マダム①
次の街へはフランは仕事だということで、メアリーとトニーの二人で向かうことになった。
その街に着くやいなや、やってもらいたい仕事があると男が話しかけてきた。
どうやら前回の子供探しや盗賊退治の話が流れてきたらしい。
その男の案内で、仕事を依頼したいという家に行くことになった。
家に着いて、まず大きさに驚かされる。門から玄関までの間に大きな庭があり、距離が遠いため馬を使って玄関まで行くのだ。
中に入って、大きさが通常の家と比べ物にならないのでまた驚きが止まらない。
依頼者がいるという部屋までも遠い上、たくさん似たような戸があるので、すぐに迷いそうだとメアリーは思った。
そこでちらと中身が見える部屋があってメアリーは思わず声を上げる。
「トニー!!風呂があるよ!!」
「ほんとだ……!」
とぽかんと口を開ける。
風呂は裕福な家にしか設置してないため滅多に見ることが出来ない。
「報酬は風呂につかることでもいいなぁ……」
とメアリーはつぶやいた。
屋敷の中でも一番大きいと思われる部屋に通される。
その部屋には大きなテーブルがあり、一番奥の大きな椅子にマダムが座っていた。
きらびやかなドレス、指には宝石の付いた指輪をいくつも身につけ、ネックレスも重たそうな石が付いていた。髪飾りさえ光り輝いている。
簡単な自己紹介と、この豪邸は亡くなった旦那様が遺してくれたなどと、一通り話し終え、本題に入る。
マダムが落ち着いた口調で話し出す。
「あなた方にお願いしたいのは、子供を探すことですの。」
子供……?この人の子供と言うと、私たちよりだいぶ年上じゃないか……
と、二人が思っていると、
「子供って言っても、猫ちゃんなんですの。」
と。
笑顔で続ける。
「この大きな屋敷の何処かに真っ白なカラミという名前の猫がいるはずなんです。数日前に逃げてしまって……
屋敷の者たちにも探させたのですが、全然みつからなくて。」
と、少し寂しそうに俯く。
確かにこの屋敷に入ってから、メイドやガタイのいい男達、雑用をしている者など使用人をたくさん見掛けた。この大きな屋敷を管理するには大勢の人間が必要なのだろう。
「3日間でいいの。3日間、ここに寝泊まりして探していただきたいんです。」
メアリーとトニーは顔を見合わせ、3日なら……と承諾することにした。
「その間、屋敷の中の物は何でも自由に使っていただいて結構です。食事もきちんとお出ししますわ。」
「あの……!お風呂もですか!?」
メアリーが咄嗟に尋ねる。
「ええ、もちろん。朝でも昼でも晩でもどうぞ。
好きなお時間に用意させますわ。」
メアリーは、やったー!と、小さくガッツポーズをした。
それから3日、メアリーは朝と晩、風呂に浸かり上機嫌で過ごしていた。
だが、猫は一向に見つからない。3日で全ての部屋、引き出しや戸棚などその細部まで確認できた。
トニーが夕食を食べながらつぶやく。
「あの部屋かな……?」
一つだけ開けてはならない部屋があった。マダムの部屋で、そこにはいないと言われた部屋だ。
「どうかな……ちょっと気になることがあるんだよね……気のせいだといいけど。」
メアリーが意味深に言うのでトニーも少し気になったが、明日マダムに捜索の結果を伝える予定で、それが終わればここも出て行くのであまり気にしないことにした。
翌朝、最初に通された部屋に呼ばれた。
あの時と同じようにマダムは別のきらびやかなドレスを身に纏っている。香水の匂いが離れていてもわかるほど部屋全体に漂っていた。
「報告をいいかしら?」
とマダム。
メアリーが答える。
「はい。全ての部屋を探したんですが、残念ながらどこにも見つかりませんでした……」
マダムの表情が一変する。冷たく見下すような視線。
「そうでしょう。」
その視線のままフフっと笑みが浮かぶ。
「最初っからいないもの。」
「!?」
トニーは状況が掴めない。
メアリーは、すばやく銃を構えた。
それを見てトニーも少し遅れて銃を構える。
マダムに照準を合わせメアリーが口を開く。
「やっぱり罠だったか!!」
「メアリーこれは一体……!?」
「おかしいと思ったんだ、猫を飼ってた形跡が全くなかったから!」
銃口を向けられているというのにマダムは全く表情を変えない。
薄ら笑いを浮かべ二人の背後を指さす。
「後ろをご覧なさい。」
二人が後ろを振り向くと、使用人達が銃を向けている。
「どうやら私の勝ちのようね。」
マダムの声が部屋に響き渡った。




