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放課後。とある河川敷。橋の下。
ボクはアッちゃんに呼ばれてここへ来た。
ここは、ボクたち三人が、幼い頃からよく遊び場として来ていた所である。
そして、二人の恋愛相談場所としても、重宝している所だ。
河川敷の土手の上にある道では、犬の散歩やら、ランニングをしている人を見かける。
しかし、下まで降りてくる人はほとんど居ない。
雑草が生えている訳ではないが、何かスポーツが出来るほどの広さが無いからだろう。
まあ、そんな理由で、秘密の話には持ってこいなのだ。
だからと言って、今日、ここに、呼び出す必要は無かったのではないだろうか。
朝から降る雨はまだ止まない。
お陰で、川の水嵩は増し、流れは心なしか強いように見える。
なんだか怖い。
早くアッちゃんこないかな……と、キョロキョロしていたら、それらしき人影が、こちらへと向かってくる。
少し文句でも言っておくか。
「呼び出しておいて、遅れて来るなんて、どういう了見なの? ん?」
「……」
いつもなら、ボクの煽りに対して、片頬をひくつかせながら、簡単に引っかかってくるのに、今回は反応が無い。
なんだか思いつめた表情をしている。
「えっ、あっ、ごめん。大切な話だった?」
「ああ、別にいいよ。さっきのことは気にしてないから」
アッちゃんの表情からすると、確かに気にしてはないようだ。
浮かない顔には変わりないが。
ここに来るまで、アッちゃんはずっと斜め下を向いていた。
何となく嫌な予感がする。
すると意を決したように、こちらを見やった。
緊張をしているのか、少し目つきが鋭くなり、顔も強張っている。
張り詰めた空気が、この場に充満して行く様な気がした。
「お前に聞きたいことがあるんだよ」
「何?」
ごくり。
この音はアッちゃんが唾を飲み込んだ音なのか、それともボクのなのか分からなくなるほど、ボクはこの場の空気にのまれていた。
「お前、ミーと、付き合っている、のか?」




