パーティメンバー募集です!
<これまで>
冒険者になってから早半年である。
様々な依頼を受け、心踊る冒険をしてきた。
妹との冒険の日々に不満はない。不満はないが、
「パーティメンバーを募集したい」
「私だけでは不満だったでしょうか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが」
「私はパーティとしてはお兄さんだけでは不満です」
「あ・・・そうなの?」
「はい、メイン盾のお兄さんがいれば防御力は最強です。最強の肉壁です。ですが、お兄さんの攻撃力は最弱です。剣もまともに振れないお兄さんですからね。私が攻撃を担当してもいいですが、それでは色々と問題が出てくるでしょう。」
「ハイ、ソウデスネ」
「回復魔法を使えるというわけではないので、私は支援役を担当します。デバッファーは任せてください」
「とりあえず、パーティメンバーを増やすことには不満はないんだな?」
「そうですね、盾と支援がいるので、攻撃メンバーを募集しましょう」
防御と支援だけでは勝てんよ、戦いは・・・
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<メンバー募集します!!>
「無理ですね」
「まだ何も言ってないだろうが!!」
「パーティメンバーを募集したいんですよね?なんとなくわかります」
「・・・エスパーかお前は」
募集の張り紙をギルドに貼るためにリナに相談に行ったのだが、どうやらリナには全てお見通しみたいだ。
「理由を聞こうか」
どうやら何か不都合があるようだ。
メンバーを募集しているパーティが多すぎる、どこかのパーティに入ろうとする冒険者が現在いないなど、理由はいくつか考えられる。
「この街最弱のパーティに進んで入りたい人がいないです」
「・・・・・・なんの話だ?」
「半年でここまで評価が低くなる冒険者も珍しいですよ、誇ってください」
「えっ?えっ?なんで?」
「わからないのですか?」
「・・・はい」
「依頼達成率10%を切っています。達成した依頼でも依頼主の評価が最低クラスです。唯一高いのは生存率でしょうか?怪我もないですし、もう少し無理をなさった方が・・・」
無理をしろと言われた冒険者はなかなかいないのではないだろうか。
依頼主の評価が低いのはあれだろう、納品した品に問題があったんだろう。別に頼まれたものをしっかり納品しているからいいのではないだろうか。多少毒が混ざっていたとしても。見抜けないあちらが悪いのである。
「ですから、パーティメンバーを募集するのは諦めた方が・・・「あのっ!!」」
ようやく登場人物増やせる・・・
あ、胸はないです。
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<謎の噂>
「あの・・・パーティメンバーを募集してるのですか?」
「・・・えっ」
美少女である。うちの妹に負けず劣らずの美少女である。声をかけてきたということは、こちらの話に興味があるのだろう。
・・・しかしこの子、本当に冒険者なのだろうか?うちの妹と変わらないくらい幼い。
「えーっと、君は?ていうかそもそも冒険者?」
「まだまだ新人ですが冒険者です!ウィザードです!」
ウィザードとな、たしかに宝石が輝く立派な杖は持っている、ウィザードらしいローブも着ている。この世界は年齢は関係なく冒険者にはなることができる。うちの妹も幼いながらも冒険者である。口を開けたまま固まっているこのギルド職員が何も言わないということは本当に冒険者なのだろう。
「他の冒険者の方に聞きました!素晴らしい依頼達成成績を残し、身を賭して何人もの冒険者を救ってきたのだとか!」
「・・・えっ?」
「どうかパーティに入れてください!絶対に迷惑はかけません!」
「・・・・・・」
「イゴイゴさん、ちょっと来てください」
リナがいつの間にか復活していたようだ。この事態には自分も戸惑っている。一度整理させていただこう。
「えっと・・・「イシュートリルトンです、リルとお呼びください」・・・リルさん、ちょっとだけ待っててください」
妹も付いてきてますよ。しゃべってないだけで・・・汗
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<彼女の弱み>
「断りましょう、騙している状態でイゴイゴさんのパーティに参加させるわけにはいきません」
正論である。実に正しい意見だ。ギルド職員として、ここは引けないところなのであろう。だが・・・
彼女は言った。依頼達成率が低いと。
彼女は言った。パーティの評価が低いと。
彼女は言った。あなたのパーティに入る人間などいないと。
ならばこの機会、利用させてもらう他にない!!たとえ純粋な少女を騙すことになろうとも!!パーティに入ってくれる人がいないのだから!
「いや、言っていることは間違っていない。ぜひ参加してもらおう」
「・・・許しませんよ、イゴイゴさん」
リナが止めてくる。だがしかし、彼女には俺を止めることができない。弱みを握っているのだ。彼女の今の生活が壊れる大きな弱みを。圧倒的優位な立場に立っている俺の顔はおそらくニヤついているだろう。隠す気はない。
「今の彼氏と・・・別れたくはないだろう?」
「・・・くっ」
「付き合い始めはちょうど一ヶ月前、その時の男は一人じゃなかった・・・」
「ま、待ってください!黙っていますから・・・」
「ああそうだ、俺も黙っている、君も黙っている。実にイイ関係じゃないか」
「そ、そうですね」
実にイイ関係だ。これであのウィザードを仲間にすることができるだろう。貴重な魔法使いである。受けられる依頼の幅も広がり、これで討伐依頼もガンガン成功させることができるだろう。裕福な暮らしが見えてきた。
「だから、私たちは別に優秀なパーティというわけではないのです。リルさんはウィザードですので、メンバーになってくれるなら歓迎しますよ」
「えー!?そうなんですか・・・残念です」
・・・妹は素直なイイ子です。
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