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声なし姫の紡ぐプレア  作者: 焼肉一番


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20/48

20. リヴの訪問

 明日はどう仕事を進めるか考えながら廊下を歩いていると、自室の方からノックの音が聞こえる。

 いや、ノックだろうか? それにしてはドンドンと激しめな音だ。

 早速キーラかアゼムが嫌がらせをしに来たのかと自室まで走ると、そこに居たのは……リヴだ。


「リヴ……? どうしたんだ?」


 入浴後はお互い部屋から出ないのでこんな時間にあった事はない。わざわざ訪ねて来た様だ。

 それなのにシロウが出てこなかったから心配になってドア……は破壊されたままなので、壁をを激しく叩いていたのだろう。

 壁を叩きながら少し中を覗き込んでいたリヴは、思いがけず後ろから声を掛けられてビクリと肩を跳ねさせた。振り返ってシロウの顔を見ると安心した様に微笑む。


「ああ、とりあえず……」


 入れと言おうとして少し戸惑った。

 遅い時間ではないとは言え夜にリヴを部屋に入れたとなれば、カミルにあらぬ誤解をされる可能性がある。リヴもそれを分かっているのか部屋には入ろうとしなかった。

 だけど、わざわざ部屋まで来てくれた事がシロウは嬉しかった。

 きっとリヴも今日の事を気に掛けてシロウの様子を見に来てくれたのかも知れないのだ。


 どうしようかと不自然に黙ってしまったシロウを不思議そうに眺めるリヴ。

 薄手のネグリジェ一枚、どうやら後ろ前ではなさそうだが、胸のリボンは縦結びになっている。ゆったりとしたそれは身体のラインを一切見せるものではなく、まるで子供の様……なのだが……。


 ――お嬢様に欲情するか否か――


「ゴホンッ」


 何故かこのタイミングでカミルの言葉が思い出されて逆に意識してしまう。

 欲情などもちろんしない。シロウの好みはメリハリのあるセクシーボディのお姉さんなのだから。


「えーっと、明日、あの一番デカい庭木やるけど、何にして欲し……」


 いつも通りを意識すればするほど、妙に身体から汗が出て来たが、リヴの視線の先に気付いてますます慌ててしまう。

 シロウは風呂上がり、パンツ一枚で自室まで戻るのが習慣になっていた。誰に出くわした事もないし、そんなに際どいパンツでもないから平気だと思っていたのだが、どうもリヴに下半身を見られている。


「ああーっ! 悪い! 汗引くまで気持ち悪いからつい……!」


 咄嗟にタオルで隠すが、驚いた事にリヴはそのタオルをめくってシロウの太ももを露わにした。


「おっ……おいおい!」


 そして太ももに付いた歪な傷跡を指差し、心配そうに眉毛を下げてシロウを伺った。


「え? ああ、何の傷だっけなぁこれ? もう痛くねぇよ」


 そこらじゅう傷だらけのシロウはいちいちいつどこで出来た傷かなんて覚えていられない。確かにその傷は少々大き目で歪ではあったが他にも派手な傷跡がたくさんある。


「それよりこっちの傷見てみろ、はは! 結構エグいだろ? こっちは雨とか降るとまだ痛むんだ」


 どうにもリヴに下半身を注目されるのは居心地が悪いので上半身の大きな傷に誘導する。その傷にもリヴは痛々しそうに目を細めたが何故か太ももの傷の方が気に掛かる様子だった。


「大丈夫、行かないよ。行くところもないし、マー君とお前が良いって言ってくれるんだから行かない」


 シロウはリヴが聞きたかった事を言ってやる。


「例えあのキーラって領主様に嫌がらせされても、アゼムって奴に虐められても辞めない。俺心も身体も頑丈だからさ、安心しろよ」


 そこまで言ってやると曇っていたリヴの表情がようやく明るくなった。


「どんな手で追い出そうとしてくるか分からないけど俺はしぶといからな」


 シロウが完全にキーラを悪役にした言い方をするとリヴは首を振った。


「えー、そうかぁ? 何だか恐そうじゃないか」


 リヴにもずけずけと喋れないだとか荒い言葉を投げ付けていた。

 しかし、そう言えば自分も初対面のリヴに頭が悪そうだと言い、翌日には喋れない事を直接聞いたりもした。シリル・ロウエンタールに居て欲しくないなんてのは当然だし、キーラを悪人と決め付けるのは確かに早計だ。


「分かったよ、仲良くやってみる。手伝ってくれるか?」


 するとリヴは高速で頷き、ギュッとシロウの手を握った。お陰でタオルがはらりと落ちて、シロウはまたパンツ姿になってしまう。


「この状況、マー君に見つかったらそれこそクビになりそうだからもう部屋へ戻ってくれるか?」


 リヴはアッと手を放し、シロウがパンツ姿である事に初めて少しだけ恥ずかしそうな顔を見せた。そして腕を鼻の辺りに持って行きそれをうねうねとくねらせる。


「分かった。ゾウにするよ。俺もそれが良いと思ってた。おやすみ。ああそうか。大丈夫だって、しっかりピアノのレッスンしろよ、聞こえてるから」


 何だか名残惜しそうにしながら、ようやくリヴは自分の部屋へと戻って行った。明日の午前中はピアノのレッスンがあるから顔を出せないそうだ。

 カミルもリヴも、味方だと言ってくれたのだと思う。

 じゃあベスティアは……どう思っているのだろう? 

 ベスティアの立場上シロウの処遇にどうこう口を出す事は出来ないと言うのは分かる。元から何を考えているのか良く分からないが、出来れば味方でいて欲しいなと思う。

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