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ガールライダー☆ 〜凄腕ガンマンの彼女と過保護な死神と真面目な元保安官の裏社会コメディ〜  作者: VANRI


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21/99

フランの過去

 その日の夜、無事に死線を切り抜けて帰還したお祝いを兼ねて、俺はメアリーを連れて賑やかな酒場へと足を運んだ。


 いつもはストイックなメアリーだが、今日ばかりは張り詰めていた糸が切れたのだろう。ほんの少しグラスを傾けただけで、すっかり出来上がってしまった。

 上機嫌な様子で、近くのテーブルの客たちに楽しそうに絡みに行っている。


 そんな彼女を遠巻きに眺めていると、いつの間にか現れたフランが、俺の隣の椅子に荒々しく腰を下ろした。まだ昼間の怒りが完全に冷めていないことは、その刺すような空気から容易に察しがついた。


 ――何しろ、彼の本業は「殺し屋」だ。そう知ってしまった今、私の背筋には否応なしに冷たい緊張が走る。


「……珍しいな」


 遠くで笑うメアリーを見つめたまま、フランがぽつりと呟いた。


「メアリーちゃんがあんな風に羽目を外して酔っ払うことなんて、滅多にないのに」


 フランは冷ややかな視線をこちらに戻すと、不意に問いかけてきた。


「あなた、メアリーちゃんが旅先であまり食事を口にしない理由、本人から聞きましたか?」

「あ、うん。匂いに敏感になって、周囲の危険を察知しやすくするため……だとか何とか言ってたな」

「そう。お酒も全く同じ理由です。酔ってしまえば、万が一襲撃されたときに対抗できなくなる。だから、どんな時でも絶対に酒を飲まないように自制しているんですよ」


 フランは店主に酒を注文しながら、淡々と、しかし重い言葉を続けた。


「僕たちのこの『仕事』って、どうしても逆恨みを買うことが多いから……」


 そう語るフランの目は、やはりメアリーのことが気になって仕方がないらしく、チラチラと彼女の姿を追っている。


「……僕以外の誰かに、心を許して安心しきっているのかな」


 フランの視線に気づいたのか、メアリーが千鳥足でこちらに向かって泳ぐように歩いてきた。


「あれぇ~?  フランだぁ~!  来てたんだぁ~」


 完全に呂律の回っていないメアリーは、あろうことかフランの身体にベタベタと容赦なく触り始める。


「もう、メアリーちゃん、その辺にしておこうね……?  まだ右腕の傷が治っていないんだから、暴れちゃダメだよ~」


 フランが困り果てたような、甘やかすような声で宥める。だが、メアリーはキッと可愛いらしくフランを睨みつけた。


「やだーー!  フランきらーい。いじわるぅ~~」


 フランはどうにか彼女の暴走を止めたいようだが、酔っ払ったメアリーに聞く耳などあるはずもない。見ていて気の毒になり、私は思わず口を挟んでしまった。


「おいおいメアリー、せっかく心配してくれてるフランに向かって、その言い方はないだろ?  少しは優しくしてやれよ」


 私の言葉に、メアリーがふらりと顔を近づけてきた。ぷんと、強烈な酒の匂いが鼻を突く。


「あはは!  大丈夫、大丈夫!  フランなんてその気にありゃあ、私のこと押し倒して、お洋服ビリビリに破いて襲ったりくらいする男なんだからぁ~~!」


 メアリーは大笑いしながら、俺の背中をバシバシと豪快に叩いた。そしてそのまま、また別の客のテーブルへとご機嫌に去っていった。


 残されたカウンターに、冷たい沈黙が流れる。フランはひどく落ち込んでいるのか、完全にうつむいたままでピクリとも動かない。


 俺は彼の肩にぽんと手を回し、男同士の慰めのつもりで言葉をかけた。


「おいおい、しっかりしろよ。こういうデタラメな冗談を言われた時はさ、すぐに否定しないと本当に周囲に誤解されるぞ?」


 様子を伺おうと、下から彼の顔を覗き込んだ。


 ――その瞬間、私の思考が完全に停止した。フランは、この世の終わりかと思うほど顔面蒼白になり、唇を微かに震わせたまま、何も答えない。



「え……。……おい、まさか、本当だったのか……??」





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