ギルドの依頼、受けましょう!
<噂>
駆け出し冒険者の街、アクセラ。強いモンスターが出現することも少なく、比較的安全な街と言われている。そんなこの街を脅かす、とある噂が今話題となっていた。
「盗賊?」
「はい、隣街のルーノラから流れてきたそうです。ルーノラで討伐隊が編成されて、ほぼ壊滅状態といったところまで追い込んだそうですが、一部の残党に逃げられたそうです。その残党がこの街に隣接する森に逃げ込んだという噂です」
盗賊の発生、街に来る商人や街の住民が襲われては困るので、おそらくこの街でもすぐに討伐隊を編成されるだろう。この討伐隊であるが、冒険者で編成されるのがほとんどである。ギルド依頼とも呼ばれるこの依頼は、街の領主から冒険者ギルドに依頼が出せれ、冒険者ギルドが依頼の受注を希望する冒険者を募るのである。
「わ、私たちは参加しないんですか?」
「そうですね、危険ですし、メリットも大きいとは思えません」
リルが不安な顔で妹に尋ねているが、妹の言う通り、この依頼には参加しないだろう。領主からの依頼なので報酬は大きいものだが、依頼を受けた冒険者が複数いた場合、報酬は山分けとなるのだ。
「今回のギルド依頼は見送りだな」
「一度も受けたことはないですけどね」
まあいつか受けるときも来るだろう。依頼を無事遂行できる力がこのパーティにあればの話であるが。
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<異変>
今日の依頼を探すためギルドに来た俺たちだったが、冒険者ギルドには人だかりができていた。おそらく噂の盗賊のギルド依頼を受けに来たのだろう。だが、
「わー!すごい人ですね!」
「・・・おかしいな」
「おかしいですね」
妹も異変に気付いたようだ。
「何がですか?」
リルは気付いてない様子だった。ギルドの依頼が初めてなのだろう。
「人が多すぎる。この人数が全員依頼を受けるなら、一人頭1万ガルも貰えないぞ」
前回、ギルド指定危険モンスターが発生したときのギルド依頼にはおよそ20人ほど。命知らずの夢みる冒険者が集まったそうだ。あのときの報酬は1000万ガルと聞いている。一人頭50万ガルである。通常の討伐依頼でパーティがもらえる報酬が平均10万ガルなので、5倍の美味しい依頼だったそうだ。その分危険も大きかったそうだが。
今回の依頼は壊滅状態の盗賊の討伐である。大型モンスターのときと比べて報酬は少ないだろう。それなのに前回に比べて人数が極端に多い。ざっと見ても100人はいるだろう。
「何故こんなにも人が?」
「あ、イゴイゴさんも来ていたんですね」
ちょうどいいところに優秀な情報屋がやってきたようだ。こいつギルド職員なのに何故こんなところにいるんだ?働けよ。
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<わたしモテるんです!>
「働けよ。他の職員を見ろ。あんなにも忙しそうにせっせと働いているだろう」
「今日はお休みだからいいんです!」
リナに休みがあったとは意外である。冒険者ギルドにいない日がなかったので、超ブラックな仕事してるな、とは思っていた。
「私人気ですから休めないんですよー」
「へー」
相変わらず何も聞いてなくても余計なことを話してくるやつである。では休みであるリナが何故ここにいるのか。
「デートの途中だったんですけど、冒険者の彼がパーティの方に連れて行かれてしまって・・・」
「聞いてないけどな。それについてきたってわけか」
ここにいる理由は少し、いやかなりムカつくが、ちょうどいいところにいたと言える。ギルド職員ならこれだけ冒険者が集まっている理由もわかるだろう。
「何故こんなにも・・・「わかりませんよ」・・・」
「今日はオフでしたので、何も知りませんよ」
「・・・」
ポンコツだった。何故こいつは俺たちの前に現れたのか。情報を持たないリナなどただの男自慢をしてくる性格の悪い女でしかない。
「いやーでも、イゴイゴさんと話してデートが中断されたイライラもちょっとスッキリしました!ありがとうございます!」
「・・・・・・」
本当に性格の悪い女である。何故神様はこの女を美人にしたのか。何故この女はモテるのか。何故この女は冒険者が付き合いたいギルド受付ランキングNo.1に輝いているのか。頼むから一回付き合ってください・・・。
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<一攫千金>
「どうやら今回ターゲットの盗賊は、商人から奪った物資を大量に蓄えているみたいですね」
リナと話している間にうちの優秀な妹が情報を集めてきてくれたみたいだ。かわいいかわいいうちの妹にかかれば、どんな冒険者もコロッと情報を吐き出してくれる。さすがだ、あのポンコツとは違う、
「もう依頼紹介してあげないわよ」
「あ、すいませんでした」
仕事をさせないぞと脅してくる。やはり汚い。実に汚い。まあリナのことはとりあえず置いておこう。それよりも妹が持ってきた情報の方が大事である。今回の依頼で求められるのは盗賊の討伐である。では盗賊が所持している武器やお宝は誰のものか?もちろん最初に手に入れた冒険者のものである。
「美味しいな」
「美味しい依頼ですね。この人数なら危険も少ないでしょうし」
「えっ?えっ?」
リルはよくわかっていない様子である。ウィザードなのだからもう少し知力があってもいいと思うのだが・・・。
「今回の討伐依頼を受けよう。運が良ければ、魔法書も手に入るかもしれないしな」
「ホントですか!!」
ハイエナ作戦で、目指せ一攫千金である。
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