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誰が?
ボクが。
誰と?
ミーちゃんと。
何だって?
付き合っているだってーー。
ボクは絶句した。
まさかこんな事を言われるなんて。
二人が両片思いだということを、昔からよく知っているボクには、予想外の問いかけだった。
「わ、た、誰が、ミーちゃんと? そんな訳ないじゃない。どう考えたっておかしいでしょ。だって、ミーちゃんは……」
そこで、ハッとなった。
流石にボクがミーちゃんの好意を、アッちゃんへと伝えるのは不味いだろう。
どう言えば上手く行くのか、あれこれ考えているうちに、痺れを切らせたアッちゃんが言葉を発した。
「確かにな、お前とミーに限ってそんな事は無いと思った。お前には色々と、相談にも乗ってもらっているし」
アッちゃんはそこで一度言葉を切って、しばらく逡巡していたが、また続きを話し出した。
「でもな、最近おかしいんだよ! お前ら! ミーはなんだか、よそよそしいし! 今朝だって二人だけで出て行ったと思ったら、ミーが顔を赤くして一人で教室に帰って来ていたのを、俺は見たんだよ!!」
この台詞でボクはピンと来た。
なるほど。
アッちゃんはボクに嫉妬していたのだ。
そんな事はあり得ないのに、恋は盲目、なんてよく言ったものだ。
全く、馬鹿だなあと思いながら、アッちゃんを見やって、いや、その背後を見て、絶句した。
肩で息をして、こちらを睨んでいるアッちゃんの背後には、黒い靄が蠢いていた。
正確には、ソレは靄ではない。
しかし、実態が分からなくなるほどソレは大きく、そして、禍々しいものだった。
汗が吹き出す。息が苦しい。
こんなモノは初めて見た。
アッちゃんは、もちろんソレには気づかずに、そして、明らかに様子がおかしいボクに気づかずに、話を続けた。
その目は真っ黒だった。




