「そう、私を政敵にするのはまだよかったのかもしれないけど、私を殺したのはまずかったわね。そのことがこの世界の未来を決めてしまったの。滅びの未来をね。」


「どういうことなの?世界で起こっている異常気象と関係があるの?」


勇者に問いかけたのはカルリアだった。その答えと理由は私たちの思惑をはるかに超えたものだった。


「異世界からの勇者召喚の儀っていうのは、単純な魔法じゃないの。この世界の女神様が別の世界の神様に頭を下げて交渉した結果、いいよと許可をもらって成功するの。だけど、神様にとって自分の世界の人間は子供も同然、異世界に渡ってもそれは同様でね、ましてや、事故ならともかく殺されたってなると話は変わってくるの。」


勇者は一息つけるようにお茶を飲む。その仕草は優雅そのものだった。


「この世界の人間はたびたび勇者召喚をしてはその勇者を殺してきたらしいわ。で、今回どの神様もいい顔はしなかったの。でも、私の世界の神様が条件付きで許可を出したのよ。『勇者が魔王を倒した後、厚遇するなら良し。だけど、今まで同様殺害をする様ならこの世界に責任を負ってもらう。』ってね。」


「責任?」


「そう。本来勇者がいなければこの世界は滅びていた。だから、その運命を受け入れてもらうってこと。とはいえ、この世界のすべてが悪いわけじゃない。だから動物やこの世界の精霊たちを仮の空間に避難させたわけ。まぁそれに1年、私が死んでから今までかかってたわけだけど、それも無事終わったから。これから本格的な滅亡がやってくる。私はその前に自分が救った世界を見て回っていいと神様がおっしゃってくださったのでこうしてみて回ってるってわけ。」


誰も何も言えなかった。皇帝と教皇は青い顔をしていた。恐怖に震えている。もし、勇者の言葉が本当ならもうどこにも逃げ場がない。


「滅びに例外はないわ。この世界にいる人間は間違いなく全員死ぬ。ああ、輪廻転生の概念も今回に限っては効かないらしいから。まぁ自分の浅はかさを恨むのね。貴方たちの都合のせいで巻き込まれた世界の人間たちはいい迷惑かもしれないのだけど。」


老騎士ガイナンが勇者の前に躍り出た。


「そなたを殺したのは儂だ。だからどうかこの命で、納めてくれ。」


ガイナンが勇者の前で土下座をする。勇者は呆れた顔をした。


「そういう問題じゃないのよ、おじいちゃん。第1に世界を滅ぼすのは私じゃなくて神様たちだもの、私じゃどうしようもないわ。理由も死んだ後に知ったしね。交渉の余地はないわ。魔王が討たれて助かった。それで満足すればよかったのにね。」


勇者は言うことを言うとこの場から消え去った。周りは誰も動かない。認めたくない事実とどうしようもない現実が襲ってきているのだろう。正直、私もどうすればいいのかなんてわからない。相手は怒った神であり、怒らせたのは私たちなのだ。


そして、勇者の言葉通りその日から夜が明けることはなかった。大地が腐り、海は荒れ、嵐が起こり、雷が降る。国民は徐々に死に絶え、国同士の連絡も取れない。皇帝はあのパーティの日から1か月後に自ら命を絶った。残された手紙には「自分勝手な理由で勇者を亡き者にし、この世界の人間すべてを道連れにしてしまうことは本当に申し訳ない。」と書かれていた。大臣や貴族たちも皇帝のいなくなった玉座に頭を垂れて自害したとカルリアから聞いた。ガイナンは夜が明けなかったその日に自害している。


「みんな死んでしまうのね。」

「そりゃそうよ。もうどこにも逃げ場はないのだし、皇帝も責任をっていうより、今死ねばまだ先があると思ったんじゃないの?」

「輪廻転生?でも勇者はそれは許されないって言ってたわよ?」

「勇者の戯言・・・ってとらえたのかもしれないわ。もうどっちみち、私たちの取れる選択肢なんてないのだけどね。」


カルリアは私に薬を差し出してきた。どうやら彼女が作った薬のようだ。


「それを飲めば、永遠に冷めることのない眠りにつけるわ。痛みもなく、苦しくもなくね。この国にいるものには渡したわ。」

「結果は変わらない・・・か。」


私は薬を受け取って、立ち上がる。


「もう会うこともないわね。残念だけど、貴女と知り合えて嬉しかったわ。」

「私も貴女と知り合えて嬉しかった。」


教会の孤児院、私の故郷。ただの孤児だった私はシスターにあこがれ、教会に入り認められて、司祭になり、勇者と出会い、仲間と出会い、旅をして、そして・・・・、あの時勇者をかばっていればよかったのだろうか?教皇様の意思に沿いてまで?私にはそんな勇気はなかった。それが罪なのだろう。


教会の扉を開け、礼拝堂に入る。誰もいない中でじっと薬を見つめる。


「さようなら。」


私は静かにそういって薬を飲んだ。



********************************************************


「勇者アイリ・ネモ・サクラ。いや、桜 愛梨よ。そなたの世界の神として、そして、神王として命ずる。一度救い、そして滅びた世界に行き、其方が世界を再生させるのだ。このことは他の神々も承認している。そして補佐として、女神アレンティーナよ、其方が数々の神技をもって共に行くがいい。」

「すべては御心のままに。」


そして私はやってきた、女神アレンティーナと共に。まったく新しい世界を作るために。

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