初仕事①
人の気配がない森の中、1人の女性の泣き声が静かに響いていた。
周りには洋服や食料などの荷物が散乱し一部燃やされた跡も見受けられる。
そこにガサガサと草木を掻き分ける音が近づいていく。
「大丈夫かい?お嬢さん。」
若い男性が、女性の右肩に手を置こうとした瞬間、
女性は勢いよく右肘で男性の顔面に一撃、
よろける男性に、間髪入れず立ち上がり腹部に回し蹴り。
倒れた男性めがけ、高く足を上げ踵から思い切り振り下ろし!
「待て待て!!」
メアリーが素早く男性の前に身体を呈して止めに入る。
「やり過ぎだよ保安官!!そこまでやったら死んじゃうよ〜」
女性、と思われたのはドレスを着させられたトニーであり、パンパンとドレスの汚れを祓い始める。
『これが初仕事とはね…』
不服そうな顔でメアリーへ目を向ける。
意識が朦朧としている倒れた男を、ロープで縛りながらトニーを見上げた。
「ほんと助かったよ。この仕事、前から話はあったんだけど、森の中で女性が襲われる事件が続いてるから犯人捕まえろって。」
結び終わり、ロープをナイフで切りながら続ける。
「どんなに見張ってても出て来なくて、女性の格好するしかないってなってさ、どうしようか迷ってるとこにアンタが仲間になったわけよ」
まじまじとトニーの顔を見つめるメアリー。
「髪長いし、化粧しないでドレスだけ着せりゃよかったからほんと楽だった。
男にやってもらうってあの酒場の爺さんに言ったら、一回連れて来いって言われてね…」
トニーはあの時なぜ自分を見て笑っていたかやっと理解した。
腰を下ろし、縛られてぐったりしている男へ目を落とす。
『こんな仕事ばっかりじゃないだろうな…』
メアリーは何も言わずニヤニヤしている。
その時背後から人の気配がした。




