モネ
次の日の夜、三人は酒場にいた。
一夜明けるとフランはいつもと変わらない調子だった。メアリーの横に座り話しかけている。
「メアリーちゃん、昨日の怪我は大丈夫??
どこか痛いところあったら見てあげるから言ってね。」
「うん、大丈夫大丈夫。フランは本当に心配性なんだから〜」
と、笑いながら他のテーブルへ移動する。
トニーはこの光景を見て少しホッとする。
まるで昨日のことがなかったかようだ。
その時、カランカランと酒場の戸が開く音がして、一人の女が入って来た。
肩までのカールがかった銀髪、豊満なバストを強調するよう開けられた胸元、短パンからは魅力的な太ももが覗いている。
くりくりの丸い瞳、長い睫毛、薄い唇には赤い紅が引かれており、フランとはまた別の美しさだった。
女が奥の方へ足を進めると、歩くたびにチラチラとヘソが見えた。男達は、女に口笛を吹いたり、声を掛けたりしてる。
しかし、男達の反応には何も応えずただただ歩いて行く。
トニーはその女から目を離すことが出来なかった。
女はフランの背後でピタリと足を止める。
女がフランに触れようとした瞬間、
「触んなよ。」
と、フランの冷たい声が聞こえた。
フランは体勢を少しも動かさず、女を見ようともしない。
女が声を出す。
「ひっどーーーーい!!」
フランの顔を覗き込み、頬をふくらませている。
「あんたが現れたって情報があったからすぐに来たのに!!会いにきてあげたのに何その態度〜!!」
フランは顔色を変えず無表情で何も答えない。
「だいたい今までどこにいたのよ!ずっと心配してたのにー!」
フランはおもむろに立ち上がり、「邪魔」と言いながらモネの横を通り過ぎ、メアリーのテーブルへ足を進めた。
「ほんっと失礼なやつね!!」
「ね?」
そう言ってトニーへ話しかける。
そして、美しく微笑み、
「フランのお友達かな?」
と、言いながら、今までフランが座っていた椅子へ腰を下ろした。
「私はモネ。フランの相棒です。」
「相棒??」
モネは人差し指を口元に当て、上を向いて考える素振りを見せる。
「あれ?『元』かな?あいつ、いきなり組織から姿消したから。」
「……ということは、君も……?」
「殺し屋です。」
と、ニッコリ。
モネが淡々と話し出した。
「私たちは捨て子でね、それぞれ別の街で組織に拾われたの。その当時、組織は子供ばかりを集めていて。」
「まさか、売るために……」
「ハハ……もっと残酷よ。」
急にモネの顔色が変わる。
「人を殺させるためよ。」
「じゃあ、ひどい扱いを受けたんじゃ……」
トニーが心配そうな声を出す。
「いえいえ全然!!」
ぱあっと明るい声に戻る。
「組織は、子供にを殺しをさせたかったの。だって、大人は子供に油断するでしょ。でも、みすぼらしい格好をしてたら誰も近寄らない。
だから、私たちは拾われた後、綺麗に身体を洗われ、まともな食事を与えられ、健康的に見えるよう育てられた。」
モネの声のトーンが少し下がる。
「すべては人を殺すため。
人の殺し方も教えられる。
ただ、失敗しても殴られたりは絶対しない。傷がある子供だと相手が警戒しちゃうでしょ。」
「そこまで考えて……」
「ある事件がきっかけでフランの心は壊れてしまって。それはもう見ていられなかった。残虐性が増してしまってね。
そんな日々が続いていた時、突然姿を消したのよ。」
モネはメアリーに目をやる。
「あの娘が原因だったのね……
今日見てすぐわかった。あんな表情してなかったもんな。」
少し寂しそうに笑う。
「殺し屋ってことは、君も銃の腕が立つのか?」
「人の殺し方は何も銃だけじゃないわ。多少は使えるけど。私は色仕掛けの方が得意なの。」
と可愛らしく微笑む。
「私とベッドに入って朝を迎えれた人は誰もいない。」
クスクス笑う。
ぐいと、近づき、
「お兄さんも試してみる?」
と笑った。
「さ、もう行かなくちゃ。」
立ち上がった後、すぐにトニーを見て、
「あ、いたわ一人。一緒に朝を迎えれた人。」
「フランよ。」




