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声なし姫の紡ぐプレア  作者: 焼肉一番


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6. 選ばれなかった少女

 シロウもベスティアの身のこなしにすっかり目を奪われていたが、カミルは淡々と次のパネルを並べる。


「次へ進みます。はい、これはどっちですか?」


 間違えればさっきの男の様に問答無用で追い出されるのだろう。だが考えても分からない。ここは正直に自分の好みの方を選ぶのみ。

 黒髪の女性と明るい茶髪の女性だ。


「右」


 シロウにとっては黒髪こそ正義。自分の髪が色素の薄いグレイアッシュ系なので昔から艶やかな黒髪に惹かれる傾向にある。


「合格、では次……」


 次はストレートヘア―とポニーテール。そしてその次が眼鏡の有り無し、更にはホクロの有り無し……。

 まるでシロウの理想像が具体的になって行く様な審査だ。

 シロウの頭の中には巨乳で黒髪ポニーテールで口元にホクロがある眼鏡のお姉さんが怪しく微笑んでいる。


「合格、では次です……」


 どう言う法則かも分からないまま、シロウは次々とその二択を正解した。

 試験が進むにつれ、どこが違うのかもわからない微妙な違いの二枚を比べられる様になったが、それでもシロウには簡単だった。

 詰まらなそうだったカミルの表情も次第に変わって行く。まぁシロウにとってはただ正直に答えているだけに過ぎないのだが。

 それにしても一体何枚やらせる気なのだろう、まさか間違えるまで続くのでは? シロウがそこまで疑いを持った時、とうとうカミルは深々と頷いてこう言った。


「大変結構」


 シロウの額には汗が滲み、カミルの机の上はパネルでいっぱいだ。


「これ以上は必要ないでしょう、次の段階……、最終試験へ移ります」


 とうとう法則は分からず終いだったが、間違えずに済んだ事にホッとしてシロウの表情は緩んだ。


「安心するのはまだ早いですよ、最終試験まで残ったのはあなただけですがかなりの難関ですからね。場所を変えますので付いて来て下さい」


 そんなシロウにカミルは甘い顔を見せない。

 いったいどんな試験が待っているのだろう。何らかの筆記試験だとしたら全く自信はないし、そんなものがあったとしてだが庭師検定の様なものなら適当な答えを埋める事も出来ない。どちらにしても出たとこ勝負の博打だ。


 どうにかやる気をアピール出来ないものかと考えながらカミルの後ろを歩いて三階まで上がる。三階の廊下は一階の廊下よりもふかふかの絨毯が敷き詰めてあり、その廊下に並ぶ扉もより豪奢に見えた。

 そしてカミルはその豪奢な扉うちの一つにノックをする。


「リヴお嬢様、最終試験まで進んだ猛者が一名おります。入ります」


 シロウはお嬢様と言う響きに少しソワソワする。お嬢様の名前はリヴ、と言うらしい。

 中から返事はなかったがカミルはそっと扉を開けて顔だけを突っ込んだ。


「会って頂きたく……お嬢様! またワンピースが後ろ前でございますよ?!」


 そして中の人物にであろう、そう言って大層慌てた様子を見せる。


「シロウ君! あなたはちょっとここで待っていなさい!」


 カミルはシロウに中が見えない様、必要最低限の隙間から中へ入り、また素早く扉を閉めた。中からは何やら甲斐甲斐しく世話を焼く声が聞えて来る。


「さぁさ、私は後ろを向いていますからここからはご自分で。リボンを結ぶ段階まで来たら肩を叩いて下さいね」


 ワンピースを後ろ前に着ると言う事はまだ幼いご令嬢なのだろう。シロウはそう思ったのだが……。


「しかしリヴお嬢様ももう十八歳……」


「じゅうはっ……!?」


 続いて中から聞こえた言葉に思わず声が漏れる。十八歳と言えば十分大人だ。


「そろそろ模様がないワンピースの場合でもきちんと後ろ前を……あ、はいすみません、ではおリボン失礼致しますね」


 聞こえて来るカミルの声は先程までシロウに掛けられていた音と全く違う。この、十八歳にもなってワンピースを後ろ前に着てしまうお嬢様をバカにしている感じもないし、心からの敬愛が伺えるのだが、正直少し異様だと思った。


「完璧でございます。まぁワンピースが後ろ前でも完璧ではございましたがより完璧になりました。では呼んでもよろしいですか? シロウ君! 中へ入ってください!」


 急にそんな大声を出さなくても扉の近くで喋っていた様なので色々と丸聞えだったが、シロウは初めて気付いた空気感で入室する。


「あ、はーい! 失礼しまーす!」


 その扉だけ、白だった。

 カチャリとレバー型のノブを下ろしそれを開けると、白やピンクを基調にした乙女チックな部屋。そこに現れたのは……確かに、十八歳くらいのお嬢様である。

 細い糸みたいな茶髪のロングヘアに、十八歳とは思えない幼さの残る華奢な身体、緑色の大きな瞳に真っ白な肌。誰が見ても美少女で間違いなかったが……、シロウはリヴを見ても何とも思わなかった。

 しかし別に美醜感覚が狂ってるわけではないのでリヴが人に与える印象が悪いものではないのは良く分かる。それなのにそそられるものがない。そう、まるでさっきのパネルの選ばれなかった方だけで作られた様な少女なのだ。

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