13. リヴの好きな色
「ご飯よシロ」
「あれ? もうそんな時間?」
「仕事熱心なのは結構だけど、今度から食べてなくても容赦なく片付けるからね」
「そうだベス、花の種とか仕入れてくれよ」
「話し聞いてた? ……で、どんなのが良いのよ」
マイペースなシロウにベスティアは眉を顰めたが、随分と積極的なシロウに少し感心もしたようだ。
「ピンクだろ! つっても一色じゃ寂しいから~、あとはまぁ黄色とか赤とか」
ベスティアも花には詳しくないが、どうやらシロウはそれ以上に疎そうだ。花の種類が一つも出て来ない事に対して問題にも思っていないのである。
「あなたがこんなに熱心に庭師をやるなんて思ってなかったわ」
呆れた様に言いながらもベスティアはエプロンのポケットからメモを取り出し、そこに「種」と記入した。
「あ、落ちたぞ」
メモを取り出す際、ポケットから一緒に引っ張り出されて何か落ちた。シロウが拾ってやるとそれは手紙だ。ブルーの封筒に丁寧な文字で「セティ」と書かれている。女性とも男性ともとれる名前だ。別に見ようと思ったワケではないが一瞬で読めてしまった。
「……!」
ベスティアは顔を強張らせたがもう見られてしまったと諦めたのか、落ち着いた調子で言って手を伸ばす。
「返して」
どうも触れられたくなった様子が見えたのでシロウは面白がってそれに突っ込んだ。
「何だよ大事な人からの手紙かぁ?」
面倒そうに眉を顰めて手紙を奪い取るとベスティアはニヤニヤ笑うシロウの頭を小突く。
「妹よ」
変に男だ何だと勘ぐられるのが嫌だったのだろう、嘘か本当かは分からないがそう言って大事そうにポケットへそれを戻す。
「へぇ~、仲良いんだな! 俺家族居ないから羨ま……」
「教えといてあげるけど! リヴお嬢様の好きな色は淡いブルーとかグリーンよ。そう言う色が咲く種を仕入れるわ」
これ以上は許さないとばかりにベスティアは強引に話しを戻したが、シロウは素直にその軌道修正に従った。
「へぇ! ピンクじゃねぇのか! 部屋にあるもんほとんどピンクと白だったのに!」
そう言ってシロウは目を丸くする。考えなしにピンクと言ったわけではないのだ。
「お部屋の物はカミルが揃えるから、女はピンクが好きって言う短絡的な考えでやってるんでしょうね」
「……リヴに聞いたのか?」
呆れた様に言うベスティアにシロウは聞いた。カミルの揃えてくれた物にリヴが文句を言うなんて思えないし、何なら気を使ってピンクが好き、と言う事にしてもおかしくなさそうだと思ったからだ。
「花瓶のお花を取り換える時に見せる顔で気付いたわ。花瓶用の切り花はその時の旬を届けてもらってるからカミルも口を出さないしね」
何て事はないとそう言ったベスティアにシロウは何だと笑った。
「ベスだってリヴの言葉分かるんじゃねぇか!」
「え? 言葉が分かるわけじゃ……」
「一緒一緒! そう言う事だし!」
そう言われて、リヴの好きな色を知っていた事にベスティア自身も意外に思うのだった。
「どうでも良いけどベスティア、さん! よ!」




