魔法使いに私はなる!
<少女の実力>
「これも何かの縁でしょうし、このパーティに加えてはもらえないでしょうか?」
「いいのか?騙していたんだぞ?」
「騙した人はムカつきますが、イゴイゴさんには罪はありませんよ。年も近いですし、ぜひこのパーティに入りたいです!」
いい子だ。こんな子を騙そうとしていた自分を殴ってやりたい。ウィザードという優秀な職業についているので実力は十分だろう。性格は問題無し、実力も問題無し。断る理由はこちらには存在しない。ぜひうちのパーティに入ってもらおう。
「歓迎するよ、リル」
「よろしくお願いしますね、イゴイゴさん」
こうしてリルはパーティに参加したのであった。
「そういえばリルが使える魔法ってなんなんだ?」
「エンチャントという魔法が使えますよ」
「エンチャント?」
「はい、物に魔法を付与することができます。それを任意のタイミングで発動するのです」
「ほうほう、なかなか有用そうな魔法だな。剣に炎の魔法を付与したら一時的に炎の剣になったりするわけだな。他には?」
「ないですよ」
「えっ・・・?」
「私が今使えるのはエンチャントだけですよ」
「エンチャントする魔法とかは必要ないのか?」
「これから覚える予定です」
「・・・・・・」
訂正しよう。性格はいいが、実力の方に問題があるようだ。いや、エンチャント魔法を普通の魔法より先に覚えようとするのだから、性格にも問題があるのかもしれない。魔法が使えない魔法使い。癖のあるやつを仲間にしてしまった気がする。まあ、魔法の方はこれからいくらでも覚えられる。魔法の素質があるということが重要なのである。
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<魔法を覚えよう!>
この世界には魔法が存在する。魔法を覚えるには魔法の資質、そして魔法書が必要とされている。俺はもちろん魔法の素質というものを持っていない。そのため、読むだけで魔法を覚えられるという魔法書をいくら読んだところで効果はないのだ。しかしリルの場合は別である。エンチャントを使えるというのだから、少なからず魔法の素質はあるのだろう。しかもエンチャントというなかなか聞かない特殊な魔法の使い手である。これはリル自身の魔法の素質にも期待できるはずだ。
「というわけでリル、君には魔法を覚えてもらう」
ポカンとした表情のリル、何言ってるんですかとでも言いたげな表情である。
「・・・魔法の覚え方はご存知ですか?」
「もちろん、魔法書を君に読んでもらえばいいのだろう」
「そうですね。ですが、私は魔法書を買えるようなお金は持ってないですよ」
「ああ、持っていたらすでに魔法は使えているはずだもんな」
「はい、早くエンチャントを使って魔法を付与してみたいですから。ではどうするのですか?ティアから聞きましたよ、イゴイゴさんたちはそれほど裕福な生活をしていないのですよね?魔法書は商人が高値で取り扱っています。それを買えるとは思えないのですが・・・」
「まあ大丈夫だ、任せておけ」
魔法書は商人が取り扱っている。需要に対して品数が少なく、一度使用してしまえば消滅してしまうので、その値段は結構なものとなっている。魔法書一冊が普通の冒険者の半年の労働分に相当するだろう。普通の冒険者より稼ぎが少ない俺たちがそんな高価なものに手を出せるわけがない。ではどうするのか?考えてみればいい。魔法書は商人が取り扱っている。では商人はその魔法書をどこで手に入れているのか?答えは簡単、冒険者から買い取っているのである。では冒険者は魔法書をどこで手に入れているのか?
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<魔法書の手に入れ方>
「吐け、どこに秘密の場所があるんだ?」
「いや、突然どうしたんですか?」
困った時の冒険者ギルド、何でも知ってるリナお姉さんに聞けば全て解決である。
「魔法書が手に入る場所を探してる」
「商人の紹介ですか?失礼ですが、イゴイゴさんの子供のお小遣い程度のお金じゃ何も買えないですよ」
「おいおい子供のお小遣いを舐めすぎじゃないか?商人を紹介してほしいわけじゃなくてだな、魔法書が手に入る、お金を払わずに手に入る方法を探してるんだよ」
「イゴイゴさん、盗難はダメですよ」
「しねえよ!冒険者としてだ、何か方法があるんだろう?」
「ありますけど、駆け出しの冒険者にはお勧めできませんよ」
「教えてほしい、無理はしない」
「私も詳しくは知らないのですが、魔法を使う魔物を倒すと稀に手に入るそうです。原理はよくわからないのですが、通常の魔物とは違い、魔物の体が消滅し、魔法書が現れるそうです」
魔法を使う魔物を倒す。普通の魔物を倒すだけでも苦労するというのに、魔法を使う魔物など倒すことができるのだろうか?いや、無理だ。そして運良く魔物を倒したとしても、魔法書を絶対に落とすとは限らないのである。運良く倒し、運良く手に入れる。ものすごく確率が低い気がする。
「あ、無理だ。リルよ、しばらくは魔法は諦めよう」
「ええっ!?さっきまでの謎の自信はなんだったんですか・・・」
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<妹の不満>
「・・・・・・」
「どうしたんだ妹よ」
私不満です。とでも言いたげな顔をした妹である。特に気分を害することがあったとは思えない。確かに生活は裕福ではないものの、妹に毎日楽しく過ごしてもらおうと頑張っているのだ。そのおかげか妹はこんなにも優しく、人を思いやれる人間になった。兄として非常に誇らしい。その妹がなぜか不満顔である。
「出番が少ないです。セリフももらえてませんし。たしかに寡黙でクールなキャラですが少しくらいはセリフをもらいたいです。あと、リルと若干キャラがかぶっています。」
「同じひんny「うるさいです」・・・」
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