アーシュ②
数時間後、トニーは泥酔していた。
フランも飲んでいるようだが、顔色一つ変わっていない。
横目でトニーを見下ろしている。
「だから飲み過ぎって言ったのに……」
「大丈夫ですか?」
優しい声でアーシュが声を掛けてきた。
「ああ、大丈夫。時々飲み過ぎるんだよね。」
「私がお部屋までお連れしますよ!」
「いや、いいよ。僕が連れて行くから。
トニーさん身長高いし、それなりに重いから連れて行くの結構大変なんだよね。」
「それなら、なおさら私が連れて行きますから!!」
鼻息荒く言うのでフランは譲ることにした。
アーシュがトニーの腕を自分の肩に乗せ階段を上って行く。
フランは不敵な笑みを浮かべていた。
アーシュは、なんとかトニーの部屋まで連れて来ることが出来た。
「トニーさん、お部屋着きましたよ!」
「ああ……ありがとう……」
トニーがよろけてベッドに倒れ込んでしまう。
その横に座り込むアーシュ。
「ほんとに大丈夫ですか?」
心配そうに顔を覗き込む。
「うん……メアリー?あ、アーシュか……」
アーシュは少しムッとした表情を浮かべる。
そしておもむろにトニーに抱きつく。
「トニーさん!私、初めて会った時からトニーさんのことが好きです!!」
「え?え?」
「姉じゃなく私を見てください!!」
アーシュがトニーにゆっくりキスをする。
トニーに嫌がる素振りはない。
そして数分後……
裸でベッドから慌てて飛び出すトニー。
ベッドの上には裸のアーシュ。トニーに負けず劣らずの筋肉隆々の腕、分厚い胸板……
「お……おとこ???」
ベッドからウインクするアーシュ。
「アハハハ……!!」
フランの大きな笑い声が酒場に響く。
「もうやめてくださいよ〜笑い死ぬ〜」
フランは笑いが止まらない。
「ちょっと……お前静かに……」
トニーが周りを気にしながら小声で注意する。
「アハハ……だって、いきなり血相変えて二階から下りてくるんだもん。話聞かなきゃいけないでしょ!」
溜め息をつきながらフランに目をやる。
「どうせお前は知ってたんだろ、全部調べてるから」
フランは少し怒ったフリをして答える。
「失礼ですね〜!調べなくてもそれくらいわかりますよ!
いいですか?女性ってのは子供を産むから体のつくりが違うんですよ、骨盤の形だって全然ちがう!そのくらいひと目見ればわかります!」
酒を飲みながら続ける。
「しっかし、ほんと見境ないですよね、トニーさんって。こないだのこともあるし、アーシュ見るとメアリー思い出すとか言ってたくせ……
はっ!まさかメアリーちゃんと思って抱こうとしたんじゃ……」
「違ぇよ!!」
「ほんとかな〜信用ないな〜。
でも、アーシュちゃん?くん?可哀想ですね。ベッドに置き去りにされるなんて。」
「でもさ、お前も同じ立場だったら同じようになるだろ〜?俺の気持ちもわかってくれよー」
「は?なりませんよ。
僕は仕事のためなら男でも女でも関係なく抱いたり抱かれたりしてきましたから!!」
何か偉そうである。
「あーそっか!男を知らないから怖いんでしょ!」
トニーにぐっと顔を近づける。
「僕が教えてあげますから。手取り足取り優しく。」
と、その時勢いよく酒場の戸が開きアーシュが見えた。
「トニーさん!!さっきはビックリしただけですよね?大丈夫です!もう一度行きましょう!!」
トニーに駆け寄るがフランが立ちはだかる。
「あら悪いね、今から僕といいことするからアーシュちゃんは用無しなんだよね〜」
とニッコリ。
「あ?なんだよお前。最初っから気に食わねぇんだよ!男か女かわかんねえような奴が」
もうアーシュは地が出始めている。
「いやいや、アナタに言われたくないです」
笑顔のまま返すフラン。
そしてメアリー登場。
「二人ともやめなさい!!!」
一瞬にしてその場を収めるメアリーがトニーには女神に見えたのは言うまでもない。




