冒険者イゴイゴ
<プロローグ?>
どうやら俺には前世の記憶というものが多少なりともあるらしい。
名前も覚えていないし、どこに住んでいて、どんな暮らしをしていたかも覚えていない。
ただ、自分が死んだ後、女神と名乗るものにこの世界に送られたことだけは覚えている。
何か使命を与えられたような気はするが、思い出せない。
現状、思い出す必要はないことだ。というより、思い出す余裕がない。
なぜなら・・・
「妹よ、お金がない」
「はあ・・・お兄さんがお金使いすぎたからです、あと、お兄さんが依頼失敗したり、お兄さんが騙されたり、お兄さんがお兄さんがお兄さんが」
「ストップ!そして騙されたのではない。救ったのだ、将来有望な子供達を」
「ぜっったい騙されてますよ。お金を渡したのだって、女の人が綺麗だったからですよね?」
「あの人は素晴らしい人だ。孤児院を経営していると言っていた」
「孤児院の場所は?」
「・・・胸が大きかったな」
「・・・・・・」
妹はたいそうお怒りのようだ。
貧しい生活に耐えられずカリカリしているのだろう。
ただ俺もこの貧しい生活にはこれ以上耐えられない。
なにより、妹の貧しい胸がこれ以上貧しくなるのは耐えられ「・・・お兄さん」
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<過去編 冒険者になりたくて>
一攫千金を求めて、依頼に命をかける者たちがいる。
冒険者である。
プライドを捨て、万の依頼を受ける者たちがいる。
冒険者である。
最強の力を持った兄とその妹もまた、冒険者である。
兄の名はイゴイゴ、妹の名はヘルティア。
「イゴイゴさん・・・ですか?本当に?」
「本当だって言ってんだろ!!名前がおかしいのか!?」
「ええ・・・まあ。笑」
「否定しろよ!」
冒険者ギルドの受付嬢と一悶着あったような無かったような。
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<討伐依頼を受けよう>
「一狩り行こうぜ!」
妹がじっとこちらを見てくる。
目で何かを訴えてくるようだが俺には何が言いたいか伝わらないぞ。
「一狩り行こ「前回!!」・・・・・・はい・・・」
「もふもふウルフの討伐依頼を受けましたよね?」
もふもふウルフ、もっふもふな毛皮は大人気!
ただし、もふもふウルフは凶暴で噛み付いてくることがあり、討伐は大変危険です。
前回はもふもふな格闘の末、なんとかもふもふウルフを討伐することができた。
「討伐できてないです」
そう、できなかったのである。
しかしもふもふウルフは上位の魔物である。
下位の魔物ならば余裕で討伐可能である。
「もふもふウルフは下位の魔物です」
そう、もふもふウルフは下位の魔物である。
そもそも、もふもふシリーズは全て下位の魔物である。
「下位の魔物に苦戦するお兄さんに討伐依頼はまだ早いです」
「・・・・・・はい」
「依頼失敗でまたお金がかかります」
「・・・・・・はい」
「・・・お金に余裕ができたらリベンジしましょう」
「はい!」
妹に早く裕福な生活をさせてあげたい兄と、
兄に無茶をして欲しくない妹であった。
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<依頼を受けましょう!お兄様!>
「お兄さんじゃなくてお兄様というのはどうだ?」
「却下です」
さあやってきました冒険者ギルド。
受付に言って受付嬢に依頼を紹介してもらうのがこのギルドの基本である。
窓口は複数あるのだが、一人の受付嬢がしつこくアピールしてくる。
行きたくない、行きたくないが、あれだけアピールされてると他の所にはいけない。
「イゴイゴさーん、こっちです」
「他の窓口に行きたいです」
「なんだかんだ来てくれるイゴイゴさん好きですよ」
「なら付き合ってく「ごめんなさい、今は彼氏いるんです」」
最初に比べてかなりフレンドリーに会話してくる彼女の名は、
リナルークなんとかかんとかーである。
長ったらしい彼女の名を覚える気はない。
「ティアちゃんもおはようございます」
「おはようございますリナルークさん」
妹とも仲がいいらしい。
彼女らの仲はよくわからんが。
「おすすめの討伐依頼を頼む」
「お兄さん・・・」
「おすすめの討伐依頼以外を頼む」
「わかりました」
彼女がうまいこと仕事ができるのは知っている。
彼氏をコロコロ変えているのも知っている。
俺の彼氏にならないことも知っている。
男の敵、いや、俺の敵である。
「えーっと、こんな依頼はどうですか?」
「死ねぇぇぇええ!!」
「えっ!?」
リナルーク・ド・アインシャルテ、長い名前です。
男運が悪いです。変な男を引き寄せます。
主人公はイゴイゴです。短い名前です。強いです。
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