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妹はどうやら女神様らしいです。  作者: 勇者イゴイゴ
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一攫千金目指します!


<奪うということ>


俺たちは依頼のため、盗賊が潜んでいるという森に投げ出された。ギルド側も飢えた獣のように暴走しようとしている冒険者たちを制御する気はないようだ。盗賊を退治してくれるなら、残りは勝手にやってくれと言ったところだ。


「やはり皆さん同じ考えのようですね」

「そうだな、いち早く盗賊の住処を特定し、隠しているお宝を奪う。どっちが盗賊なのかわからなくなってくるな」


「・・・こんなことをして、いいのでしょうか?」


いかに他の冒険者を出し抜くか妹と話していると、何か引っ掛かった表情のリルがこちらを尋ねてきた。俺にはリルが何を尋ねたいのかがなんとなくわかっていた。この子は優しい子だ。人から何かを奪うというのに心の中に抵抗があるのだろう。


「もし盗賊の財産が手に入ったとしても、それらは元々、商人や罪のない人たちから盗賊が奪ったものです。持ち主に返してあげるのが私には正しいように感じます・・・」


リルは言ってしまえば、甘すぎる。イケメン主人公のような立派な正義感を持っているのだろう。この優しさは今後リルを苦しめるかもしれないが、誰もが持てるものではない。大切にしてほしいものだ。


「・・・リルは優しいんだな」

「すいません・・・」

「謝らないでくれよ、その優しさは大切にしてほしいんだ。でも、人に優しすぎるのは、自分にとっても、そして相手にとっても危険だということを覚えておいてほしい」


優しさを捨てた人間に、優しい人間は利用される。過度の優しさを受け取った人間は、その優しさに堕落する。優しさは時として人を救うが、時に人を殺めるのである。


「はい・・・イゴイゴさんは、奪うことに抵抗はないのですか?」

「ないことはないが、相手が悪人だからそこまでかな。それに俺は、妹と生活していかなければならないし、妹を守らなければいけない。必死だから、そこまで考える余裕はないんだよね」

「そう・・・なんですね・・・」


ふむ・・・、かっこいい、多分今の俺割とかっこいい。


「妹よ、惚れ直したか?」

「かっこいいとは思いますが、現状生活がまともにできていないので薄っぺらい言葉にしか聞こえないです」

「・・・・・・」

「あと、真面目な言葉を吐いた俺かっこいいとか思っちゃう人はさすがにカッコ悪いです」

「・・・・・・」


________________________________


<作戦です!>


「よし、あいつらの後を追うぞ」


現在、俺たちはとあるパーティの後を追っている。というのも、俺たちの”楽してボロ儲けハイエナ作戦”がまとまったからである。


”作戦その1”

盗賊の住処を素早く発見する。


「探索魔法を使う場合、必ずと言っていいほど探索したい場所の地図が必要になってくる。今回はそれを利用する」


探索魔法の主な魔法はサーチである。サーチでは、地図上のどこに何があるかを大まかに把握することができる非常に便利な魔法である。もちろんうちのパーティに使える人材は一人もいない。


「まずは探索魔法を使っているであろう他のパーティを探し出そう。この森の地図が必要な冒険者は、おそらくこの街には住んでいない。地図を取り出したパーティは十中八九、探索魔法を使って盗賊の場所を探すはずだ」


”作戦その2”

盗賊に気づかれないように盗み出す。


「なるべく盗賊たちとは戦いたくはない。そのため今回は、盗賊が奪ったお宝を奪い返す作業に専念しよう。盗賊との戦闘は極力避け、他の冒険者に任せることにしよう」

「さすがお兄さん、考え方がゲスいです。最低の根性してます」

「ありがとう。それで具体的な作戦なんだが、道案内してもらったパーティが戦っている間に、こそっと侵入しようかと思う。気づかれないうちにささっと奪って退散しよう」

「「・・・・・・」」


_______________________________


<とある冒険者のお話>


俺の名前はジェームズ、冒険者稼業も3年目に突入し、様々な依頼も受けたので、この街ではそこそこ名前が売れてきているだろう。そんな俺は今回、とある盗賊の討伐依頼を受けた。この依頼は単独依頼ではなく、複数の冒険者によって受けられる依頼であったため、報酬はあまり美味しくない。しかし俺の目的は別にあった。いや、俺以外の冒険者の目的もおそらく同じであろう。今回の盗賊団はかなりのお宝を蓄えているらしく、期待が持てるらしい。おそらく皆それを狙っているのであろう。


「ふっ、しかし今回の依頼、俺たちにはもってこいの依頼だな」

「そうだな、気づかれずに盗み出す。暗殺よりよっぽど簡単だ。俺とお前が組んでいるのだ。どのくらいお宝が手に入るのか、今から楽しみでしょうがないよ」


隣にいる男の名はシェフ。1年ほど前に、とある要人の暗殺依頼で一緒になったのだ。あれは正規の依頼ではなかったのだがな。報酬は良かったのであまり気にはしていない。その依頼以後一緒にいるこの男、非常に優秀な探索魔法の使い手である。敵がどこにいるのか、地形がどうなっているのか、手元の紙を見るだけで全て把握できるのである。


「さて、盗賊の場所は分かった。向かうとしよう」

「おう!さすがだな」


________________


俺たちは今、追われていた。


「何故だ!?何故こんなにも集まってくる!?」

「おいシェフ!この道なら盗賊はいないんじゃなかったのかよ!」

「わからん、魔法を使ってくれ。このままでは見つかってしまう」

「チッ!わかったよ」


インビジブル、気配を消す魔法。俺の唯一にして最強の魔法だ。声を出したり触れたりしない限り、相手に見つかることがない。ただし、一度相手に認識されると、使えないという落とし穴もあるので、見つかる前に発動する必要があるのだ。


「インビジブル!」


これでしばらくは大丈夫だろう。気付かれないように慎重に進もう。


シェフと目配せし、行動を開始すると、辺りにいた盗賊たちが慌ただしく動き始めた。

「お、お頭!き、金庫の中身が半分以上なくなっています!?」

「なんだと!金庫の番はどうした!?」

「お、俺たちです!俺はお頭の指示で侵入者を捕らえにきました!」

「えっ・・・俺もお頭の指示で・・・」

「あれ?俺もお頭の指示で・・・」

「「「・・・・・・あいつだッ!?」」」


・・・どうやら先を越されたようである。こちらも不測の事態に陥ったので、ここはおとなしく撤退することにしよう。


__________________________________

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